
尻尾が曲がった三毛
家に居る4匹の猫のうち、三毛猫のミケは尻尾が曲がっている。「尻尾の曲がった三毛は、幸運をもたらす」と聞いたからでもないが、私はこのミケが気に入っている。ん〜、正直に告白すると、「幸運をもたらす」と聞いたので、ムゲにしなかった部分はあるかな。
もともと、気の強い女の子だ。小柄で、体重が7㎏ある兄弟ネコのサバ(男の子)の半分以下という体格なのだが、ケンカが強く、サバよりも上位にいる。人間にこびることがなく、孤高の猫でもある。
家の縁の下で生まれた兄弟猫の1匹で、他の兄弟よりも「野良」の生き方を通している。我が家に入って食事をするし、雨や雪の日は家で寝ることもあるのだが、基本的に外で暮らす猫だ。
人に触られると、飛び上がって逃げるし、しつこくちょっかいを出すと、本気でひっかくことがあり、扱いにくい。が、家に入る度に「ミケやーん」と声を掛けていたら、いつのまにか、家人のなかで、私にだけ、ちょっと甘えた声を出すようになった。夏、半ズボンをはいていたら、すねに鼻を押し当ててくることもある。すね毛が濃いので、親近感をもってくれたのかもしれない。本当に、私にだけ、なついてくれていた。
そのミケの具合がわるい。
今年の初めくらいから、なんだか痩せてきたように感じていた。病院に連れて行きたかったが、なにしろ、身を任せてくれない。確保しようとするだけで、外に出てしまい、しばらく戻ってこない。以前、避妊手術を受けさせたときも2人がかりで大騒ぎ。それ以後、用心深くなってしまったので、なおさら確保しにくい。
3月くらいから外に出なくなり、5月からは、あまり食べなくなった。食べても、すぐに吐く。ようやく病院に連れてゆくと、もう手の施しようがないといわれてしまった。6月からは、柔らかい食事を与えても、ほんの少しだけなめるだけ。持ち上げると、泣きたくなるほど軽くなってしまった。
もっと早く病院に連れて行けば、と思うが、果たしてミケ自身が望んでいたかどうか。元気なときは誰にも体を触らせなかった猫である。これまで、好きなように生きてきた猫でもある。
でも、今、静かに寝ているだけの姿をみると、胸をかきむしられる思いがする。それで、よかったのか。それで、幸せなのかい。
そもそも、いままで幸せだったのだろうか。人にこびることなく、外の生活を謳歌し、外でけたたましい声でケンカをしていたのは、いつもミケだった。他の猫のように、顎の下をなでることも、遊んであげることも求めてこなかった。
だから、よけいに切ない。甘えたくなかったのか。温もりが欲しくなかったのか。気持ちを押し殺していたのなら、どうして、と。
猫にとっての幸せ、生きる者の幸せってなんだろう、などと考えてしまう。
おいしいものを食べ、ぬくぬくと暮らし、楽しく遊ぶ……だけではないだろう。外の生活を謳歌し、縄張りに入ってくるヨソ者を撃退する。ときに勝ち、ときに負けて悔しい思いをする。ミケは、そうして生きてゆきたかっただったんだよね。
ミケにひもじい思いはさせなかった。喉が渇いたときのため、いつでも水を用意してある。それでよかったのかな、ミケやーん。
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