2013年:ルー・リードの訃報時の文章
ルー・リードは2013年に71歳で亡くなった。
ロック・ミュージシャンとしては長生きで
円熟した芸術家として一生を終えた。
さて、彼の最後の作品となった「LULU」である。
彼の遺作が「LULU」になったことは
芸術家としての幕引きとしては完璧なように思われる。
「LULU」とは1929年のドイツ映画、
「パンドラの箱」(パプスト監督)
からヒントを得た作品である。
「パンドラの箱」は、ドイツの劇作家ヴェーデキントの
2部作「地霊」「パンドラの箱」
という戯曲の映画化である。
主演の女優ルイズ・ブルックスの時代を超えた
美しさのため神話的カルトムービーになっている。
彼女のショートカットの髪型が「LULU」の
イメージを決定づけている。
物語は、美しい女性が周りの人間を不幸に陥れ、
最後は自分も街娼になり
切り裂きジャックに殺されるという話である。
この映画が作られた1920年代のベルリンは
2大戦の間の束の間の自由都市であり、
映画、演劇、キャバレー文化、
ダダイズムなどの前衛芸術が
花開いた20世紀芸術の発祥の地であった。
ベルリンはテロリズム、同性愛、麻薬、
なんでもありのデカダン都市であった。
1920年代のベルリン、
と言えばある種の芸術的美意識を見出すことが出来る。
その文化の担い手には多くのユダヤ系の芸術家が関わっていた。
しかし、ヒトラーの台頭により、ユダヤ人芸術家はアメリカに亡命する。
ルー・リードの音楽活動はアンディ・ウォーホールによって
1960年代に始まる。
ウォーホールはアメリカの前衛芸術ポップアートの祖であり、
ファクトリーという彼のアトリエには
多くの芸術家とアウトサイダー達が集まっていた。
ファクトリーこそが1920年代のベルリンを思わせるような
芸術家の交差点であった。
ウォーホールはアメリカの主流から離れた
カソリック系の東欧移民の子弟であり、
ルー・リードもユダヤ系である。
そこはまた麻薬、同性愛、など反道徳的な
キャバレー的パラダイスであった。
ルー・リードは彼の最後の作品で自分自身のルーツに回帰した、
1920年代のベルリンの退廃都市文化、
1960年代の祝祭的なファクトリーでの日々
それらからインスパイアされた作品、それが「LULU」である。
彼はロックスターだったが、
その上、詩人であり、ストーリーテラーだった。
麻薬中毒、同性愛、都市の退廃、
それらから派生した20世紀の芸術運動
そのただ中に身を置き、
多くの後進ミュージシャンに影響を与えた作品を創造し続けた。
ルー・リードの作品こそ
20世紀から21世紀初頭を代表する総合芸術である。
(ここまでの文章はmixiの日記でした。)
ベルベット・アンダーグラウンド、とルー・リードの
作品は濃いエッセンスとしてその後の
ロックに多大な影響を与え続けています。
まるで基本のだし、のような存在なのです。
彼の太陽に、天底でアンタレスとフォーマルハウトがパランになっています。Undergroundにアンタレスとフォーマルハウトです。
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