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スモールダイアフラムは音が硬い?

2020年3月号のSOS誌のSOUND ADVICEコーナーに
"Q. Do small-diaphragm capacitor mics all sound 'brittle'?"
という質問があってMike Seniorが答えている記事がありました。
(以下翻訳)

Todd Yarbroughさんの質問

小さな部屋でドラムを録るときに、スモールダイアフラムコンデンサマイクをいくつか使ってきました。Shure SM81やRode NT55のペアです。部屋は、ベーストラップと広域吸音パネルと拡散材でトリートされています。カーディオイドモードのNT55は2-4kHzに強調がありちょっと痛く聞こえました。SM81はもっと艶があるけれども6-8kHzに一層の押し出しがあり、やはり硬く聞こえました。勧められてラージダイアフラムのC214を試してみるとずいぶん自然な音になりました。それで問題は解決しました。でも「柔らかい音のするスモールはあるのか?」ということがまだ気になっています。硬い音というのが、一般にスモールの特徴なのでしょうか?

Mike Seniorの回答

いくつかの側面があるいい質問です。簡単に答えると、SDC(スモールダイアフラムコンデンサ)は硬い音になりやすいです。(質問にあるような小さくて簡易な)プロジェクトスタジオ環境ではおそらくクラシックなNeumann KM83/84とDPA2000がスムースな音でしょうけれど、一層安価なOmniのOktava MK012もとても滑らかです。sEは私が試したかぎりではとても硬い音だったので自分なら避けますが、公平のためにいうとsEにはたくさんのモデルがあるので、私が試していないモデルで柔らかい音のものがあるかもしれません。C451はドラムを録る用途ににとても定評がありますが、ブライトな音なので狭い部屋でのドラムにはおすすめしません——テープに録るなら最高なんですが、デジタルレコーディングにはあまり向いていないのです。

SDCは一般にLDC(ラージダイアフラムコンデンサ)よりもトランジェントが良いですが、これはLDCではトランジェントが鈍るからであって結果的に柔らかく録れるということなのです。同じような理由で、LDCの高域特性はロールオフする傾向があり、一方でSDCは典型的にはこの問題が起きにくいといえます。ただしLDCの中には、ディフューズフィールド用途におけるオフアクシス(軸外)のネムい音を補正するために、オンアクシスにおいてはかなり高域がブーストされているものがあります。この場合、ダイレクトにシンバルに向けてマイキングするとひどい音になることもあります。

(C414の同じように)AKG C214はLDCにありがちなハイミッドのブーストされた音ではないので、ドラムを録るとスムースな音になります。この特徴は一般的に言ってボーカルメインのタイプの曲における楽器収録に使うとフィットしやすいでしょう。というのも、トラック数の多い現代のミックスにおいて、「戦場」になりがちなハイミッド領域でボーカルとそれ以外の楽器が競合しないからです。

マイクをどこに置くかによってもサウンドにおおきな違いが出ます。マイクをシンバルに近づけてダイレクトにマイキングする人が多いですね。これはライブ会場でよく見かける手法ですが、リボンマイクを用いたりアナログテープに録るのではない限りブライトになりすぎるためスタジオではあまりよくないのです。キットの真ん中の上(ドラマーの頭の上)にSDCを配置するとだいたいうまくいきます。シンバルはオフアクシスになっている状態ですが、SDCであればだいたいオフアクシス特性がまともなので問題にはならないです。

最後に、NT55のオムニカプセルはカーディオイドと違う音なので使わない手はないでしょう。Oktava MK012のカーディオイドカプセルも、同マイクのオムニカプセルよりだいぶ硬い音になります。Omniマイクは全体をまとまった音で録るのに向いています。部屋がそれなりに吸音されていて音色が音響的初期反射によって響きすぎない場合に限りますが。部屋がそうとうデッドな響であった場合は、オーバーヘッドマイクを2段目のペアまで組むのも良いでしょう。


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