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【二人劇】impact

◆関係性:仕事の先輩後輩
◆台詞量:先輩2:後輩8
◆(M)表記はモノローグ
◆BL寄り(改変可)


先輩「あー、ちょっとションベン」


後輩(M)
それだけ残すと彼は小走りに、
公園の便所へ駆けて行った。

あの男の身勝手さはもう慣れた。
慣れたくもないのだが。

プライベートの時間に
こうして公園を歩くこと自体、
どうかしている。

“たまたま、行き先が一緒だから”

そう言われて、「ああそうですか」と
さっさと一人で帰る訳にもいかない。


後輩「面倒臭い大人の慣習…か」

後輩(M)
どの職業であれ、
未だに年功序列という慣習は根強い。
大半が成果主義に移りつつあるが、
能力は別問題として、
年上を敬うことは『美徳』とされている。


後輩「何故、男の便所を…
待たなければならないんだ…?」


後輩(M)
僕は、立ち去る彼の背中を
冷淡な視線で疎ましく眺めた。

視界の先で、
飄々と便所へ向かった男が、
ポケットから何か落とした。

思わず溜息が漏れる。

便所だけでなく、
落し物までして下さるとは。


後輩「ちょっと先輩、何か落としましたよ」


後輩(M)
僕の声は聞こえていない。
と言うより既に姿はなかった。

溜息に続いて、
小さくだが、わずかに舌打ちをする。

止むを得ず、
芝生に落ちた男の落としたモノを拾い上げた。

3センチ四方程度の小さな袋だった。

あらゆる角度から眺めてみたものの、
一体何なのか判別が出来ない。
何か入っているようだ。
袋の上から軽く触ってみると、
正体が次第に分かって来たと同時に
自然と眉間に皺が寄る。


後輩「……避妊具」


後輩(M)
あの男が、使用するのか。

不覚にも想像した。
あの男の、そういう姿を。

体が硬直した。
何故だか分からない。
色物の対象からは掛け離れた人間だからか?

僕は、ゴムを無意識に握り締めた。

先輩「よう、可愛い後輩。お待たせしたねぇ」

後輩「……」

先輩「な、なに?どうしたの怖い顔して。
いつものコトだけどよ」

後輩「いえ」

先輩「あ、そ。 ……!!
…オオオオッ、ヤベェ!! こっち来い!!」

後輩「今度は何ですか!?騒がしいな」


後輩(M)
明らかに不機嫌な応対にも関わらず、
彼は僕の手首を引っ張った。
引っ張られるまま、
僕は公園の川辺に連行されて。

握ったゴムが落ちるのではないか
少々緊張しながらも、
彼は川辺でようやく手を離した。

互いに呼吸は乱れている。


後輩「何ですか……いきなり」

先輩「まあイイから見てみろよ。
ヨシ、バッチタイミング。アレだ、アレ」


後輩(M)
彼が指差す方向、
それを目にした時。僕は息を飲んだ。

巨大なビル群が立ち並ぶ街並。
いつもの見慣れた高層ビル、
その背後に沈む夕日。
夕日がオレンジと、鮮やかな赤色を帯びて、
ビル達の影を川に映している。

ビルの窓ガラスに反射した光は、
まるで万華鏡のようだった。

まさに、絶景。


先輩「シゴト後の冷たい一杯も捨て難いが、
コレもなかなかイイだろ?」

後輩「……先輩も多少は、なんというか…
高尚な感覚をお持ちのようだ」

先輩「ウルセぇ。このタイミング、
なかなか難しいんだぜ?」

後輩「でしょうね。手洗いに行かず、
一人で確認に行ったんでしょう?タイミングを」

先輩「さー。どうだか」


後輩(M)
この男の、こういうトコロ。
たまに、正直どう対応したら良いものか
判断に迷う。
不器用な優しさ。苛立ちすら覚える。

きっと、迷惑だと叫んでも、
「ああそうかい」と、
また僕の背後に着いてきそうな男。

考えるのは止そう。
自分が、分からなくなりそうだ。


後輩「先輩」

先輩「ああ?」

後輩「こういうコトは、可愛い女の子に
やってあげたらどうです?」

先輩「誰にやろうが俺の勝手だ」


後輩(M)
彼らしい言葉が返ってくる。
また、どこかで安心している自分が居る。

____ 滑稽だ。

僕は彼の落としたゴムを
自分のポケットに収めた。

何となく、返したくなくなったから。


先輩「おい、後輩ちゃんよ」

後輩「何です?」

先輩「やっぱり冷たいヤツ一杯。
引っ掛けてかねぇかぃ」


後輩(M)
断わっても、
きっとこの男は僕を連行する。
だから、僕は溜息を一つ吐いた。

後輩「飲食街に向かう間に、気が向いたら」

先輩「後輩ちゃんは優しいから、
あと3歩で気が向いてくれるだろうよ」

後輩「なんですか、それ」

後輩(M)
そう言うと、彼は屈託のない笑顔を向けた。




台詞を使用してくださる方へ

①ご自身の音声配信や動画における公開、
大歓迎です。
使用の事前・事後連絡は不要ですが、
教えていただけましたら、
遊びに行かせていただきます。

#桜吹雪の声遊戯
↑↑こちらのハッシュタグをつけてください。
(え…恥ずかしいですか?

②なお、いらっしゃらないと存じますが、
自作発言はお控えいただくようお願い致します。

③一人称、二人称、語尾の言い回し改変、
ご報告の義務はございません。

たくさんのチャレンジ、
お待ちしております!

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