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My Dear fellow

いつも元気な未来が何か難しい顔をして手元の紙を見ている
「どうかしたんですか?」
錠は声をかけた
「誘われて行ったカラオケで、この歌を聴いてね
ちょっと考えてる」
広げた紙を覗き込む 
「アイドルの歌ですよね」
「何年か前の野球選手への応援歌
この君が、なんだか大也みたいで」
指差す場所を見る

向かい合うと無口だけど背中はよく喋る
言い訳は言わないのに覚悟だけ聞こえる

確かにそれっぽい
言葉の足らない、あの人に
「わたし、あの日、見てる
覚悟を決めた大也の背中を」
ハシリヤンがやってきた日
ブンブンジャーが初めて戦った日
「1人で戦い始めたんだよ、大也」
BBGの為の装備
見過ごすことも出来たのに、それで戦ったのだ
「悲鳴を聞いたらじっとしていられない…」
どこまでの勝算があったのか
それでも彼は駆けつけた

「君が大也さんだとしたら、わたしはシロ先輩?」
「玄蕃もだと思う
あの2人、大也のこと、心配なんだから」

「なんか入りづらいねぇ」
声高に話す内容に苦笑を浮かべて、玄蕃は手に持つ飴をクルクル回す
特等席を譲る気はないからねぇ、当たっているといえば当たってるわけだけど
「あの2人に聞かせたいような、聞かせたくないような」

未来は錠にあの日の事を話している
自分のハンドルを握るというのはこういうこと
そう言って、戦うことを選んだ大也のことを

届け屋の仕事に赴いている、話題の主を思い浮かべ、玄蕃は2人に声をかけた
「なんだか楽しそうだねえ」

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