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短編小説

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2024年7月の記事一覧

ショートショート|泉に恋して

泉に一滴の水が落ちた。 小さな円が広がって、 やがて泉を満たしていった。 それは雲のしわざだった。 泉に雲が恋をして、 雲は一滴の水を垂らしたのだ。 どうかぼくに気づいてほしい。 ぼくは空を漂ってるよ。 小さな一滴が泉に落ちて それは泉を満たしていく。 小さな円が大きく広がり 眠っていた泉が蘇る。 そこから美しい女性が現れ やがて夜が訪れた。 女性は長い髪を揺らしながら なめらかに体を動かした。 指先まで美しいその人は ときどき空を見上げては 漂う小さな雲を