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密着!石狩データセンター年次点検&非常用発電機実負荷試験(1日目)

さくらインターネット広報の朝倉です。
今回は、北海道石狩市にある石狩データセンターの「年次点検」と「非常用発電機実負荷試験」を密着取材してきました!
当社のクラウドサービスを支える基盤である石狩データセンターが、24時間365日の稼働をどのように実現しているのか、滅多に見ることのできないデータセンターの裏側と、それを支える社員をはじめとした点検メンバーの活躍を、特別に大公開します。

また、リモートでの監視体制を工夫し、ビデオ会議システムや設備監視画面を利用して年次点検立ち合いを行っている様子についても、続編でお伝えします。

2021年の年次点検&非常用発電機実負荷試験の概要

年次点検では、電気事業法第42条に基づいて策定された「保安規定」に従って、1年に1回電気設備の点検整備を行っています。
これは、データセンターに限らず600ボルトを超える電圧で受電する事業場や、一定出力以上の発電設備を有する事業場などの「自家用電気工作物の設置者」が行うことを義務付けられたものです。

石狩データセンターは66,000ボルトという高い電圧で受電しているため、これまでも年次点検を実施してきました。
今年の点検は、本線(1系)・予備線(2系)の2系統で冗長を取っている電気の片系ずつを計画的に停止させ、サーバールームには影響が及ばない状態で、電気設備(受電設備、UPSなど)の動作確認や整備を行います。
また、棟単位で擬似的に停電状態にしてUPSを始めたとした機器の動作確認と、非常用発電機からの送電を行う「高圧/低圧一括の停復電試験及び非常用発電機の実負荷試験」(以下、本試験)も実施しました。

本試験は、想定した通りに非常用発電機が動かなければ、お客さまのサーバーに影響が起きるリスクの高い試験です。さくらインターネットは、2018年の胆振東部地震による約2日半のブラックアウトを乗り越えました。この経験をきっかけに、本試験が必要と判断し実施をいたしました。

非常用発電機を含む電気設備は、非常に多くの機器で構成されています。そのため、部品の経年劣化により故障が発生する場合や、停電や復電などの急激な電圧変化などのタイミングで故障が誘発される場合もあります。電気設備の点検や実負荷試験は、災害だけでなく、これらの故障を未然に防ぐためにも必要なこととさくらインターネットでは考えております。

石狩データセンターの電気の流れ

年次点検のレポートをする前に、石狩データセンターの各建屋がどのような流れで受電しているのか、簡単にご説明します。

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電力会社から送電されてくる電気は2系統(常用線と予備線)あり、どちらかに障害が発生してもデータセンターが停電とならないようになっています。
2系統で受電した電気は、本線から紫の矢印の方向に流れていきます。(予備線は待機)

受電する設備をはじめとする各種電気設備は全て冗長構成となっています。設備の不具合・故障等で停電が発生しないように片側が待機していますが、1系(赤)をメイン電源とするのが1号棟と3号棟、2系(青)をメイン電源とするのが2号棟と、負荷を分散させています。

非常用発電機は、電力会社からの送電が完全に途絶えた場合、自動的に稼働します。この図では省略していますが、各サーバールームにはUPS(無停電電源装置)が備えられており、非常用発電機が安定稼働するまでの間、バッテリーでの給電に自動で切り替わるようになっています。

【年次点検1日目】 2系側の停止と点検作業

年次点検1日目は、2系統の電気系統のうち2系と呼ばれる側について実施します。

午前7:30に、石狩データセンターの設備管理を担う大成有楽不動産、今回の点検作業を実施いただく点検業者、そして石狩データセンター長である森田をはじめ、ファシリティ部門やサービスデリバリー部門の当社社員が集まり、朝礼が行われました。

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朝礼を終えると、作業開始。電気主任技術者の指示を受けながら作業が進んでいきます。

作業の進行は手順書が頼りになります。事前の打ち合わせで確定した手順書を手に、各所で作業が同時進行します。無線機で連絡を取り合い、複数人でチェックしながら進みます。

2021年5月15日(土)2系受変電設備年次点検操作手順書_ページ_01

2号棟高圧電気室より作業開始。
ここは、2系をメイン給電とする電気の流れを、1系からの給電に切り替え、2系からの給電を停止する作業です。

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受電盤の操作パネルで、デバイス名をダブルチェックし、操作します。
切り替えた瞬間の映像がこちらです。

この作業により、2号棟ではメイン給電が2系から1系に切り替わっています。続いて、2号棟、1号棟、3号棟の順に、2系からの送電を停止する作業を行います。また、2号棟と1号棟の非常用発電機では、2系への送電を停止する作業を行います。

非常用発電機から2系への送電を停止するのは、点検中に1系が停電した場合、非常用発電機が動作し、2系へ送電することを防ぐためです。
2系の電気が停止している前提で点検が始まるので、意図しない通電による感電事故などは絶対に起きないよう、念には念を入れて設定の切り替えを行います。

次に、電力会社からの受電を行う特高電気室での作業に移ります。
ここでは、電力会社の担当者と専用電話でやり取りをしながら、同じ変電所を利用する事業者とも連携を取り、予備線の受電を停止します。

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操作を行った後の監視盤を見ると、電気の通るルートが変わっているのがお分かりになると思います。

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この特高監視盤の「赤ランプ」が電気の負荷がかかっている個所、「緑ランプ」が電気の負荷がない個所です。
つまり、赤のランプがついている経路を電気が流れているということになります。
私は赤と緑で何となく信号機を連想してしまい、「赤は止まれ」のイメージを持っていましたが、電気設備では逆(赤は電気が流れている)であることがおもしろいと感じました。
赤は電気の負荷がかかっているので、作業をする人にとっては「危険」、緑は電気の負荷がなく「安全」を示すそうです。
作業をする人にとっての赤信号、緑信号となっています。

2系の停止が完了した時の電源供給態勢は、以下図のような状態になっています。特高電気室の電気の流れが変わっていることと、2号棟のみがメインから予備の電源に切り替わっており、1号棟と3号棟は待機している予備の系統が停電した状態になっています。

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2系が停止したので、2系の電気設備の点検が始まります。
点検を始める前に、設備に電気が残っていないかどうかを念入りにチェックし、アース(接地)の作業を行ってから作業に入ります。
専用の道具がいろいろとあるのですね!

点検を終えた後は、2系の復電を行い、元の状態に戻します。
2系の年次点検はこれで終了です。
朝8:00から始まった作業は、17:00頃に終了しました。

【非常用発電機実負荷試験1日目】 2系側の停止

例年だとここで1日目全作業が終了となるのですが、今年はこの後に非常用発電機実負荷試験を実施します。
今度は、電力会社からの受電は止めずに、特高電気室で2号棟への送電を停止し、2号棟が停電した状態にします。
2号棟の停電により、自動的に非常用発電機が作動し、電源供給態勢は以下のようになります。

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非常用発電機が作動し、安定的に電気を作り出すまでには、約1分程度の時間がかかります。その間は、各サーバー室につながるUPS(無停電電源装置)のバッテリーから給電が自動で行われ、給電が途切れない仕組みになっています。
非常用発電機の動作チェックと共に、UPSの動作チェックも行われます。

非常用発電機が動き出す様子を見てみましょう!

非常用発電機が一斉に稼働すると、ものすごい爆音になります。最初に映ってしまっていますが、カメラを置いて慌てて退避しました。(笑)

非常用発電機が稼働している間、2号棟の高圧電気室ではパトランプが光っています。なんだか物々しい感じですね。

非常用発電機は30分ほど動作させた後、復電の操作を実施して停止させます。
これで1日目の全ての点検が予定通り終了しました。終了時刻は18:30頃になっていました。

いかがでしたか?さくらインターネットの石狩データセンターを支える点検作業は、2系統の内片側は電源を維持しつつ、お客さまのサーバーには影響がないよう万全の体制で行っています。点検中に実際に停電が起きた場合のことも想定し、その際の切り戻し手順なども綿密に決めています。

また、電源を維持することだけでなく、点検作業の安全性もしっかりと確保し、うっかりミスなどで事故が起こらないよう念には念を入れて作業している様子が分かりました。
たくさんの保守点検業者の皆さまに支えられていることを実感しました。

2日目の点検の様子は、リモートでの作業確認の様子を中心にお伝えしていきたいと思います。ぜひご覧ください!

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