第28話≪ソラの章④≫【lost-one】ー僕/私たち人間は地球の恵みや営みの破壊を止められないのか【後編】

その晩、野宿で眠るソラの夢は不思議な夢だった。

場所はアイスランド。「黄金の滝」を意味するグトルフォス。地球の轟音とともにまたまた凄まじい轟音とともに地球の底に向けて真っ白に見えるフヴィタ川の爆流がどどどどどどどどどっどおおおおおおおおおおおおおおおと飲み込まれてゆく。氷河を源とする毎秒2000立方メートル。時期によってはナイアガラの滝よりを遥かに上回る。
ソラは爆流の流れに飲み込まれないように遊歩道を歩いていた。
すると向こう岸から裸足のアイスランド人の少女の姿。

もしや…

ソラは少女のもとへ走る。
滝に身を投げようとする少女。滝の方に落ちかけたその瞬間、少女の腕をソラは命懸けで掴んで両腕で少女の身体を陸地に引っ張り上げる。

「生きろ!頑張れ!」

少女はきっとソラを睨む。

「あなたもダムの建設者の仲間!?」

少女の眼には涙が滲んでいた。アイスランド人なのにどうしてか言葉が通じる。まるで巨大架空ゲームSSS の中のようだ。ここではいつも天使の顔して豆大福もちでちゅーという能天気なジャンガリアンハムスターのふくが変身して、白亜紀の空を飛ぶ恐竜、つまり翼竜のうちの一体プテラノドンになり、ドラゴンのように口から炎を吹き、ソラを背中に載せて大空を自由に飛翔する。

が、この肝心な時、毎度ふくはおなか一杯でいつものソラのつくったお手製遊園地で遊びまわった後、ヒマワリの種を腹12分目までもぐもぐ食べることだけ頭一杯、ゲプと満足のげっぷをした後、盛大ないびきをかいて食べた後は牛になるのでチューと寝言をぶつくさ寝ぼけながらつぶやきそのまま爆睡するのがオチだ。
そしてSSS内でもうソラが死ぬ!というギリギリ絶体絶命の瞬間、ちーこらちーこら と陽気に「ふっくらふくふく」という謎のふく作詞作曲の即興の鼻歌を歌いながら颯爽と現れ、厭者を炎で瞬殺するなかなかなフリーダムなハムスターである。

12干支の伝説で何故ネズミが1番目かというと、動物と竜のマラソン大会でだれが一番かという爆走レースにて賢いネズミはドドドドドドドドドドドドドドと猛突進する牛の角の後ろに身を隠しながら、吹き飛ばされそうになりながらも、迫力ある牛の角に「いえーいでチュー!」と脳天気にしがみつき、ゴールの瞬間「ひゃっはー!!!」と隠れていた牛の角からすばしこく飛び降り堂々の一位に輝いたという。ハムスターはネズミではないが、ソラの相棒のふくの前世はきっとその12干支の伝説に出てくる子【ね】に違いないとソラは確信している。ちなみに中国では日本のイノシシの部分は豚になっている。

本題に戻り、ソラが助けたアイスランド人の少女の名前は「シグルスル」という。
シグルスルは地元の民でこの滝の流量に目を付けた外国資本が、滝の地形を変えて水力発電所を建築しようとしており、愛するグトルフォスを金と欲望だらけの薄汚い人間に破壊されるなんて絶対に許さない!と命をはって滝に身投げしようとしたのだ。

シグルスルの事情をソラは聞くとなんて勇敢な少女なんだと感激した。

シグルスルはソラを真っ直ぐ見据えて怒りと悲しみの感情が入り混じった顔で絶叫する。

「わたしにとって、この滝とは一心同体なの。産まれたときからずっとこの滝と私は共生してきた。私の身体の半分であり、私の命なんかよりもずっとずっと大切なものなの!ここの地元の人たちに潤いを、英気を、生気を与え続けた地球からの巨大な贈り物がよこしまな人間たちよって破壊されるの‼‼許せない‼‼
私は絶対この滝のこのままの姿で大地とともにあらんことを北欧神話にでてくるアース親族様と誓った!
私は命懸けでこの使命を果たさなきゃ、だれが私たちを産みここまで育んでくれた地球のすばらしさ、営みを守るの!?私は自分たちを産んでくれた地球に恩返しをしなきゃいけないのに、どうして破壊するの!?」

ソラはシグルスルにありったけの想いをこめて返事する。

「君が死んでしまったら、この滝は涙を流すどころのお話ではない。愛する滝に身投げされた滝の方の立場になったらキミみたいな素晴らしい勇敢な少女の命が自分のために死んだなんて命の恩人じゃなくて一生かけても償うことのできない大事態になるじゃないか!!キミはキミ自身の命を粗末にしたら、キミを育んでくれたこの滝はずっと悲しみ続け涙を流す!!!それがどれほど残酷なことか、キミはもっとほかの手段をもって闘うんだ‼‼」

ソラの言葉にハッと顔を上げたシグルスル。
強く決心のついた顔でソラにいう。

「あなたの言う通り。有難う…」


そこでソラの夢は途切れる。

アイスランドの歴史には20世紀初頭、水力発電所の建設に反対したシグルスルちう地元の少女は滝に身投げしようとし、その後ダム建設反対のために120km離れたレイキャヴィクまで血まみれになりながらも裸足のままダム建設反対を一人で訴え続け、このシグルスルの尽力によりダム建設の計画は廃止された。
今もアイスランドではその大瀑布で地球の恵みをマーベラスに教えてくれる黄金の滝グトルフォス。

ソラはまさか自分が一人の命の恩人だなんてこの先も知ることもなく不思議な夢として胸の奥の思い出箱に入れることになる。
ソラは思う。
僕たち人間はこの地球【hoshi】が産み育んでくれた代償に自然を破壊し、野生動物を殺し、野生動物の棲み処を搾取し続ける。
便利さを追求したなれの果ては荒地になった。
僕たち人間は自然と共生することの大切さを、何を守り、何をしていかなければならないのか手遅れになる前に地球の怒りと悲しみの声に耳を傾けなければならない…
四万十川の岸辺でみる夜空は満天の星々が星座が、「life【命、生き物、生活、人生、生き方】」について夢という媒体で教授し、優しく微笑みながらソラを見守っていた。
流れ星が綺麗に一つ落ちた。

きっとあれはシグルスル…

ソラはまた静かに寝息をたてて眠りにつく…

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