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悪魔と呼ばれた男

あらすじ

預言者と呼ばれ高い検挙率を誇る刑事、阿久津。アメリカで犯罪心理学を学んできた才女、天海。そして黒蛇の異名を持つ敏腕警視正、大黒。新設された特殊犯罪捜査室に所属する3人が追うのは、通称『悪魔』による残虐な殺人事件だった。
警察という組織や自身の高い地位を守るために工作を繰り返す官僚や警察上層部たち。身内の犯罪を隠すために身代わりを立てたり、証拠品の隠蔽により犯罪者たちは罪に問われることなくのうのうと生きていた。
権力の力に押しつぶされないよう、少人数で事件の真相を追う特殊犯罪捜査室の刑事たち。全てを見透かしたような言動をする阿久津に不信感を抱きながらも、共に捜査していく中で信頼関係を築く天海。様々な思惑が渦巻く中で、天海は『悪魔』の正体に近づいていく。

サスペンスミステリー最高

章が進む事にだんだんじわじわと全体が見えてくる感じがすごく好きです。特にこの作品では主人公側、犯人側、不正をする警察側、被害者側など、様々な視点の文章が入り乱れており、なんのことか分からないまま読み進めていくと、突然点と点が繋がって見えている世界が広がる感覚になります。
展開も早く、ページをめくる手が止まらなくなります。

以下ネタバレ

この物語は天海ちゃんの視点で進んでいきますが、主人公はやはり阿久津さんなのかな〜!タイトルにもなってるわけだし。天海ちゃんは最後まで、死体を美しいと思うことやグロい死体に興奮する事が悪いことのように思っている気がしたけど、別に死体に美しさを見出してもいいと思うけどな〜と思いました。あんなに頑なに認めたがらないのも、真面目というか高い倫理観を持ったキャラクターだからなのかな。天海ちゃんが阿久津さんの心を溶かして救ってあげられたのもこの真面目さゆえなんだろうな。あの二人が結ばれてよかった。

大黒さんはあんまり今回の捜査に関わってきてない気がしたので、まだ謎多き人ですね。全部知ってて仕組んだ抜け目ないラスボス感が恐ろしくもあり頼もしくもあり。

阿久津さんは…色々盛り込まれててうひゃー!ってなりました。最初は、相手が話してない情報も知っていて薄気味悪さを感じました。怪しくて天海ちゃん同様、阿久津さんの考えてることを知りたいと思うようになりました。そして話が進むにつれて阿久津さんの孤独感や人間を拒絶する弱さを目の当たりにし、どんな風に育ってこんな性格になったのか気になりました。そして明かされる特殊能力。そうきたかーってなりました。おめぇ能力者か。その後の天海ちゃんが受け入れるところめちゃくちゃ好きです。やっぱり人間受け入れてもらえないと病んでいきますから。阿久津さんを信じて受け入れてくれる人に会えてよかった。救われたね。
そこで幸せのピークに持って行って、いきなり地獄の谷に突き落とすの、絶望度やばいですね。絶対作者は笑顔で書いてると思います。読者の絶望を楽しんでるんじゃないか?
阿久津さんの言ってること分かるけど。独善的だよな〜しかもそれを止めて欲しくもあって。ひたすら辛い。デスノのキラくらい「罪人を裁く僕が正義!」って開き直ってくれたりした方がまだスッキリする。不条理を正したいと思いながらも自分のしてることが正しくないことも理解してる感じが苦しくてしんどかった。

晴人くんかませ感すごい。カワイソス。救われないねぇ。
最後、晴人くんのデータや証言で隠蔽していた上層部の犯罪が明るみに出たのは良かったね。特殊犯罪捜査室が大きくなってたのはマジで黒蛇さん怖いなって思った。続編が気になりますな。

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