為了Hurt Never Heart

もしかしたら、
誰かが誰かを傷つけてしまうのを目にしてしまった気がする。


客がいっぱいのバス、バスのドア付近にはたくさんの英語圏の方々がいた。
お喋りをしているその人たちに向かって、
バスの運転手は突然責め立てるよう言い放った。

『Please speak Chinese』



その瞬間ここら辺一体の空気が謎な何かに変わった。

そしてその運転手はまた言った。


『Please speak Mandarin 』


それだけじゃなかった。運転手のほぼ真横に立っていた女の子に向かって


『Turn around 』


女の子は身体を運転手の反対方向に向ける。

ますますここら一体に謎の空気が流れる。

そして

次はその女の子にこんなことを問いかける。



運転手:『Do you know why?』


女の子:『...』


運転手:『我看不到那個』
バックミラーに向かって指を刺す運転手、
つまり、バックミラーが見えないからだと。


女の子:『Oh..Sorry..』



それからその女の子を含め、それまで楽しくおしゃべりしていたバスのドア付近にいた英語圏の方たちは、一斉に喋らなくなった。

なんだか空気が急に張り詰めた気がした。





意味がわからない。
ほんとにわからない。
そしてワタシは
腹が立った。
とにかく自分の中に怒りが込み上げてきた。
言ってしまえばワタシに関係ないんだけど、
とっても腹が立った。

英語を喋ることと、
バックミラーが見えないこと、
なんの関係があるんですか。


ワタシはそこから
とにかく、とにかく腹が立った。


そのバスに乗ってまだ10分も経っていなかったけど、
その運転手はなんだかずっとイライラしていることがわかった。


あるバス停でバスが停まる。
しかし客がいっぱいで乗れない、
このことをバス停で待っている外のお客さんにスピーカーで伝える。
その時もなんだかとっても責め立てるように外のお客さんに向かって言うし、
外で待ってたお客さんもマスク越しでもわかるくらい不満な顔をして、外からその運転手を睨みつけていた。
それに対してもまた何かを責め立てるように言い返す運転手。


そのバスに乗ってまだ10分も経っていなかったけど、
その運転手は直接何もやられていない客という名のワタシをこんな気持ちにさせた。
そのバスに乗っていない客にもこんな気持ちを与えた。


そしてワタシのそばには、ちゃんとした理由がわからないまま、自分の国の言葉を喋ることを一方的に拒否された女の子と、

傷をつけられたヒトたちがいて、


もう、
怒りが、怒りが膨れ上がるばかりだった。


次々と無言のまま下車していく友達たち。
後ろを向いたままの女の子。
窓に反射した彼女の表情が、なんとも言えなくて、
なんだかこっちまで怒りと悔しさで涙が出そうになった。


その運転手にね、ワタシはクソって思ってしまった。


心の中でワタシはその運転手に、
たくさんの疑問をぶつけた。中国語で。
喉を伝って声に出してしまおうかと思ったけど、
ここで言うと、イライラしてる運転手がもっとイライラするかもしれない。
危険な運転もやりかねない、ワタシはそれを恐れて、何も言えなかった。


でも怒りは勝手にワタシの内側からどんどん膨れ上がってくるし、
もう知らんけど悲しくなってくるし、
だから、もしその女の子がワタシと同じバス停で降りたら、話しかけよう、
ワタシは英語が下手くそだけど、声かけてみよう、
勝手に自分でそう決めていた。

どうやって声をかけようかな、
ワタシは頭の中でわずかな知識から出てくる英単語を並べ始めていた。

でもその女の子はワタシが降りるずっとずっと前のバス停で、1人降りて行ってしまった。

ワタシはもうこのバスから一刻も早く降りたくなって、いつも降りるバス停の何個か前で降りた。


腹が立った。



自分の勝手な都合で、誰かを傷つけてしまうことが、
どれだけ醜くて、どれだけ悲しいことか。
意図してやるなんてありえないけど、
意図せず傷つけてしまったなら、
自分の間違いに気づいたなら、
しっかり謝ればいいし、
謝った後に学びがあったのなら、
そのことに感謝しなさい。
そして反省して次に活かせばいい。
でも、傷つけられて、終わることもある。
こんなに悲しいことはないし、
ワタシはそんなヒトを見かけると、
あぁ、ヒトからこんなことをされるとこんな気持ちになるんだ、
じゃあ、自分はソレをしない人間であろう、そうあれるように生きよう、
そう思うようにしてます。

せっかく平等にいただいたイノチ、
あとどれだけ時間が許されてるのかもわからないのに、
その時間を誰かを傷つけるために使うなんて、もったいないと、
ワタシは心から思います。
思えるようになりました。

大事にしないでいいイノチなんて、ほんとはひとつもないはずだよね。


為了Hurt Never ♡。

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