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20字の小説 〈50年のあとに〉

冷房はないが、暖房のあるリビングに住む。

 

夏は熱風、冬は冷風にと容赦のない室外機。

 

バルコニーの住人たちには過酷すぎる環境。

 

ある日室外機を撤去、すると室内が過酷に。

 

草木のためにエアコンを処分したとは・・・

 

呆れた夫はその内、家に居つかなくなった。

 

年月が経ち、私たちは先年金婚式を迎えた。

 

老夫婦となった私達は、自分の部屋に籠る。

 

個室の空調は無事なので、そそくさと戻る。

 

マンションの森と化したバルコニーに緑溢れ

 

目覚めの朝、鳥たちの鳴き声が心をほぐす。

 

夏には未だに文句を言う夫も早朝はご機嫌。

 

チチチと鳴く庭を覗いて「雀か?ヒヨか?」

 

「さぁどっちかな?」二人して耳を澄ます。

 

テーブルには、ちょっと焦がしたトースト。

 

コーヒーを飲みながら微笑む私たちがいた。




20字の小説

#シロクマ文芸部
#小牧幸助文学賞
#note投稿企画


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