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万葉の恋 第5夜

8.13

驚いた。

本当に、福岡に行っていた。


それに、あの顔・・

私は1つの石を、
取りこぼした事に気づいた。


何か見つけたな。


彼が、PCを見ながら右手の人差し指で、
しきりに唇をなぞる。

気になる文章を見つけた時の“サイン”。

彼の抱える作家達は
誰もが知っている名前ばかりだった。

でも、その中の2人は、彼が見つけた。

たった1ページの表現、2~3行、
下手したら単語1つの使い方で
原石を見つける。

有名作家へ成長したのも、
彼の手腕が大きい。

担当だけではない、
彼が見つけ出した原石は
必ず光るようになる。


その彼が“サイン”をだした。

きっと、彼も気づいていない。

私にしかわからない“サイン”。

彼を見続けた私しか知らない。


それを見た時の特別感と
距離を離される焦り、

それに加えて、今回のは、
一瞬は私の手にあった石を
とりこぼした悔しさも混じった。


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