情熱が羨ましい:駅のポスターを見つけるファンの方

　通勤で割と大きなターミナル駅での乗換えがある。

　毎日ほぼ同じルートを通るのだが、若い女性2、3人程のグループがいくつか、急に現れる日が数日続く日がある。

　彼女たちの視線の先には、アイドルグループや人気俳優さんたちの大きなポスターがあり、人波が途切れることを祈りながらスマホで写真を撮っている。

　彼女たちは大抵、初日から現れる。

　今なんて改札の中にポスターがあるのに、日に日に人が増え、ついに昨日は警備員さんがついていた。

　決して騒いだり他の人の邪魔になるようなことはしないので、警備員さんは立っているだけだが、少し年配の方なので、若い女性たちの中で戸惑っているように見えた。

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　毎回、「初日からいてはるけど、どこで情報を入手するんだろう」、「本人がいるわけではないのに観にくるなんて、とても愛されているんだなぁ」、と感心している。

　自分にはそこまでのめり込めるものがない。だからはっきり言って羨ましい。

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　彼女たちにはたくさんの力がある。

　まずは露出される予定をつかむ力。イメージキャラクターへの就任や、映画・ドラマ・舞台等のスケジュールなど、様々な方面の活動予定をキャッチしているのである。
　会費を払いファンクラブに入っている人もいるだろう。
　憧れの人を見るためのキャッチ力は素晴らしいと思う。

　次に行動力。
　自分の予定を合わせ、交通機関を利用し現地にやってくる。
　A社とB社の乗換で利用されることが多い通路に目的のポスターがあることもあり、知らないとたどり着けない可能性もある。
　また、改札が複数あればこれも辿り着けない可能性がある。
　計画的に行動する力が必要であるし、その行動力はすばらしいと思う。

　最後は発信力と楽しむ瞬発力。
　ポスターなので動きもしなければ声も出ない。
　通行人も多く、思うように写真も撮れない。
　しかし、憧れの人が大きくなって目の前にいる。この喜びを噛みしめ、体感し、友達や同じファンの仲間に発信する。
　現地では知らない人同士、新しい交流も生まれているのかもしれない。

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　自分は彼女たちのような力は持っていない。持っているのかもしれないが、発動しないのだ。

　それは、そもそも何かを好きになるにはパワーがいるから。
　自分は何かを好きになるパワーが少ないのだろう。

　だから、彼女たちを見ていると、何かを好きになり、行動する力を凄いと思うとともに、羨ましく感じる。

　ただの通行人のフリをしているが、心の中では「これからも好きのパワーを大切に頑張って」と密かに応援しているのだった。