見出し画像

チャイルドとの手紙

 自分たち夫婦は不妊治療をしていた。共に不妊要因を持っていたので、自然妊娠は難しかった。

 身体、精神、心、時間、お金…たくさん使って色々な経験をし、幸運にも我が子を授かった。しかし、もう1人という願いは叶わなかった。

 もう1人という気持ちはなかなか昇華できない。今もまだくすぶっている。

 治療を終える決断のあと、子どもに関する何かをしたいと思った。治療費とは別にかかっていたサプリ代の一部を使って自分のもう1人の子に使いたいと。

 そこで知ったのが、あるNPO法人の事業だった。

**********

 この事業は、支援事業をしている地域の子ども1人を寄附者が選び、毎月定額を寄附するのだが、直接その子を支援するのではない。

 支援する子どもがいる地域の寄附金を合算し、その地域の事業に使われ、結果的にその子の支援となる。

 支援事業は10年、15年といった長期計画のもと行われるが、地域で寄附を受ける子どもが増えれば事業費も増えるという仕組みだ。

 寄附者と支援する子どもは文通による交流や、希望すれば現地に会いに行くこともできる。

 自分が寄附先として選んだ理由は、支援の場所や事業など具体的に寄附の内容がわかる、相手の顔が見える、そして顔が見えることは子を望んだ自分にとって大きな喜びとなることだった。

**********

 寄附を申し込むとスポンサーとなったチャイルドに簡単な自己紹介の手紙を書くキットが届く。名前などが空欄になっているので埋めるだけでいい。写真も同封できる。

 最初のキットはローマ字で名前などを埋めるだけなので、現地へ直接送ることができる。それ以降の手紙は、自分は英語ができないので日本語の手紙を日本に事務所に送り、翻訳してから送ることになるので時間がかかる。返事も日本語訳してから届けてもらうので、往復に時間がかかる。

 ちなみにEメールも可能で、こちらは英語のみ対応。ひな型のイラストと定型文を選択するだけで送ることができ、郵便より早い。オリジナルメッセージの追加も英語のみである。

 **********

さて、自己紹介を送って約2ヶ月。チャイルドから返事があった。まだ文字が書けないので、現地のスタッフが代筆し、チャイルドが描いてくれた絵が送られてきた。

 封筒を開けるまでのわくわく感、自分の事をたくさん伝えようとする内容、カラフルなかわいらしい絵。

 年賀状も事務的に見るだけになっていた自分にとって、久しぶりにわくわくする嬉しいものが届いた。

 まだ始めたばかりで文通は一往復が終わっただけだが、我が子とは違う形で自分の気持ちを明るくしてくれるチャイルドに感謝したい。

 さて、なんと返事しようか。

 世界は持ちつ持たれつなんだな、と思いながら嬉しい気持ちで返事を書く自分がここにいる。

 

 


ありがとうございます^_^