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通勤電車にて

 自分は出勤時間が一般的なサラリーマンより少し遅いので、ガチガチの満員電車は免れているが、それでも混み合っている。

 乗り合わせている人たちは、たいていスマホを見ているか耳にイヤホンで、自分にはみんな人形のようにみえる。

 先日、こんなことがあった。

 雨の日で少し床が滑りやすくなっていたところに停車時に電車がガタついた。

 後ろで「ドシン」と音がして、何人かの「大丈夫ですか!」の声。

 振返ると立っていた女性が後ろに倒れ、目を開けて少し震えている。

 これは大変だと思っていたら、さっきまで人形のようだった人たちが手を差し伸べて起こそうとし、乗り込んでくる人たちも異変を察知しラッシュピークが過ぎ駅員が近くにおらず、かつ駅がカーブしているため車掌から見えにくいこの場所で、体を半分ドアからだし必死に手を振っている。

 大変な事態なのに自分は、あぁ血の通った人間がたくさんいてよかった、という変な安堵感の中にいた。

 女性は周りの人たちの手助けで立ち上がり、自身は慣れていらっしゃるのか少しふらつきながらもホームを歩いて行った。

 彼女を見送る人たちは、まだ心配顔をしていたが、何も知らない車掌はいつも通り扉を閉め、少し怒り気味に駆け込み乗車の注意アナウンスを流しながら電車は発車した。

 時々このようなアクシデントに見舞われ、時間ギリギリの通勤をしている自分は、電車が遅れる!という自己中心的な感情を持ちつつ、人間がいることを再認識でき安心するのであった。(同時に自分もできることはないかと思いつつ、あわあわしている間にいつも事態が収束する情けなさも体感している)

ありがとうございます^_^