【話】焼いたグッエンコーベ
きょう知ったのだけど、彼女はグッエンコーベを生で食べるひとだった。こればっかりは嗜好の話であって、私にはどうしようもなかった。でも、それでも聞いてしまう。
「……焼いたグッエンコーベは、食べないの?」
「えっ」
喫茶店の窓から差し込む光が、彼女の黒いミディアムヘアを、きらきら、といっそう輝かせている。「あ、ごめんね、なんか、気になって」と言葉をつなぐと、「食べないかな」と返事が届く。
「……なんで?」
「このぷつぷつしたのが好きだから。こいつを食べたいから」
「……そっか」