「バカな」と「なるほど」 吉原英樹 PHP研究所 2014年

本書は1988年の初版に対する復刻版になります。

成功している企業の研究(1980年代当時)
・成功している会社は、「バカな」と「なるほど」の二つの特徴を同時に持っている

◆常識破りの発想

■成功する戦略の2大要件
「バカな」と言われるような差別性(非常識な)
「なるほど」と言われるような合理性(納得できる論理)

■創造的戦略の発想
落差を利用する
「世界と日本」「進んだ業界と遅れている業界」などの差に注目する
⇒外への関心を持ち続けることが重要

■「べき論」より「予測論」
「べき論」の特徴:自己都合主義・保守主義
「予測論」:長期トレンドの予測は常識的なものが多く的中率も高い
⇒それでも出来ない企業が多いのはなぜか?

■効果的な経営戦略の伝え方
・口頭・文書以外に。。。
・人事:ヘッドを誰にするかによって意気込みが伝わる
・予算:新戦略のための予算が重点的に計上されている
・組織:新戦略実行組織の位置づけ・格付け・規模
⇒全て一貫性を持っていることが重要

■マイナス情報に「情け」をかける
マイナス情報=ネガティブ情報=イノベーションの源泉
マイナス情報が経営に的確に届く企業ほど経営革新は行われる
マイナス情報は身を隠したがる:情報発信からの報告ではオブラートに包まれてしまいがち
さらに経営者はそれを冷たくあしらいがち⇒余計に届かなくなってしまう。

■組織慣性との闘い
継続:既存事業の維持拡大
変化:新事業への進出・既存事業からの撤退
人や組織は変化を避けたり抵抗することがある
⇒既存の維持拡大を求める力と変化(新規・撤退)への抵抗

■組織慣性を生む要因
・忠誠心・一体感:変化への抵抗
・パワーバランス:既存事業の相対的な地位低下への抵抗
・サンク・コスト(沈下原価):既存の維持に対し、新規や撤退はコストがかかる
⇒投資効率(投下資本利益率・資本回収期間)だけを考えると既存の方が有利に見えるため新規への進出は回避されがち

・「計画のグレシャムの法則」:悪貨は良貨を駆逐する
既存事業の継続に繋がる日常業務(悪貨)は革新のための計画業務(良貨)に遅延を生じさせる
・リスク回避:既存事業は見通しやすいが新規事業は不確実性が高くリスクが大きい

■危機感の活用
絶対的危機感:このままではつぶれるかもしれない
相対的危機感:ライバルに負ける、成長率が低くなる⇒「くやしい」危機感
⇒相対的危機感をバネにして企業内の変化への抵抗を克服し組織慣性に打ち克つ

それが出来るのが優良企業

■人事にスペシャリストは不要
人事が人を評価する⇒現場の人を評価できるのは現場の人
従来の「バカな」と思われることが本来の「なるほど」になる

■成功のためのリーダーシップ(カラ元気)
想定外の事象が起きてもブレなかった(一貫性)トップのリーダーシップ
何故成功したか?⇒成功するまで止めなかったから(松下幸之助翁)

■人事における社内事情<社外事情
若手の抜擢(野村証券と三菱重工の比較)
・情報化・国際化・ハイテク化:いずれをとっても若い方が適応力がある
・年功序列型企業では出来ない
・出来ているところでもマイナス面はある⇒納得感のある人事が出来るか

■女性活用のメリット
当時(1980年代)では考えられなかったが、考え方は理解されている
ただし実際の役員の女性が占める割合はGlobalでみて日本は低い

■人づくりは人選びから
人のものの考え方を変えることは難しい
採用では会社が学生を選んでいるのではなく、学生が会社を選んでいる
学生は企業イメージで会社を選ぶ傾向がある⇒企業イメージの刷新が必要


◆常識破りの戦略

■多角化を成功させるキーファクター
イビデンを例にユニークな競争戦略
・危機感の中で経営資源を集中投入
・大企業の強みを追求
・特殊化と差別化を追求

企業変身の成功要因
・追い詰められたことをバネに
・蓄積技術の利用
・時代の流れに乗る

企業変身のためのリーダーシップ
・常務・副社長として実行
・既存事業の縮小と撤退

■中堅企業の海外進出の成功条件
言葉・文化・慣習・風俗などの違い
ハンデを克服するのは技術力
・他人依存ではなく自分でやる(100%自己資本が望ましい)
・パートナーは能力より人柄

トップが主導する
リスクに備える(想定の3倍の人・金・時間)
避けるべきこと
・日本で事業が続けられないから。。。
・簡単にマネができる技術
・賃金の格差

■安全運転は新事業の敵
旧国鉄⇒JRにおける鉄道業⇒サービス産業へ
従来の安全運転型ではない人や若い人が中心
⇒鉄道業の安全を保持しサービス化に努めることが成功への道

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