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あなたの会社が理不尽な理由 清水勝彦 日経BP 2016年

経営学者の書籍や論文から経営について様々な角度から分かり易く論じている

◆『パーキンソンの法則』C.N.パーキンソン著 森永晴彦訳 至誠堂 1981年
議題の1案件に審議に要する時間は、その案件にかかわる金額に反比例する
・多くの会議参加者は100万ドルは理解できないが数千ドルは良く分かる
・大銭には寛容なのに小銭にはうるさい(よく聞く話)
⇒「失敗から学べない」のは、そもそもピンと来ていない

人選の法則
採用募集でたくさん応募が来るのはその広告が間違っている
本当に必要な職種やスキルを定義すれば、そんなに多くの人は応募できない

ピラミッドの法則
仕事は時間があるだけ増える
やらなければならない仕事がない人ほど忙しい
仕事が増えれば管理コストも増える⇒不要な仕事を増やさない、今の仕事は必要かを考える


◆データはウソをつく 谷岡一郎著 筑摩プリマ―新書 2007年
顧客企業200社に満足度調査を行ったら50社から回答があり、5点満点で平均4.5点だった
⇒Level1:未回答の150社は良い感情を持っていない可能性もある
 Level2:そもそも顧客は何らかの取引があるから顧客である。顧客でない企業やかつて顧客であった企業の評価が無ければ本当に知りたい情報は得られない

「定義」や「言葉」で「事実」は変わる
⇒アンケートは恣意的に設問が作成できる

因果関係の誤解
⇒AがBを引き起こす因果関係の証明は
・AがBより前に起こっている
・AとBとに相関関係がある(Aが起こればBが起こる)
・A以外にBに影響するものがない
という条件が必要である
AとBに相関関係がありAがBの原因ではない可能性として
・BがAの原因である(Reverse Causality)
・AとBがお互いに影響している
・AもBも第3の変数の結果(隠された変数)Spurious
・単なる偶然
・AはBの直接の原因ではなく、A→C→Bとなる


◆ものづくり道 西堀榮三郎 ワック 2004年
 石橋を叩けば渡れない 西堀榮三郎 生産性出版 1999年

1.創造性は人間の本能
2.創造的な組織には目的と対立が必要
3.人間には無限の可能性がありその実現にはリーダーシップが重要である
本能が活用されるためには「切迫感」「知識」「執念」が必要
「変だぞ」と思う問題意識
従来の教育には『教』はあっても『育』はない
「チャンスを与える」(そして失敗する)ことこそが人を育てる投資

議論には3種類ある
1.「議論のための議論」⇒無駄かもしれないが相互理解とチームワークの醸成
結論は不要
2.「目的に関する議論」⇒忘れがちな原点に戻る姿勢・共通の目的を納得させる
3.「目的を達成させるための手段についての議論」⇒自主性を重んじる

リーダーシップ 
・自主性を育てる
南極点到達PJ スコットとアムンゼン
思いもよらぬことへの対応が出来るかどうか?
自主的に細心の注意を払うように仕向ける アムンセン
注意事項を指示する スコット
・陰ながら見守る
任せること、ただ放任とは異なる
・楽観と細心
・幅役


◆心理療法序説 河合隼雄著 岩波現代文庫 2009年
 カウンセリングを語る(上下)河合隼雄 講談社+α文庫 1999年
「教育」の2つの意味:「教える」と「育てる」
・大人は指導するのが好き
⇒ 「なぜそうするのか?」「もっと良い方法が無いのか?」が考えられなくなる
「因果律」のワナ
何かを「操作する」ことで結果を得ようとする「技術」
カウンセリングで「先生、何か良い方法はないでしょうか?」と訊くのはこれ
「関心」というエネルギー
言葉一つとっても、どういう言葉をどのタイミングでどのように発するかを考える
自分や相手のことに関心を払い指導の前の下準備が重要
「教える側は慢心」するが、「教えられる側は関心」を持つことに敏感


◆リーダーは自然体 増田弥生・金井壽宏 共著 光文社新書 2010年
日本人は「自分の価値」と「日本人としてのアイデンティティ」を知る
「空気を読む」「曖昧」をネガティブでなく用いる(相手の意見を引き出すとか)
二人で対峙したときの質問方法
「あなた」についていうのではなく「私たち」を主語にして質問に対する回答を一緒に考える
リーダーにとって最も重要なことは「社員が自分の能力を十分発揮できているか」である


■「経営学」と「理論」の本当の力
Description:現実をよく理解する
Prescription:処方箋
「ビジネスの現実を教え切れていない」といいつつ、実際には「現実を理解できるほどに理論やモデルが使いこなせていない


■論文や理論の良しあしは「理論が正しいかどうか」ではなく「interesting」かどうかで決まる
対象者の「前提」を理解することが重要

社長に「無理」だと思った時
1.社長に迎合する⇒失敗したときに「社長はダメだ」と愚痴る
  社長の行動は関係ない、自分の身を守るのが大事という間違った前提に基づいた行動
2.直談判する⇒討ち死にする、「だから社長は。。。」と1.と同じパターン
3.唯一の方法「Weakly held assumption」(何となく正しいと思っている前提)を考える
  成功の条件を踏まえているかを指摘して気づかせる


■ストラテジック インテント
Hamel.G Prahalad.C.K Harvard Business Review 2008
『コア・コンピタンス経営』日経ビジネス文庫 2001年

「グローバルリーダーになるという取り憑かれたような執念」⇒「野心的なゴール」を持つことと「経営の厳しいコミットメント」
経営層の厳しいコミットメント
・勝つために何にフォーカスするかをはっきりさせる
・目標を明確にコミュニケートして社員を動機づけする
・個人やチームの貢献を活かす
・環境の変化に合わせて挑戦課題を再設定し社内のやる気を引き出す
・常にストラテジック インテントに基づいて社内の資源配分を行う
経営者には「言っただけ」「計画しただけ」であとは現場次第と思っている経営者も多い
「株主価値の最大化」では社員個人のやる気が出てコミットしようとは思わない

社員を信じる
失敗の責任は社員に押しつけてはならない
ストラテジック・インテントを持つとは「社員が全力を尽くせる環境を整えること
・社内に危機感を醸成する
・社内のすべての階層で競争相手に対する意識をもたせる
・社員にパフォーマンスを高めるためのスキルを教育する
・社員が1つのチャレンジを消化してから次のチャレンジを与える
・分かりやすい段階目標を設定してレビューする

「ワークライフバランス」で会社と一定の距離を保つことが指摘されているが、実際に人生の大半を過ごす会社に対して愛着が持てなければ個人も会社もハッピーではない。

コミュニケーションの重要性
事業部長クラス:経営層が競争上の課題をオープンに議論しないことに不安
⇒問題に気づいていないのではないか?
事業部長も部下とコミュニケーションを取っていない
⇒現実を受け入れられない(と感じている)
その結果、皆が脅威を感じていながら誰もそれについて語らないという不安だけが独り歩きをする

経営陣が壮大な目標を掲げられないのは、活気ある成長に向けて全社を結集させる自信がない
⇒財務目標の引き上げでお茶を濁している
難しい目標を達成できるという自信を社内に植え付け、モチベーションを高め、新しいCapabilityを着実に身につけることが本当の挑戦課題である


■レジティマシー(Legitimacy):正当性・社会的信用
社会学や組織理論の中では「社会的に認められているかどうかということ」
社会的信用を得る⇒常識に沿ったこと⇒差別化が出来ない

ベンチャー企業の経営におけるパラドックス
1.夢ばかりを語ってもお金(投資家)が集まらない
2.期待が高まるほど失敗のリスクも高まる
3.期待を高め社会的信用を獲得するための「関連付け」は「逆噴射」の可能性を高める

パラドックスへの対処策
1.アナロジーとメタファー(隠喩)を使う
聞く側が感情移入しやすく、コミットしやすい
2.下手な言い訳をしない
3.期待を再定義する(夢を変えるのではなくより具体的な中身で提案する)


■意思決定のスピードを決める意外な要因「That's Interseting」
「当たり前」に注意を向け「否定する」

意思決定のスピードの違いを生む要因
1.情報を広範に集めない方が早い⇒多くの情報を活用したほうが早い
2.多くの案を考えない方が早い⇒多くの代替案を検討する方が早い
3.経営者が1人で決めたほうが早い⇒アドバイザーを活用したほうが早い
4.対立意見が無い方が早い⇒対立意見を出して解決する方が早い
5.1つ1つ行った方が早い⇒大小複数を関連させて検討する方が早い


■失敗から学ぶための質問は「Why」ではなく「How」
失敗を認められない企業はその要因に対して内省するだけ(Why Bacause)
失敗を認める企業はどのような経緯で意思決定したのかを重視する(How)

失敗を活かす7つの原則
1.プロジェクト開始前に成功と失敗のイメージを定義する
2.前提を知識に変える
3.失敗は早めにする
4.「安く」失敗し損失を抑える
5.不確定要素を出来るだけ少なくする
6.知的な失敗をたたえる文化を育む
7.学んだことを形式知化し共有する

失敗することが必要な理由
1.人間はそもそも自信過剰だから
2.人間はリスクを取りたくないから
3.人間は自分に都合のいい証拠を選ぶから
4.人間はフィードバックを過信するから

失敗から学ぶことの本質
⇒「自分の持っている成功方程式のどこがどう間違えていたか」を知ること、「前提」を見直すこと
2種類の失敗
・方法が悪い、知識が無く目的が達成できない⇒原因を解明して対策を打つ
・そもそも「目的」や「戦略」やその考え方の前提が間違っていた
 分かっていたと思っていたことが実はわかっていなかったと分かる重要性
 自分が本当に分かっていることいないことを試すためにもチャレンジして失敗することも必要

■不確実性に対する「リーン・スタートアップ」という考え方
新規事業に計画や分析は必要条件だが、必要十分条件ではない
⇒綿密な事業計画や戦略をつくると安心してしまい、計画外なことに対応出来なくなる
未来を予測することは不可能であるという現実を直視する

リーン・スタートアップ(やってみなければ分からない)戦略
・事業計画に沿って展開するのでなく、(粗削りなアイデアをベースに)失敗を経験し学びながら当初のアイデアの修正を続けること
1.MVP(Minimum Viable Product)
必要最小限の機能を持った商品(本質的価値を磨く)
2.顧客からのフィードバック(実験)
ただし顧客欲しい(といっている)ものをつくるのは× やってみなければ分からない
3.仮説検証と学習
出来るだけ早く安価にサイクルを回すこと

「アイデアは盗まれる」は幻想
重要なのはそれを実現する様々な資源と実行するための体制と人
盗まれて困るアイデアなら既に誰かが考えている

既存企業はビジネスモデルモデルの実行に重点を置く
スタートアップはビジネスモデルの探求に注力する


■日本企業のガバナンス論議で重要なこと
今、当社が抱える問題は何か?
どのようにしたら中長期的に当社の競争力を強化できるか
そのために組織としてどのような人的、技術的、文化的強みがあり、何がさらに必要とされているのか
⇒現実を直視しその認識を共有することが重要


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