書籍:ことば、身体、学び
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
ことば、身体、学び
アスリートの為末大さんと、言語心理学者の今井むつみさんの対談の書籍を読みました。
著者の概要
為末大さんは、言わずと400メートルハードルの日本記録保持者です。
陸上競技選手にとっての永遠のヒーローです。
多数の著作があり、走る哲学者と呼ばれています。
今井むつみ先生は、慶應義塾大学の環境情報学部の教授をされています。
学術論文だけでなく、新書を何冊も出版されています。
ゆる言語ラジオにも、度々ゲストとして登場されています。
ざっくり感想
身体のスペシャリストと、言語のスペシャリストによる、身体と言語の関わりについて対談されています。
知識や教養が増えるという面でも、ためになるお話なのでした。
それだけでなく、身体と言語はこのようにリンクするのかという発見がたくさんあます。
例を交えて説明してくださっているので、非常に読みやすかったです。
これを読むと、言語についてもっと知りたいという感覚になりました。
今回、私の理解レベルは整理が出来るものではなかったため、印象に残ったポイントをいくつかピックアップしてご紹介します。
接地
概念を表す言葉をしっかりとイメージできている状態を「接地」と呼ぶそうです。
例えば、算数における分数、小数、数列、負の数などは概念ですが、これらが具体的な生活のなかでイメージ出来ている状態が、接地している状態と言えます。
例えば、ケーキを家族で4等分したとか、定規は1cmの目盛りと1mmがあるとか、普段の生活とリンクして説明出来ると、接地していると言えます。
物事の基本的な概念が接地していると、そこから具体的なイメージではなく、抽象的な概念のまま言葉を操れるようになります。
一方、設置していない概念をつかって別の概念を説明しようとすると、よくわからない記号をつかって記号を説明してしまい、あたかも漂流しているような状態となります。
基本的な概念が、身体や経験につながっていることで、その先の抽象的な概念も理解できるようになります。
身体と接地していることが、概念理解の取っ掛かりとなります。
メンタルモデル
メンタルモデルは、状況を心の中で組み立てたイメージのことを言います。
算数の問題で「14人の子供がいます。太郎さんの前に6人いた場合、太郎さんの後ろには何人いるでしょうか?」といった問題が出たとします。
このとき、実際に子供が14人並んでいる状況をイメージしたものが、メンタルモデルです。
このメンタルモデルを組み立てずに問題を解こうとすると、14 - 6 = 8のように計算してしまい、答えを誤ってしまいます。
友達が100人がいて、100人でおにぎりを食べたら、1人余ってしまうのと同じことが生じます。
算数の問題が解けない子供は、このメンタルモデルを作ることができないとも言えるでしょう。
物語など、本を読むことが、このメンタルモデルを構築するトレーニングとなります。
熟達
スポーツなどにおける熟練者は、緊張と弛緩の差が大きいと言えます。
動作のすべての状態で力が入っているわけではなく、力が入っていない状態と入っている状態を調節しています。
この調整を使って、毎回異なる状況においても、同じ結果を出すことにつなげています。
例えば、うどん職人は、その日の湿度にあわせて、小麦粉や水の量を調節するそうです。
動作を一定にするのではなく、アウトプットが一定になるように、状況にあわせたゆらぎを持てるのが、熟達者の特徴といえます。
判断
スポーツ選手は、一瞬で判断をすることが求められます。
思考システムには、ファストシステムとスローシステムというものがあります。
直感に近いレベルで即座に判断するものがファストシステムで、ロジックを持って時間をかけて判断するものがスローシステムです。
スポーツ選手は、自分が習熟している領域でのファストシステムの精度が非常に高くなるようにトレーニングを積みます。
このファストシステムの領域は非常に狭いため、自分がもっている領域はどこまでかということを理解することも重要なことと言えます。
言葉の感度
言葉を色々な環境で使い、その体験を溜め込むと、言葉の使い方の感覚を掴んでいきます。
言葉の感度が高くなると、調整力やメタ認知が育ち、結果的に応用力が上がります。
言葉の感度をあげるには、様々な物語を知ることが重要です。
他にも様々なお話があり、非常に面白い内容でした。
私自身、この書籍の内容を調整して話せるほど接地していない感覚があります。
ただ、学びというものが言語や身体と強い関係があるということは、ふんわりと感じることができました。
為末さんも、今井さんも、熟達や学びに関する書籍を出版されていますので、それらも読んで理解を深めいたいと感じています。
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