テクノロジーとクリエイティブによって創造される体験

※過激な描写がございますので、18歳未満の方はお読みにならないよう、お願い致します。
※コンプライアンスに配慮し、一部フェイクを交えております。

私は追い込まれていた。
アサインされたプロジェクトの納期がいよいよ差し迫っていた。

それは広告キャンペーンに関わるもので、専用サイトの開設やオフラインイベントの開催など、多岐にわたるプロジェクトだった。

業界では信頼の厚いキャンペーンプランナーA氏と私の上司が共に広告主に提案し、獲得した案件で
仕事の割り振りとしてはA氏が広告キャンペーン全体のデザインを手がけ、我々の会社が特設サイトやイベント会場の演出を制御するシステムなど諸々のソフトフェアに関する領域を請け負った。

私がアサインされた当初の社内のチーム構成は、私以外には大学生のインターンが一人だけだった。
我々の会社はその当時まだ社員数が10名にも満たない駆け出しのベンチャーだった。
ところで、インターン生は私がアサインされてすぐにオフィスに来なくなったので現場は実質私一人だった。

先に述べたように、催し事が多岐にわたるので概要の説明は難しいが、全体のコンセプトとしては
「ビッグデータを用いて20代の女性に今までにない体験をしてもらう」
というようなもので、私はその実現の為に企画の内容を詰め、システムの設計と実装に必死に取り組んでいた。

A氏と上司が何度も推敲を重ねたキャンペーンのグランドデザインは本当に素晴らしいもので間違いなく20台女性の心を掴むものだった。
ただ問題があるとすれば、具体的な実装方法についてまだまだブラッシュアップする必要がある事と人員、時間の余裕があまりにない事だった。

納期が近いにも関わらず一向に期待するアウトプットを出さない私に社長はイライラしながら言った。
「ビッグデータを統計的にちゃんと解析すれば、女が好きそうなものが出来るんだよ!ちゃんとやってるのか!お前、これ知ってるか?」
見せられたのは、その当時若い女性の間で人気だった恋愛リアリティドラマと連動した企画サイトだった。
「こういうのだよ!こういう女の心掴むの作れよ!このサイト月間女性のユニークユーザー数100万超えてんだぞ!」
「はい、でもこれはドラマありきですし、人気女性クリエイターが多数携わっていると聞いてますが…」
「ユーザーの気持ちちゃんと考えてんのか!そうやって思考を狭めるな!サイトをただ作れと言ってるんじゃない!ドラマを含めてこのコンテンツで味わえるリッチな体験と同等のものを、ユーザーに提供するんだ!俺たちにはビッグデータがあるから出来るんだ!」
私は己の怠慢とマイナス思考を恥じ、
「はい、解析します!」と気合いを入れ直した。

私は深夜まで続く作業を数日こなし、イベント会場で行う企画の企画書とそこで使用するシステムのデモ、
そして何とか動くようになったキャンペーンサイトを社長とA氏に共有した。

それは完全なものとはとても言えなかったが、方向性だけでも擦り合わせられるよう必死に形を整えたものだった。

A氏からは「完成形期待しています」とだけ連絡が来た。社長には、「これじゃ、いまいちだ!少し打ち合わせをしよう」と小一時間ディスカッションをし、改めて「ビッグデータを活用し、新しいユーザー体験を提供すること」の重要性と、我々の会社が将来担うべき役割が再確認された。

私は引き続き、諸々の開発を進め、とうとうイベント開催の2週間前になった。
その間、何度か進捗をA氏に共有したが、「完成期待しています」以上のフィードバックが得られず、閉口し、社長に相談するも、A氏に直接聞けというので、一旦開発の手を止めA氏にアポイントをとり会いに向かった。

A氏はちらっと私のアウトプットを眺め、氏の期待するイベント全体の構想をしばし考え込んだ。
私は無言でただその様子を見守った。
10分経過しただろうか、氏は私をじっとみつめ「はいはい、だいぶ見えてきた。このイベントでは女性がビッグデータで新しい体験をし、今まで気がつかなかった自分らしさを発見すればいいんだ!」と言った。
そのあと、その為にどんな演出をするかA氏は語り、感化された私は徹夜の疲れも忘れ「なるほど、楽しみです!頑張ります!」と言ってA氏の元をあとにした。
正直、A氏の思い描く演出がどのように実現されるのか私には分からなかったが、しかし期待感は大きく膨れ上がった。

それから数日、いよいよデットラインに迫り私は納得いかない点も多くあったが、諸々のアウトプットをA氏に提出した。

するとすぐにA氏から社長に電話があった。何か揉めているようだった。社長は電話を切ると私に静かに言った。
「Aはお前のアウトプットに怒っている。だが安心しろ。俺はお前を必ず守る。それが社長の務めだ。Aのところにいくぞ。」
私は自分のアウトプットが稚拙だという自覚はもちろんあったが、それでも必死になんとか形にしようと取り組んでいただけに内心とても残念だった。
「お前を守る」という社長の有り難い言葉もなぜか心に響かず私は暗い気持ちで社長に従い、A氏の元を訪問した。

「社長、これで良いんですか?あなた達の実力はこんなもんじゃないでしょう!イベントに来てくれる人たちはこれで納得しますかね?こんなんじゃ、全然ダメですよ!」
A氏は怒り心頭で社長に怒鳴った。
しかし社長は毅然と言い返した。
「我々はもちろん全力を尽くしています。進捗だって今まで何度も共有したのに、あなたは全然目を通していなかった!」
「それはあなた達に全面的に信頼していたからだ!それなのにあなた達は私の信頼を裏切ろうとしている!がっかりだ!」
「わかりました!わたし達がこの企画にどれだけ本気か、説明しましょう!」
社長は振り返ると、「ケツをだせ!」と私に怒鳴った。「Aに全部見せてやれ!」

私ははっとして慌ててズボンと下着を脱ぎ、全てをA氏の前にさらけ出した。
A氏は「まだ、分かりません!まだ分かりませんよ!」と怒鳴りながら、荒々しく私の反対の口にむしゃぶりついた。
私のその口はすぐに緊張と弛緩を繰り返し口寂しそうにした。
社長は鋭くそれをみとめ、「ほらもう!ほらもう、ビッグデータの入力を待ってる!」とA氏に注意を促した。
A氏は「もちろんですよ!」と奔放なもう一人のA氏を露わにし、私の反対の口に咥えさせた。私の反対の口は、まるでピラニアのように強くそれを噛んだ。
A氏はその感覚に声をあげ「まだ、分かりません!まだ分かりませんよ!」と激しく下半身の踊りを踊った。
「あ、あ、」と私はただ0と1のデータを、出力する。
「Aさん!ビッグデータの活用!吐き出すんです!新しい体験!」
社長が叫ぶと、Aはさらに一層夢中で踊り狂った。そのリズムが私の中で大きく反響し、脈動がうまれる!
「まだ、分かりません!まだ分かりませんよ!ああ、20代女性の新しい発見!新しい自分!ああ!!」
Aは多くの人の心を動かすようなエモーショナルな声をあげ、最適化されたデータを私に入力した!
私の中の偉大な脈動はその入力をアナライズし、濁流のような出力を果たした。部屋が私の色で染まる!新しい体験!
「ビッグデータが新しい体験をユーザーに提供する!」
社長はそう雄叫びをあげると、出力を終えたばかりの奔放なAの分身を自分のポートに接続する。
「見えてきた!見えてきました!屋内会場には間接照明を設置するんだ!アロマデフューザーのブース!とことんおしゃれに!」
Aは夢中で今度のイベントのグランドデザインを思い描く。
「俺たちのプロダクト!イケてる俺たちのプロダクト!トッププレーヤー!」
社長は呼応するように叫ぶ。
私も負けじと必死に思考を前進させ私のアイデアを饒舌な私の分身で語る。
A氏はそれを腹落ちさせる為に、心とともに脚を大きく開く。

このような形でディスカションはおよそ深夜まで及んだ。
私達は互いを信頼し合い、必ず今回のプロジェクトを成功させる事を誓った。

以上は私が駆け出しのデータ分析エンジニアだった時の思い出だ。クリエイティブとテクノロジーのダイナミックな結合を体験した掛け替えのない思い出である。
ちなみにこの時のイベントは、広告主のイメージキャラクターである若手俳優も登場し大成功をおさめた。

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