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【7日目】ボロボロで辿り着いた村

朝日が昇ってから2時間くらい眠りについて、板チョコを1枚食べてからジョナサンに跨った。

雲一つない青い空。
目の前の湖はキラキラ輝き、心地良い風が時より頬をなでて、それに合わせて草も揺れる。

この景色を見れるだけで一気に疲れや気力も回復する。

今日は、昨日会った青年が言っていた近くの村まで行ってゆっくりするとしよう。

足もボロボロで、ジョナサンに引き摺られた時にえぐれた小指は化膿して赤く腫れている。
睡眠不足で体も辛くなってきたし、何よりジョナとクロも相当疲れている。

青年が教えてくれた山の間を目がけてジョナを走らせた。
「山の間をまっすぐ進めばつく」という言葉だけで簡単に見つかるわけもなく、迷ってウロウロしているとバイクに乗ったおじさんに遭遇。

村の場所を聞いて、そっちの方向に向かうと小さな小川に沿って、1kmぐらいにポツポツとゲルが20件ほど建っていた。

青々とした草も生い茂っている。
ジョナから降りて、一番手前のゲルを訪ねると人の良さそうなおばさんが出てきた。

「どうした?いいから上がりなー!」

何も聞かずにすぐに家に上げてくれて、ツァイ(塩ミルクティー)をお椀に注いで渡してくれた。

中に入ると、子供3人とおばさんと夫、祖父母の7人家族が温かく出迎えてくれた。
お茶を飲みながら、アスカ、ミルカが書いてくれた手紙を見せて、今の状況を説明すると、人の良さそうなおじさんがこう言った。

「ここまで良く一人で来たね。ここには馬にいい草がたくさん生えてるからゆっくり休んでいきな」
「ありがとう!近くにテントを張らせてもらってもいい?」
「少し狭いかもしれないけど、ここに泊まっていきな」
「ありがとう!でもクロとジョナサンが見える場所で寝れるほうが安心するんだ。テントで寝るよ」
「わかった。せめてご飯はうちに食べに来なさい」

ここの家族は本当に親切な人ばかりだ。
この近くで食料や飲み物が買える場所がないかと聞くと、村に店はないけど4km先に簡単な物を売ってる人がいるとのこと。

おじさんが「バイクで行けばすぐだし、連れて行ってやるよ!」と言ってくれてから、今回は甘えることにした。
クロから荷物を降ろして、クロとジョナを草のいいところに繋いでから、バイクのおじさんの後ろに跨った。

バイクで行くと、本当にあっという間に到着!

オレンジジュースを多めに買い足して、ゲルに戻った。
テントを張って荷物を投げ込むと、クロに乗って少し先の小川の下流へ。

天気も良くて暖かいし、服を全部脱いで川に入る。
あまりに無防備だから、ナイフと鞭だけすぐ取れる場所に置いておいた。

氷水のように冷たい川だけど、綺麗な体のほうが疲れや傷の回復も早いし我慢!
ついでに洗濯もしてテントに戻った。

洗濯物をテントや草の上に適当に広げて、テントで日記を書いているとそのまま寝てしまった。

「こんにちは。こんにちは。誰かいないのか??」

誰かの声で目を覚ますと、日本人が来ていると噂を聞いたおじさんがどこからか訪ねてきたらしい。
色々と話していると、また別の人も訪ねてきた。

常に誰かしらが訪ねてきては、酒やタバコをくれる。
昨日会った青年もしばらくしてから来てくれた。

一通り話したところですっかり目も覚めてしまって、隣のゲルの子供3人がやたらちょっかいを出してくるからしばらく一緒に遊んであげた。

疲れのせいか、やっぱりまだ眠くて夕方の明るいうちに3時間ほど寝た。
起きてからご飯を炊いて、焼き鳥の缶詰と一緒に食べたけど、これがめっちゃうまい!

ちょうど食べ終わった時に隣のゲルのおばさんが、夕食が出来たから来るようにと誘われた。
一応、ゲルに行って「さっき、ご飯ちょっと食べちゃったから」と話し、ツァイとウォッカを貰って色々と話をした。

子供たちと遊んだり、みんなでワイワイして楽しい夜を過ごした。

「いい人に囲まれてるこの環境ならジョナとクロも盗まれる心配はない」と確信して、この日は周りの草がなくならない程度に2時間毎に起きて馬を移動させるだけで済んだ。

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