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【3日目】Part2 一人馬旅1日目でボロボロになる

逃げたジョナの綱をダイビングキャッチでなんとか捕まえ、一安心して立ち上がった。

その瞬間、興奮して跳ねているジョナの後ろ足が膝の上に直撃!
受け流せたけど、あまりの痛さに崩れ落ちた。

興奮して暴れていたジョナも急に大人しくなり、こちらを心配そうに見ている。
直前で足を引いてダメージを受け流せたおかげもあって、しばらく休んだら歩けるまでに回復。

もし受け流せてなかったら確実に骨折してただろうし、荒野の真ん中で歩けなくなってたらと思うと本当に恐ろしい。。。

冷静になって、自分の体の負傷具合を見ると、さすがにジョナに100m近く引きずられたこともあって、服もズボンも破けていて、全身擦り傷だらけになっていた。

そしてジョナを止める時に綱を握っていた右手は豆がいくつも潰れて、小指に至ってはロープ型に3mmほどエグれて、血がポタポタと垂れていた。

GPS、LED、ナイフ等の装備が無事だったのは不幸中の幸い。

怪我してから5日後の写真

クロは少し離れていた所でこっちを見ていて、こっちから近づいても逃げなかったから捕まえるのは簡単だった。

落ち着きを取り戻したジョナに乗って、GPSの位置を頼りに荷物を探した。

GPSの精度はそこまで高くないし、同じような景色が永遠と続いているもんだから荷物探しは難航して、1時間近く辺りを探し回りやっと発見!

もしあの時、GPSで登録してなかったら全荷物は絶対にもう見つからなかっただろうな。
冷静な判断が出来なくなると、命取りになるということを改めて実感した。

ジョナとクロを繋いでから荷物の損傷具合を確認してみると、クロが暴れた時に踏まれて荷物はグチャグチャに、バックはズタズタに破れていた。

食料も、アスカから貰ったビールやらレトルトのカレーは破裂していて、飲み水も半分くらいはダメになってしまった。

それでもソーラーパネルと一眼レフ、充電器類が無事だったのは奇跡的!
切ってしまったロープを繋いで、バッグは最低限だけ縫い、右手は消毒して布を巻いて応急処置!

ジョナもクロもバッグを以前にも増して怖がるようになってしまったから、白のバッグに土を塗って泥だらけにしてみるとそこまで怖がらなくなった。

ブヨが多くて2人とも機嫌が悪かったし、さっきの一騒動でまだ興奮気味だったから、まずは信頼して貰う為にも馬から降りて引いて歩くことにした。

乾いた風と照り付ける太陽のせいでやたらと喉が渇く。
こういう時の太陽はやたらと憎たらしい。

4時間ほど歩くと、川の近くに廃村のような場所が見えてきた。
そろそろ寝る場所を探さないといけないし、食料も補給しておきたいし、何より2人に水を飲ませてやらないとそろそろ限界だろう。

川辺の村に近づいていくと、どんどんブヨが増えてきた。
人影もなくて、家が数件立ってはいるけど半分は崩れかかっている。

あまり期待はせずに声を上げてみた。
「誰かいますかーー??」

しばらく静寂が続いて諦めようと思った時、家から老人が一人出てきて手招きをした。
「よく来たね。うちへ上がりなさい」

馬を近くに括って、その家に入ってみると、そのおじいさんは1人で住んでいるようだった。

「大変だったろう。お茶でも飲んでいきなさい」
ツーテーチャイ(塩の入ったミルクティー)を砂だらけの割れた茶碗に入れて出してくれた。
穴だらけの家を見ても決して裕福ではないのは分かるのに、快く出してくれたお茶が嬉しくて一気に飲み干した。

モンゴル語が話せるようだ。
「ひどい怪我だけど、大丈夫か?」

「さっき馬に逃げられてしまって。捕まえる時に怪我をしたけど大丈夫です!この辺りに店はありますか?」

「この先60kmほど東に進まないとない。」

「そっか。この辺でブヨが少なくて馬を休めさせる場所はあります?」

「それなら山の方に行くといい。あっちならブヨも少ない」

他にも、この村はもともと人がもっといたけど、今は自分たちの親族しかいないこと、そのおじさんは日本がモンゴルの発展に協力してくれて感謝していること等を話してくれた。

もう日も傾き始めているし、あまり長居も出来ないからお礼を言って、川で馬に水を飲ませて出発した。

山の方向は少し来た道を戻るけど、日も暮れてしまうからしょうがない。
どんどん山に近づくにつれて、確かにブヨは減っていって一安心した。

ただ、向こうに水源があるのかだけが気がかりだ。
途中、遠くから1台のトラックが近づいてきた!

若くて体格の良い上半身裸の男たちが身を乗り出してこっちを見ている。
また強盗か?と身構えたけど、顔を見れば悪意がないことはすぐに分かった。

彼らは無邪気な笑顔で声を掛けてきた。
「あんた、どこ行くんだ??」

「この辺はブヨが多いから馬を休ませられる場所を探しているんだ。あっちに川はある??」

「俺らの現場があるから水はいくらでもあげれるし、来れば歓迎するよ!先に行って待ってるぞ!」

ジョナに乗り、そのトラックの行った先に向かって走りだす。
下からは見えなかったけど、近付いていくと確かに山の間に変電所らしき工事現場があった。

来客が珍しいのか、30人程が現場の外に出てきてこっちを見ている。
馬から降りて歩いて近づくと、さっきのトラックの人たちが出てきた。
「待ってたぞー!今日は遅いし、ここで泊まっていきな!」

寮のような建物を指さして、招いてくれた。

「ありがとう!でも馬の草が少ないし、小まめに移動させてやらなきゃいけないからテントで寝るよ!」

「OK!じゃあ後でテントに遊びに行くよ!」

そういうと20人くらいが馬から荷を下ろしたり、テントを張るのを手伝ってくれた。
一段落したところで、みんなが興味津々らしくてビール、タバコ、お茶など色々と持ってきてくれては質問攻めにあった。

バケツで水も持ってきてくれて、最初は慣れないバケツの水を警戒して飲もうとしなかったけど、最後はジョナもクロもたっぷり飲んでくれて一安心。

200~300人もいる現場らしくて、簡単な物だけ取り扱っている物売りみたいな人もいたから無事に食料と水も補給できた。

トラックの運転手にどのルートで進むつもりだ?と聞かれ、地図を広げてここで川を渡るつもりだと説明すると、 少し前の大雨でこの先の川の水位が上がっていて、いつも通っているトラックでも渡れなかったから馬では絶対に無理だとのこと。

かなり遠回りにはなるけど迂回するしかなさそうだ。
何はともあれ、事前にこの情報を聞けただけでもここに寄って本当に良かったと思う。

本当に親切な人たちで助かった。
みんなにお礼を言って早めにテントに入り、ロウソクの灯りの下、徹夜で荷物の修復と治療をした。

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