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土蔵のあるまち並みに人々の暮らしが息づく 八郡(集落の話の聴き手だより7月号)


こんにちは! 「集落の話の聴き手」です


 町に出ると、「だより」読んでるよ、とお声掛けされることも多く、その度にうれしい集落の話の聴き手一同です。3年目になるこの事業では、これまで同様、月に1度の「集落の話の聴き手だより」を発行します。地域での思い出や暮らしぶりについて、公民館でお聴きして回る予定です。

 昨年度も発行していた、「集落の話の聴き手だより」。今まで知らなかった集落のことを知れてうれしい!など多くの反響、ありがとうございます。今年度はさらに紙面を大きくし、より多くの情報をみなさんにお届けします。引き続き、お力添えをよろしくお願いいたします。

土蔵のあるまち並みに人々の暮らしが息づく 八郡



 八千穂高原へ続く国道299号から、脇道へ。そこに、山間の集落「八郡やこおり 」があります。ゆるやかな坂道に沿って、昔ながらの土蔵を持つ家屋が残っており、脈々と続く人々の暮らしを感じることができます。

 今回は、八郡区と八郡の老人会が主催する「お楽しみ会サロン」(以降、八郡サロン)にお邪魔しました。会場の八郡公民館の隣には、古文書が保管された倉庫。そして、ここが分校であったことを思い出させる、グラウンドや二宮金次郎の像も残っています。その佇まいから、この場所そのものが集落の歴史を物語る、重要な場所のようにも思えます。

 八郡サロンは、町の介護予防拠点事業の一環として、前年度までの区長さんと老人会で発足しました。
「みんなで集まってわいわいやるのもいいんじゃないかって、始めたんだ。」
 朗らかに話す会長さん。今年の4月に前区長さんは交代となりましたが、活動は継続することになりました。
 「役員の中で、やりたいっていう人がいたからさ。」と、今度は新しい区長さん。やりたい人の気持ちを尊重し、今に続いているのだそうです。みんなが協力し合う集落の様子が、伝わってきます。

 今年度はじめて開催されるサロンにもかかわらず、開始時間が近づくと続々と人がやって来て、あっという間に10人以上も集まりました。私たちは今回はじめて参加させていただきましたが、みなさんにこやかに迎え入れて下さいます。

サロンにご参加のみなさん。70〜80代の方が中心です

「長老たちは、お寺で花見をしているんだ。昔の話(を聞きたい)なら、そっちで話すのでもいいぞ。」と、お誘いの言葉まで。地域の仲間で集まって、お茶を飲んだりおしゃべりするのが、みなさんお好きなようです。「音頭とるしょう は大変だけど、わりあい集まるいね。」 そんな明るく集まり好きな八郡の方々に、集落での暮らしを伺いました!

毎晩仲間たちと練習をした“大縄跳び”村民運動会の思い出


 みなさん共通して印象に残っていたのは、佐久穂町に合併する直前まで行われていた八千穂村の村民運動会です。八千穂村誌によると、第1回の開催は、昭和37(1962)年。分館ごとに競い合う、一大イベントだったそうです。多い時には19分館が参加し、恒例の対抗リレーでは応援の歓声が校庭いっぱいに広がりました。優勝に向け、それぞれの分館で練習が行われたエピソードからも、運動会に対する盛り上がりが伺えます。

「練習も、ここで毎晩したよ。(大)縄跳びとか。10人だか入ってやるだけど、難しくって。俺が掛け声かけて、回したよ。」
「賑やかにやっていたよ。八郡が優勝したこともあってね。その時は、この公民館で盛大にお祝いした。」
 と、男性陣。地区の体育部という役員で中心になって取り組んだ際の話も、懐かしそうにお話してくれました。

「ムカデ競争もしたよね。みんなで並んでくっついてね、えっさほいさって。足が揃わないと転んじゃうから、息をあわせて。」
 と、こちらは女性陣。みなさんが熱心に取り組むからこそ、時には厳しい言葉が飛び交うこともあったと、笑いながら話してくれました。
「でも、練習中に何か言われても、い(え)らいなんとも思わずにみんなやったよね、不思議と。」
「そう!苦にならなかった。」

 みんなが真剣に練習に向き合い、楽しみながらも切磋琢磨して、同じ目標に向かっていたようです。それぞれの人柄が分かっているからこその、信頼関係なのでしょう。みなさんの家族のような絆が垣間見える、とても素敵なエピソードでした。

みんなが先生役!やってみたい、を形にする若妻会


今でも大切に保管されていた若妻会で作った作品

 サロンにお集りの女性たちが八郡にお嫁に来た頃は、「若妻会」という婦人会の活動が盛んでした。様々な活動の中でも、まず話題になったのは手芸の活動。公民館のコタツの上掛けやカーテン、人形、セーター…さらに、クラフト用の紐でかごも作ったと話してくれました。どうやって、こんなにも多岐に渡る作品を手掛けることができるのでしょうか。話を聴いていけば、なんと、外部講師に教えてもらうのではなく、仲間同士で先生となって教え合っているのだそうです。これが若妻会の特徴だと、教えてくれました。 

 メンバー同士で、得意なことや作れるものを持ち寄り、その人が先生となって、みんなで楽しむ。そんな活動を続けていたら、たくさんの作品が出来上がったのだとか。もっと作れるものはないだろうか、と日々の生活の中でも次の作品の参考になるものを探すほど、みなさん熱心に取り組んでいるようです。やりたい!と声を上げたものを、一緒に楽しめる仲間がいるなんて、とても素敵ですね。「みんな仲がいいんだよ。助け合いっていうかさ。」「私たちの年代はうんとつながっていて、みんな(行事に)参加したんだよ。」

若妻会の七福神の仮装(八郡地区の夏祭り)

 当時は、八郡地区単位でのお祭りも多く、若妻会では踊りや仮装で参加しました。また、年に1回の温泉旅行もありました。夜にある若妻会の集まりに出かける際に、お義父さんが「いっておいで。」と送り出してくれ、子守もしてくれた、という思い出話も。お嫁に来た女性たちがつながりやすいようにサポートしてくれる家庭の雰囲気が、とても温かいですね。

 また、女性の集まりとして昔から続く「お十九夜さん」。聴き手の活動をする中で、何度か話題にあがったことのある行事ですが、八郡でもまだ行われているそうです。安産の祈願を目的としているため、女性によって執り行われるものですが、八郡では3月19日前後の土日に行います。

「若い嫁さんたちは子どもを連れてきてさ、嫁さんいない衆は、おばやんたちがくるの。1軒に1人(は出す)って決まっているから。」
「昔はお念仏をあげて、鐘をたたいてね。(今は)お念仏のテープもあるんだけど、私らの代はもう、唱えることができないんね。」
 時代と共に変化があるようですが、年齢に関わらず集まるこの行事もまた、女性同士のつながりを強くするもののようでした。

若妻会やお十九夜さんについての様子を教えてくださったみなさん

 暮らしの中に根付く、家族や地域の人たちとの関係性。みなさんのお互いを思い合う心に、お話を聴くだけで温かい気持ちになりました。八郡サロンのみなさん、ありがとうございました! 

文章:川嶋 愛香 
写真:川嶋 愛香・大波多 志保
編集:櫻井 麻美


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