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第8回Zoomで健康 講演スライド(あなたの胸痛の原因は?)


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“胸が痛い”といったら心臓が原因というイメージがあるかもしれません。
しかし、胸が痛くなる病気は、このようにものすごいたくさんあります。
医師は、患者さんの話を聞いたり、診察をしたり、そして検査をして、その方の胸痛の原因をこの中から特定しますが、

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その中でも特にこれら5つの病気
緊張性気胸、虚血性心疾患(狭心症/心筋梗塞)、急性大動脈解離、特発性食道破裂は絶対に見逃さないように注意しています。
というのを、この病気をもし見逃すと、突然死んでしまう可能性があるからです。

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ということで、たくさんある胸痛の原因となる病気をこのように整理してみました。

頭の中は
まずは見逃してはいけない5疾患!
その中でも、まずは心原性かどうかcheck!(虚血性心疾患?虚血性心疾患ぽかったら安定、不安定、心筋梗塞どれ?)
違いそうだったら、非心原性はどうかな?(大動脈解離、肺塞栓症、緊張性気胸、食道破裂)
違いそうだったら、おちついて消化器、筋骨格系、皮膚由来、呼吸器由来、精神・心因性、その他?

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では、本日の目標はもし自分に胸痛が起きたら、この5大疾患の可能性が疑わしいかどうか(とにかく早く、夜中でも)病院に行ったほうが良いかが何となくわかるようになってもらえればと思います。

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最初は心原性、つまり胸痛の原因が心臓由来の病気について考えます。

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心臓の周りには、心臓自体に酸素や栄養を運ぶ血管があり、冠動脈といいます。
その冠動脈が細くなって、心臓自体に十分な血液(酸素や栄養)が行きわたらないと胸痛などの症状が出現します。
このような病気を虚血心疾患といいます。

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そして、虚血性心疾患は冠動脈の細さの程度で安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞に分けられます。
安定狭心症は心臓の血管がプラークによって狭くなっている状態(プラークとは、コレステロールの塊のようなもので、プラークの表面は薄い膜で覆われており、破れやすくなっています。)そのプラーク表面の膜が破れると、その破損箇所を修復しようと血栓ができて、そのせいで血管の内腔がより狭くなってしまいます。この状態を不安定狭心症といいます。そして、さらに、血栓が大きく成長すると血管の内腔を完全に閉塞させてしまいます。この状態を心筋梗塞といいます。

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では、ここで問題です。
A~Dは、痛い範囲、場所を表しています。
この中で、心臓が原因ではない可能性が高いものがひとつあります。
どれでしょうか?

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正解はDです。

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では詳しく見ていきます。
この4つに注目します。

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発症様式ですが
①突然発症(痛みが出現して瞬間でピークに達する)②急性発症(痛みが出現してから数分でピークに達する)③亜急性~慢性発症
安定狭心症の典型パターンは、運動時に胸が痛くなり2、3分で痛みがピークに達します。
一方、心筋梗塞、不安定狭心症は突然発症(痛みのピークは突然くる)します。
胸が痛くなったときに何をしていたかが答えられれば突然発症です。
例えば、“テレビを見ていた時”だけではなく、“テレビのどのシーンの時”まで答えられれば突然発症です。
→突然発症は危険なサイン!

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虚血性心疾患に特徴的な痛みの性状は
・前胸部、こぶし~手のひらの範囲
・圧迫感(重い本が胸に乗っかている感じ)、胸部絞扼感(胸部が締め付けられる感じ)、のどの締め付け感、
・放散痛として首から肩、両腕、歯の痛み
・冷や汗を伴う

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虚血性心疾患に特徴的な、症状出現のタイミング、持続時間

・運動労作に一致して出現し、労作を停止すると軽減する。
・朝方や午前中に多い。
・症状は概ね20分以内に改善する
→安定狭心症

・安定狭心症であったものが、より軽労作で症状が出現するようになったり、その強さ・持続時間が増大
・安静時にも症状出現
・長くても30分以内に自然軽快する
→不安定狭心症

・上記症状が30分以上継続
→心筋梗塞

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そして、どういう人が胸痛をおこしているか。その人の背景にも注目します。
年齢と性別ですが
このグラフは、横軸が年齢、縦軸が人口10万人あたりの心筋梗塞発生者数です。
わかることは、年齢が上がると発生者数が増えますが、逆に男性では30歳未満、女性では40歳未満ではほぼ発生しないといえます。

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それから、その人がどのような病気をもっているか確認します。
虚血性心疾患は、高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿病、喫煙歴があるとなりやすいです。
それらの病気を持っていると、どれくらいなりやすいかというと、1つも持っていない人と比べ
1つ→5.09倍
2つ→9.70倍
3~4つ→31.34倍                            (グラフは虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)を参照)

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ここまでをまとめると、
<虚血性心疾患が非常に疑わしいパターン>
・中高年の男性
・糖尿病、高血圧などの生活習慣病の既往あり
・喫煙歴あり
・朝の通勤時に、ホームの階段を上る際に前胸部の圧迫感、肩への放散痛もあり
・階段を登り切り、休むと症状は改善

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続いて、非心原性を見ていきましょう!

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共通点として、いずれも突然発症します。
やはり突然発症は、かなり危険なサインなのです。

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大動脈解離の特徴として、
・痛みの性状として、胸部~背部痛、そして痛みの場所が背部の上部から下部に移動するようだとかなり疑わしいです。
・激烈な痛み
・脈の強さ(血圧)の左右差
・既往歴として高血圧

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肺塞栓症の特徴として
・呼吸困難を伴う
・労作にて、呼吸困難が増悪
・頻脈を伴う
・ピルの内服、長期病床生活、肥満、がんの既往

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緊張性気胸の特徴として
・若いやせ型
・呼吸困難を伴う
・吸気時に痛み増強

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食道破裂の特徴として
・嘔吐後の胸痛

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今回は胸痛の原因の一つである、虚血性心疾患について主に解説しました。
・症状の発症様式
・症状の性状
・症状出現のタイミング、持続時間
・年齢、性別、既往歴
に注目していただければと思います。

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