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第10回Zoomで健康 講演スライド   (大切な人を守る心肺蘇生術)

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まずは日本人の平均寿命と健康寿命についてみてみましょう。

男性の平均寿命が81.41歳、女性が87.45歳と平均寿命が年々のびて、最近は人生100年時代とも言われています。
そして、2000年にWHO(世界保健機関)が健康寿命という概念を提唱しました。
健康寿命というのは、生まれてから要介護の手前(フレイル)までの期間をいいますが、男性は72.14歳、女性は74.79歳であり寿命とのギャップが10~13歳もあります。
つまり、日本人は死ぬ前の10~13年間は要介護状態ということになります。
そこで、世界的にも平均寿命をいかに延ばすということだけでなく、健康に生活できる期間、つまり健康寿命をいかに延ばすかということに関心が高まっています。

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ちなみに、静岡県の男性の平均寿命は80歳、健康寿命は71.68歳で全国6位 
女性の平均寿命は86.2歳、健康寿命75.32歳で全国13位です。

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寿命/健康寿命をのばす方法は色々あると思いますが、一つの方法として防げる病気をしっかり防ぐということです。

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防げる病気とは?
例えば癌です。
残念ながら、予防できたはずの癌でなくなってしまう人が多いのが現状です。
癌の25%程度は、細菌やウイルス感染が原因と言われています。
例えば、胃癌の原因の多くはピロリ菌感染症です。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス感染症ですし、肝細胞癌はC型B型肝炎ウイルスです。
これらの菌を除菌したり、予防接種を打つことでこれらの癌をかなり予防できることが分かっています。
大腸癌は、女性の癌の死因第1位となっています。しかし、実は早期発見できれば90%以上の人が助かります。
原因はポリープで、このポリープは検便検査でわかることが多いので、40歳以上の人は毎年検便検査を行うことで大腸がんを早期発見できる可能性があります。
他にも、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、コロナワクチン、歯周病予防などなど防げる病気を防ぐための、科学的に証明されている方法がまだまだたくさんあります。

そして、今回のテーマは突然死です。
実は突然死も予防できるのです!

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突然死とは。
健康そうに見えた人が予期せず突然帰らぬ人になる事であり、医学的には「症状が出現してから24時間以内の予期しない死亡」と定義されています。

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なぜ人は突然死するのか?
突然死の大半(72%)が心臓が原因と言われています。これを心臓突然死といいます。
さらに、心臓の中でもその原因の多くは「心室細動」と呼ばれる重篤な不整脈です。心室細動とは心臓がプルプル無秩序に震えている状態、つまり心停止の状態です。心停止を起こすと心臓のポンプが機能しなくなり全身に血液を送り出せなくなります。人は心室細動(心停止)から数秒で意識を失い、数分で脳をはじめとした全身の細胞が死んでしまいます

ということで、今から、突然死の多くを占める心臓突然死とそれを防ぐ方法について皆さんと考えてみようと思います。

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まず心臓突然死の現状です。
日本では毎日多くの人が心臓突然死で命を失っています。その数は、なんと1年間で約7万人。一日に約200人、7.5分に1人が心臓突然死で亡くなっています。
しかも、心臓突然死を来たしてしまった人の中で、もともと心臓が悪いといわれている人はたったの30%で、70%の人は心臓が悪いといわれたことがない人達です。

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心臓が悪いと分かっている人達には、心停止が起こらないように、体温の急激な変化を来す冬季の入浴や、スポーツを楽しむ前にはしっかりとした準備運動や水分補給をしましょうといった注意喚起ができます。
しかし、実際に心停止する人たちの70%は、見た目健康であり心停止を予防することは非常に難しいです。
心停止予防は難しいですが、もし最悪心停止してしまっても心停止からの心臓突然死を防ぐ方法があります。
それが心肺蘇生です。

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現在、日本で医師ではない一般の市民が、突然の心停止を目撃した場合、救命のために出来ることが3つあります。
①119番通報
②胸骨圧迫(心臓マッサージ)
③AEDによる電気ショック

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最近の調査では、①の119番通報をして救急隊の到着を待ってから救命行動をおこなったのでは、心停止患者の約9.2%しか救命できないことが分かっています。
救急隊が来る前に②の胸骨圧迫ができれば16.1%と救命率は約2倍に上がります。
さらに、③のAEDを使って電気shockを行った場合の救命率は54.0%と、心停止の半数上の人を救うことができます。

つまり、医師でない人が心停止現場で①~③を行えば、救急隊が到着してから心肺蘇生・電気shockを施す場合より6倍近く助かる確率があがります。
医師でない人ができて、救命率が6倍近くに上げられる医療行為は他にありません。
心臓突然死は、個人の知識と行動次第で劇的に防げるものなのです。

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③のAED使用にあたって、最も重要なポイントは‘’とにかくできるだけ早く‘’です。
グラフは心停止となってから電気ショックまでの時間と救命率を示したものです。AEDによる電気 shockが1分遅れるごとに救命率は10%ずつ低下します。119番通報をしてから救急車が到着するまでの平均時間は9分程度ですから、先ほどのグラフにもあるように救急隊や医師を待っていては命を救うことはできません。
突然の心停止を救うことができるのは、その場に居合わせた「みなさん」しかいないのです。

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ところで皆さんは、自宅から一番近いAEDがある場所を知っていますか?
心停止してから遅くても5分以内にAEDによる電気shockをしたいので、少なくとも自宅からもっとも近いAED設置場所は確認しておくべきです。
理想は片道150M以内です。
全国AEDマップと検索すると、このように簡単にどこにAEDが設置されているのか確認できます。日本は世界で最もAEDが設置されている国の1つですので、調べてみると割と多くのAEDが設置されているという印象を受けるかもしれませんが、片道150mという理想を言えばまだまだ足りていないのが現状です。

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ところで、現在の日本の現状はどうでしょうか?
このように、現状は倒れる瞬間を目撃された心停止の中でも、約半数は心臓マッサージを受けておらず、更に、AEDによる電気ショックが行われたのはたったの4.5%です。

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ニュースにも取り上げられた事例もあります。
2011年  さいたま市の小学6年生
マラソンの練習中に突然心停止→心臓マッサージ、AEDを使用されることなく死亡
2017年 新潟県の高校2年生 野球部マネージャー
練習中に突然心停止→ 心臓マッサージ、AEDを使用されることなく死亡

心停止は大人だけでなく、元気な子供にも起こり得るのです。
学校にはもちろんAEDが設置されていました。
なぜ、AEDによる電気shock施行率が4.5%と低く、この二人にはAEDによる電気shockがなされなかったのでしょうか?

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倒れた直後に駆けつけた学校の先生は、「呼吸は弱いけどある」と判断し、心臓マッサージやAED(自動体外式除細動器)は使わなかったと報道されています。
この「呼吸は弱いけどある」は、おそらく死戦期呼吸と思われます。
心停止直後の人には死戦期呼吸と呼ばれるゆっくりとあえぐような呼吸が見られることがありますが、実はこれは呼吸ではありません。
むしろ心停止の兆候です。

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このようにAEDが近くにあっても使用に踏み切れない例がまだまだ多くあるのが日本の現状です。
正確に言うと、呼びかけに反応がなくて、規則正しい呼吸をしていなくて、脈が触れなかったらすぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めてください。なのですが、
しかし、死戦時呼吸かどうかは正直分からないし、自信がないと思います。
さらに。脈に関しても明らかに触れればよいですが、よくわからなかったら触れないと判断してください
なので、呼びかけに反応がなくて、明らかに脈が触れなくて、はっきりとした呼吸をしていなければ、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めてください。

心停止状態の人を放っておいたら100%死亡してしまいます。
何も行動を起こさないのは最悪の選択肢なのです。

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全体の流れです。

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最後にまとめです。
①119番通報
②呼びかけに反応がなければ(呼吸のことはよくわからなくても)、迅速に胸骨圧迫(心臓マッサージ) 
③1分でも早くAEDによる電気ショック

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