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エネルギーまちづくり塾を受講してみた!⑨

今週は公共建築の改修編でした。
今回は事例をもとにした講義だったので、それぞれまとめてみたいなと思います。

1 仙台市の事例=行政主導

新築編でもちらっと触れましたが、仙台市では公共施設の低炭素化を目指して、せんだいエネルギーまちづくりと銘打って、公共施設の断熱性能向上に向けた実証実験を行ってます。

幸町南小学校という学校の教室と職員室において、改修、新築、提案の3つの仕様を想定し、シュミレーション、施工、実測・分析、低炭素化の普及啓発という内容を行っています。教室については、仙台市内に約200校ある小、中学校、高校を想定し、職員室については教室より滞在時間が長いため、事務所系の用途の公共施設を想定して実証実験を行なっています。公共施設の断熱化においては、財政、環境、建築、教育など、さまざまな部署が絡み合うためなかなか進まないという話をよく聞きます。仙台市の場合、断熱性能向上が今後の市の財政負担の削減に大きく効くというところを財政部門が理解してくれたのが大きく、さらに環境部門、教育部門を巻き込みながら、営繕部門(建築部門)が主導で進めています。今後は検証をもとに、公共施設の設計における断熱性能の基準の確立に向けて検討を進めていく予定です。

2 白馬高校の事例=高校生主導

高校生自ら断熱DIYリノベーションを企画し、実現した事例です。エネまち社さんの協力のもと3日間かけて、扱う道具の説明から安全面のレクチャー、エネルギーに関するレクチャーなども挟みながら、実際に天井に断熱材を入れたり、壁の断熱を施工したり、窓のサッシを二重化したりととても充実した内容だったそうです。こちらの事例が実現したポイントとしては、長野県が気候非常事態宣言をしており、県を上げてバックアップしてくれたとのこと。長野県はゼロカーボン戦略という計画を策定しており、脱炭素において国より厳しい目標を立てて進めています。

さらには、教育委員会の理解が大きかったことや、学校も実験的な校風があり新しいことに積極的であったりしたこともプラスに働いたそう。さらにすごいのは材料費などの資金調達の一部をクラファンで実施したとのこと。今後これらの効果を体感、測定していくとともに、長野県内の他の学校などへの横展開なども考えているそう。素晴らしい行動力です。見習わなければ!

3 ムントリックス村庁舎(オーストリア)の事例=地域主導

こちらの事例は地域全体でエネルギーに対して行動をしているという事例でした。2050年までに全分野でのエネルギー自立を目指していたり、エネルギー政策研究所が政策のブレインになっていたり、2007年の時点で2050年に向けたまちのビジョンを掲げていたりと、かなり計画的に動いていて先進的な印象でした。そして、2014年に石造の庁舎を改修し、年間消費エネルギーを75%も削減したとのこと。太陽光などもこの庁舎で完結しているわけではなく、付近にある多目的催事場や中学校に載せた太陽光から供給しているそうです。徹底しているのはほぼ全ての仕事を30km圏内に発注したとのこと。移動によるCO2排出を削減するとともに、地域経済の循環にもなりますよね。さらには、近距離供給の充実が目標ということで歩いていける距離で日常の用が足せるインフラを充実させるために、まちのメインストリート沿いに様々な公共施設を集積させたり、庁舎自体にも観光機能や郵便機能などを持たせ多機能化したりしているそうです。建物単体ではなく地域全体として考える視野が必要ということだなと理解しました。

4 公共施設のエネルギー性能を向上させることの効果

一般社団法人地域政策デザインオフィスの田中信一郎さんがわかりやすくまとめているとのことで、以下の6つの効果が取り上げられました。①利用する人々の知的生産性・学習効率の向上(機能的価値)、②公共施設の長寿命化(資産性向上→財政支出抑制)、③設備更新費用の抑制(資産性向上→財政支出抑制)、④地域の建築事業者の技術力向上(地域を先導)、⑤地域住民への高断熱・高気密建物のショーケース、⑥光熱費の削減(資産性向上→財政支出抑制)。

これらをしっかりと伝えていくことで、行政は公共施設の脱炭素化を進めていかなければなりません。

5 面白かったこと

仙台市の事例で、断熱改修による冬季の暖房負荷は大幅な削減ができたものの、夏季の冷房負荷が若干上がったということです。この原因が、児童の内部発熱(人体から出る熱)の影響が非常に大きいということです。人って一人で約100Wの発熱をするそうです。教室って約60㎡の広さの中に30人前後の児童がいるわけです。マンションの住戸だと7〜80㎡に4人で住むみたいなのが普通ですよね。学校って人口密度が半端ないわけです。内部発熱による温度上昇を処理しきれないまま熱交換換気をすると、冷房負荷が若干上がってしまったというわけです。建築物の用途によっては、この内部発熱の影響が無視できないということがあるようです。
また、断熱性能向上によってエアコンがガンガン噴き出さなくなるわけなので温度ムラが少なくなったり、換気性能向上によってCO2濃度が下がり空気環境が改善したりします。このようなことから、児童の集中力が上がったり、眠くならなくなったりという副次的な効果もあったようです。
さらに、学校で断熱化をすることの意義として、省エネルギー意識向上の波及効果があるとのこと。体感した子供たちは家に戻って家族に話をするし、生徒が入れ替わることで多くの人が関わります。これから住まいを選択していく世代が省エネルギーな建築物を体感するということは建築物の脱炭素に向けて非常に重要な価値があるということです。

さて、第3クールが終わりました。
来週からはゼロエネルギー地域の作り方ということで第4クールになります。
興味ある方は今からでもぜひ。

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