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北アイルランドの定番観光スポットをセルフツアーで 【Play back Shamrock #13】

※ご注意※ 本連載は2020年に経験した出来事を1年後に振り返る趣旨で公開しており、掲載の情報等は2020年当時のものです。また、第10回以降は当初の公開予定よりも大幅に遅れて公開に至りました。

(見出し画像:Giant’s Causewayの柱状節理)

 この週末は北アイルランドの主要な観光スポット2ヶ所を、自ら移動手段を手配して訪れてまわった。「自ら移動手段を手配して」とわざわざ表現したのは、ダブリンやベルファスト発のツアーがいくつも実施されており、そうしたものに参加してしまう方が楽なのにあえて、という意味だ。公共交通機関を乗り継いで現地を目指す中で何か面白いものが見えてくるのではないかという好奇心が優った。
 今回は北アイルランドの中心都市ベルファストにある博物館Titanic Belfastと、先週訪れたデリーまでの間のエリアに位置している沿岸の世界遺産Giant’s Causewayを訪れる。
 さて、2週連続で北アイルランドを訪れることになったのにはこのタイミング特有の理由があった。本来であれば、この週末はイタリア・ローマを日帰りで訪れる予定で、航空券も手配が済んでいた。しかしながらこの頃になると新型コロナウイルスがイタリアで猛威をふるい始め、直前まで状況をモニタリングしローマ行きは急遽キャンセルに。アイルランド島内で訪れたいと思っていた上位のスポットに行くことに変更となったのだ。ここから先、新型コロナ対応は常に頭を悩ませる問題としてつきまとうことになる。

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写真:ベルファスト行きバスの行き先表示。バスで国境を越えることに対してそろそろ特段の抵抗を感じなくなってくる頃だ

 朝の6時台にホストファミリー宅を出て、ダブリンをバスで7:30に出発した。実は前の週末も全く同時刻のバスを利用していたのだが、利用者は大きく減少しているように見受けられた(コロナと関連があるのかは判然としないが、この頃ヨーロッパでは一気に緊張感が高まっていたのは事実だ)。そしてベルファストに10時頃には到着した。Brexit当日にも利用した特殊なバスGliderに乗り、Titanic Belfastを目指す。

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写真:Titanic Belfastの外観

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写真:建物内からは現在のベルファストの造船所が見渡せる

 Titanic Belfastはかの有名な豪華客船タイタニックにまつわる博物館である。タイタニックはベルファストの造船所で造られたことから、現地ではゆかりの地として知られている。この博物館の展示内容は、造船業の街としてのベルファストの紹介も含め、タイタニックの建造から出航、沈没、そして事故後の調査に関することまでタイタニックの言わば「一生」全てについてだ。犠牲者の数や内訳など沈没事故に関するものはもちろんのこと、船に積み込まれていたシーツやテーブルナプキンの枚数に至るまで紹介されており、単に悲劇を悲劇として紹介することにとどまらないところが興味深い。
 今回は時間の制約もあり満足できるだけの滞在時間を確保することはできなかったが、より一層タイタニックに親しみを持つことができたように思う。
 そしてTitanic Belfastに1時間半ほど滞在し、続いては列車とバスを乗り継いで2時間半ほどかけてGiant’s Causewayに向かう。なお、Titanic Belfastからベルファスト中心部に向かうGliderにはちょうど良いタイミングのものがなく、2kmほどを駆け足で、ベルファストのターミナル駅であるGreat Victoria Street駅に向かった(直線距離では他の駅が近いのだが、道のりでは大差ないと判断し中心部に戻ることにした)。
 Giant’s Causewayは柱状節理が見どころの世界遺産で、アイルランド島内屈指の観光名所である。しかし有名なスポットだとは言え、そこまでの道のりが必ずしも便利だとは限らない。実際、私が今回利用した列車とバスの組み合わせでのルートで観光客らしき乗客はほとんど見受けられなかった。レンタカーなどを利用するか、ツアーで訪れる人が多いということなのかもしれない。ということもあり、現地に到着するまで「本当にたどり着けるのだろうか」という不安がなかったわけではない(今となってはこの不安感こそ旅の醍醐味だとも感じるのだが)。

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写真:Giant’s Causewayの最寄りのバス停

 ベルファストからは列車で1時間半、Coleraine(コールレーン)駅で路線バスに乗り換えて現地へと向かう。列車がそもそも1時間間隔なこともあってか、バスも1時間間隔の運行で、実際かなり心細い旅になった。当日は小雨に強風というコンディションもさらに加わり、水溜りに勢いよくバスが突っ込んで思い切り水しぶきをあげて走るなど、いろんな意味で荒々しさを感じる旅路でもあった。
 そしてColeraine駅から40分ほどバスに揺られ、最寄りのバス停に到着した。ここまでの説明から窺えるかもしれないが、周囲が栄えているということではなかった。バス停の名前もGiants Causeway ”The Nook(=へんぴな土地)”という感じの場所だったのだ。本当に美しい自然を堪能するには絶好の場所と捉えることもできるのだろう。世界遺産だからと言ってキラキライメージを持ってここにくると、「そんなはずではなかった」と思う人もいるかもしれない。

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写真:遊歩道から海岸を眺める。白波が立っていた

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写真:大自然の中を歩く

 ビジターセンターやバス停などがあるところから柱状節理が見られるスポットまでは1km近くを歩く必要がある(バスもあるようだがこの日は運行していないようだった)。眺めは素晴らしいのだが、先に述べたようにこの日のコンディションは決して良いとは言えず、小雨が降る中、なおかつ強風が吹き荒れており、歩くのも実は大変だった。

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写真:見事な柱状節理だ

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写真:岩場を見渡すとこのような感じ。ひな壇のような形状になっており、多くの観光客が岩の上に登っていた

 しかし苦労しながらも見どころまで到着し、自然の造形美を堪能することができた。人の手によらず、ここまで整った形状が出来上がるのはまさしく神秘的だと感じた。
 この日は強風が吹き荒れていたことから波が激しくしぶきをあげており、強い風に流されてそれが泡のように度々降りかかってくるなど、撮影条件としてはかなり厳しいものがあったが、しっかりカメラに納めることができた。美しい景色を見たことは確かに記憶に残るとは思うものの、強い風が吹いて大変だったということの方が鮮明な記憶として残るかもしれないと思うほどだった。ぜひ穏やかな時にも改めて訪れてみて、周辺をもう少し歩いて見て回ってみたい。

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写真:ベルファストのGreat Victoria Street駅の駅名標 ※別日に撮影

 というような感じで、バスの時間も迫っておりGiant’s Causeway見学は一応無事に終了した。ダブリンまで路線バス→鉄道→高速バスを乗り継ぎ、およそ5時間をかけて帰り着いた。移動時間がかなりの割合を占めることになってしまいはしたものの、ローカルの交通機関を乗り継ぐことに楽しみを見出して、自ら秘境に探検に行くことが好きな方であれば、決して苦にはならないだろう。むしろ刺激的でさえあった。一連の日程の中で最も刺激的だったエピソードの1つかもしれない。
 さて次の週末は自身のヨーロッパ大陸初進出、今回のヨーロッパ滞在の中では結果的に唯一のアイルランド・イギリス以外の国への訪問となったオランダへの旅だ。しかしこのPlay Back Shamrockの投稿としては1つ別なトピックを挟む。私が通っていたUCD(University College Dublin)内での学生によるデモ活動に遭遇することになったので、次回投稿ではその模様について触れたいと思う。

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