人生で唯一本気で愛した女性

以前Xで少し書いたのだが、僕には人生で唯一本気で愛した女性がいる。普段一人称は“僕”を使っているが、僕自身はれっきとした女性である。つまり、本気で愛した相手というのは同性だ。

彼女との出会いは、高校に入学した時だった。同じクラスに僕の席から一つとばした左隣に彼女の席があった。実は、彼女の父は僕の中学校の教師で教科担任として三年間お世話になっていた。先生からは僕と同い年の娘がいると聞いたことがあったが、まさか同じクラスにいるとは思わなかった。顔をちらっと見てみると、先生とそっくりだったので間違いないと思った。
そんな彼女と話すきっかけとなったのはお昼休み。何となく近くの人同士で机をくっつけて周りが昼食を取り始めていたのだが、ちょうど僕と彼女だけが余っていた。僕はずっと話しかけたいと思っていたのだが、当時の彼女には話しかける勇気が出なくなるくらいのオーラが出ていたのでこれはチャンスだと思った。そして二人で食事を始めて他愛もない会話をしていた時、たまたまお互いにアニメが好きという共通の趣味が見つかり、好きな声優さんの話などで盛り上がった。ずっと暗い雰囲気だった彼女とはうって変わってかなり生き生きとしていたので、この子とは仲良くなれそうだなと凄く安心した。
ある日、彼女の席までいって話をしていると、ちらっとスマホの画面が見えた。すると、目の前に飛び込んできたのは僕が当時ハマって遊んでいたゲームのアイコンだった。ゲームの詳細については僕たちのプライバシーに関わるので伏せさせていただくが、学生ではきっと遊んでいる人が少ないのではないかと思う。そんなものが見えたのであまりの衝撃にすぐさま反応し、彼女も非常に驚いていたのを覚えている。僕たちはこのゲームがきっかけで一気に距離が縮まり、常に一緒に行動するようになった。僕はこの時、運命の出会いだと思った。この先ずっと大人になっても付き合いが続くだろうと本気で思った。

そんな僕たちに少し変化が訪れたのは、確か高三の時だっただろうか。学校祭が近づいてきた時期だと思う。僕はこの頃、彼女と一緒にいる時に何か別の感情があることに気づいた。何となく緊張していたり、ドキドキしていたり…まさか、恋なのではないか…?そう思った瞬間、急に彼女に対して意識し始めた。僕は元々、恋愛対象は異性だったので同性には全くそういった感情は抱いたことがなかった。僕にとって、同性へ恋愛感情を抱いたのはこれが初めてだった。僕は友人が多い方ではなかったが、仲の良い友人が一人いればそれで十分だったので、ほとんど彼女とばかり一緒にいた。そして一人そういう特別な友人が出来ると、その相手が他の人と楽しそうに話しているのを見て嫉妬したりモヤモヤするようになるという面倒臭い人間だ。僕とだけ仲良くしてればいいのに…心の中ではそう思っていた。
僕はある時、彼女に僕の気持ちを伝えてみた。君のことが好きかもしれない、と。彼女はもちろん困惑していたが、僕の気持ち自体は受け入れてくれた。そのあとは僕が自分の気持ちを自覚してしまったせいで彼女にたくさん迷惑をかけてしまったが、それでも三年間ずっと僕と一緒にいてくれた。

高校を卒業してからも彼女とは頻繁にやり取りをしていた。二十歳の時に一度異性の方とお付き合いをしていたのだが、次の年にお別れをしてしばらく引きずっていた時期もあった。
ある時、ふと彼女から「なぜ好きな人と結婚したいと思うのか」という哲学みたいな質問をされたので色々なことに考えを巡らせて話していたのだが、その間にある一説に辿り着いた。

“僕にはずっと前から心に決めた相手がいて、でもその相手と結ばれることはないから他の人で妥協している説”

字面だけでは少し嫌悪感があるかもしれない。でも僕はこの説に辿り着いた時、妙に納得したのを覚えている。異性との恋愛が上手くいかないのも、全てはこれが原因ではないかと。そしてその心に決めた相手というのがまさに彼女のことではないかと。僕は彼女に対する感情を自分の持っている全ての理性を使って完全に抑え込んでいる。少しでも感情を漏らすと、芋づる式にどんどん溢れてきてしまう。以前彼女に「もしかして今口説かれてる?」と言われてしまったくらいにはつらつらと出てくる。僕は無意識だったが。
もうはっきりと明言してしまおう。僕は今でもずっと、彼女を愛している。もし同性で結婚をすることが出来るようになったら、僕は迷わず彼女にプロポーズする。僕にとって、彼女は唯一無二だ。ずっと話していても飽きないし、趣味も合うし、彼女とならどこにでも行きたいし絶対楽しいって確信がある。何か初めてのことをする時、初めての場所に行く時、家族でもなく恋人でもなく、一番に彼女と経験したい。僕の人生に彼女は絶対に必要だし、もし失ってしまったら僕は一体どうなってしまうかわからない。彼女さえいれば僕は幸せだ。昔は結婚願望もあったし、子供だって欲しい。今も結婚願望がない訳では無いけど、結婚したいと思える人に出会えていない。僕自身まだ若いし、この結論を出すのはまだ早いかもしれない。でも、彼女と同じくらい素敵な人が現れない限りは、交際も結婚も考えることは出来ないだろうなと思った。
そしていつか、彼女が僕に歩み寄ってくれるかもしれない未来を願っている。
僕が彼女に恋をしたのは、今までの人生で出会った人達の中で、一番の僕の理解者であり、誰よりもお互いのことを知っているから。そしてたまたまその相手が同性だったというだけ。自然な流れで僕は彼女を好きになった。これからも僕は、彼女を大切にしていきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?