思い出したこと

 小学校が舞台の小説を読んでたら唐突に思い出したこと。意味はないけど忘れないうちに書き留める。

 楽器の会社がある私たちの市。今は音楽の街ってキャッチコピーがあるんだけどあんまり宣伝はうまくなくて、音楽よりうなぎパイの方が有名だ。
 ただマンモス校なんて呼ばれていた中学校の頃を思い返せば、音楽室にはメーカーから寄付された楽器類が揃っていたし、吹奏楽の部活の時間にはたまにYAMAHAから講師が来てくれたのだから恵まれてた方だと思う。催される大会も町の規模にしては多かった気もする。

 小学校時代、私は器楽部だった。小学校で使っていた楽器は吹奏楽とは違い、リコーダーや鍵盤ハーモニカがメイン。顧問の先生の説明によると、大人の楽器は小学生には早すぎるから。確かに小学生のトランペット、力無さそうだしね。チューバなんかはそもそも持てないし。
 思い出したのは器楽部で出たコンクールに負けたこと。
 大会の帰り、部員みんなで寸評した審査員の文句を言っていたら、優しかった先生にすごく怒られたこと。それを理不尽に感じたこと。
 今考えれば先生が怒った理由はとてもわかる。折角練習して一生懸命戦ったのに、私たちの態度は格好悪い。
 でもやっぱり、今考えてもあのときの審査員は憎い。あの一言。
 まあ正確には覚えてないんだけど。大まかにはこんな感じの台詞。
「曲に合わせた楽器で演奏して下さい」
 演奏自体は褒められたような気がする。楽器が安っぽいと言われたのだ。審査員の言葉の真意は違うのかもしれない。でも私たちには聞こえた。『この曲にそんなチャチな楽器を使うな』
 そういう風に見下されたと感じた。

 私は音楽が好きな子供だったかというとそうでもなくて、小学校では四年生になると部活に入るのが決まり。決まりだから入った。それでも器楽部に決めた理由ははっきりと覚えている。
 新四年生が部活を選ぶ為の、部活紹介の舞台、そこで演奏された「剣の舞」
 凄かったのだ。あれに圧倒されて、あの曲に憧れて入部した。
 剣の舞っていうのはテンポの速い曲なんだけど、それを先輩方は鍵盤ハーモニカでやった。なにが凄いって、とにかく速かった。それに揃ってた。一糸乱れずの、迫力。正に剣の舞。
 あれで入部を決めたのは多分私だけじゃない。だからこその怒りだったんだよね。チャチい楽器だからこそ、良いんじゃん。皆自分達の楽器が好きだったんだよ。と思い出したら嫌な思い出な割に懐かしい。
 とにかく鍵盤ハーモニカの剣の舞はすごいんだから。

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