【読む映画】『未来を花束にして』

女性参政権要求が 公安事件だった時代

 20世紀初めの英国。ショウウィンドウへの投石、電話線の切断や郵便ポストの破壊、大臣の別荘爆破など、破壊工作をくり返す女たちがいた。実在の女性参政権運動家エメリン・パンクハーストと、彼女が率いる「女性社会政治同盟」のメンバーである。

 彼女たちの闘いを劇映画として描いたのが本作だ。原題はサフラジェット(Suffragette)。英紙による造語で、女性参政権運動家のなかでも戦闘的手段をとるパンクハーストたちへの蔑称だった。英国女性参政権実現(制限選挙)から、2018年で100年。

 同時代の日本でも、女性参政権を阻む治安警察法の規制撤廃運動があったが、サフラジェットがいかに治安当局の監視・弾圧対象であったかにおののく。警棒や殴打の雨を容赦なく降らせ、獄中でハンガーストライキをすれば、鼻や口にチューブをねじ入れ流動食を流しこむ強制給餌(きゅうじ)。英国からの独立闘争を描くインド映画でさんざん目にした拷問で、国家反逆罪並みの扱いである。

 しかし、何回投獄されても彼女たちは屈しない。さらには国王への直訴を計画する。その顛末の衝撃。自分が手にしている参政権に、背筋が伸びる思いだ。

 他方、日本でいまだ実現されていない参政権を考えずにはいられない。在日外国人のそれである。30年近くの実体験をこめていうが、たとえばかれらに直接影響を及ぼす入管法が改悪されるとき、それをうったえるにも、無権利者の主張はまず無視される。

 パンクハーストは言う。何十年も平和的に運動してきたのに、黙殺され侮辱され暴行されただけだから、戦闘的手段をとるのだと。演じるのは、トランプ大統領の排外姿勢を痛烈に批判して、世界中から拍手喝采されたメリル・ストリープだ。

監督:サラ・ガヴロン
出演:キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、ブレンダン・グリーソン、メリル・ストリープ
2015年/英国/106分

初出:『週刊金曜日』2017年1月20日号(1120号)。


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