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自宅で死にたい

友人のお連れ合いがステージ4の診断を受けて数ヶ月になる。
最後の最後までできる限りの治療を続けたいというのが友人夫婦の希望
なのだけれど、先日ホスピスの入室を打診されたのだそう。

納得がいかない。
友人はそういった。医者は私達を見捨てるのか、と。
気持ちはわかる。
坂を転げるように病状が悪化していくお連れ合いを見るのは
どんなにつらいことか。
よく頑張っている。
何もできずに、折れないでねと祈るばかり。

ホスピスの話が出てきたところで、
お連れ合いが、それなら家に帰りたい、と言い出したそうだ。
彼女には持病がある。
お連れ合いの言葉を聞いたとき、
いや、彼の緩和ケアを自宅でやって、自分のケアもは大変だよね。
正直そう思った。

彼女も、自分一人の時に彼が急変したら……とかなり不安そう。
でも、家にいれば気持ちは穏やかだ、と彼は言うのだそうだ。
まぁ……ね。

声をかけあぐねていたら、別の友人から喪中はがきが届いた。
お父様を送られたと言う。
自宅で送ることはできなかったので、せめてもと、自宅で
葬儀を終えました。
とあった。

なぜ、そんなに自宅で看取ることに人はこだわるんだろう?
これは、日本だけ?
ちなみに、日本財団の調査だと、自宅で死にたい男性は68.4%
女性は50.7%。女性の4割は医療施設で死を迎えたいと考えているけれど、
男性は25.6%。

でもって、自宅で死にたいと検索すると「幸せな」とか「暖かな」とか
自宅で死ぬのがいいですよ〜というオーラがただよう。
病院での、冷たい死、かわいそうね、というところか。
英語で検索すると、ケースバイケース、必ずしも自宅がよいとは限らないといったドライとも言える回答が並ぶのだけれど。

こうした環境にいると、自宅で死にたい人を受け入れないのが悪いこと
みたいな罪悪感が生まれてくる。
一昔、保育園に子どもを預けているというと、開口一番かわいそうね!と
言われたのに似ているような気がしてしまう。
介護の状況は人それぞれ。

いろいろいろいろ考えたあげく、
あなた自身が後悔しない方法が一番じゃないかしら、と
言ってみた。
無理して引き受けて、やっぱりプロにお願いすればよかったと思うことになりそうなら、
プロにお願いした方がいいのでは?
一番大事なのは、彼を支えるあなただから。
あなたが倒れちゃったら、共倒れでしょう?

何が正解かなんて、結局はわからない
人生、やり直しは効かないのだから。
でも、少なくとも、彼女が、介護者が心穏やかに彼を
送りだせる状況になければ、始まらない、と思う。


得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)