マガジン一覧

よければ読んでってください。

こんにちは、サトウサコです。普段はwebで児童文学を書いてます。 児童文学作家な私ですが、最近、一般の長編小説の執筆に励んでおります。 展開が超スローすぎて、全然終わる気がしないので、進捗ついでにプレ1話目をここに上げておこうかなと思います。 本編投稿するのは恐らく違うサイトになっちゃうんですが、プレ1話目(書き直す可能性あり)、楽しんで行ってください。 本文  活動家12人が処刑されてから、早や5カ月が経った。私はというと、特に思想も企みもない学生のため、何もせずに日々

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【短編小説】風俗街のミス・ウィッチ

 妖精王崩御の知らせが世界中に報じられてから、妖精界はふたたび混乱状態に陥った。各地で政治活動が行われ、新たな妖精王選出への動きが盛んになった。不幸中の幸いだったのは、妖精王が設立し管理していた王会議会が主亡き今でも正常に機能していたことだろう。とかく、議会は乱立する王候補者を3人まで絞った。  ひとり目は前王を輩出した煌エクス・ペル共和国のチャーリ・チャリ―大統領。巨人族初の大統領として世界中から注目される彼は、巨人族ならではの大胆さでさまざまな法律を打ち立て、妖精民の救世

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診断メーカーで出されたお題でSS

おひさしぶりです、サトウです。 年末に診断メーカーの「#書き出しと終わり」というものを引いたので、書いてみました。 らしいどす。 ひええ、難しい! わたくしサトウサコ、依頼受けて書くってのがどーも苦手なのに、どーして診断メーカーなんて引いてしまったんだろうと過去の自分を呪いながら書きました。 感想は……否定的なのであればいりません。 可愛い女の子のお話です。 どうぞ! ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓本編↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 『A/

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白い壁にはポストカードを飾る

 こころの穴を塞げる布を探してばかりで方法なんてまったく考えていない馬鹿だ。  あしたはどう?  ごめん、ちょっと忙しいかも  そっか  十九なら大丈夫そう  十九は予定あるって言ったじゃん  ごめん、そうだった  ごめん、言われすぎるから辞書を引いた。なんてことない言葉が書いてあった。  あいつはさ、どうしていっつも、ごめん、ですべてが済むと思ってるんだろ。不思議。地球上の七不思議を全生物の前で発表できる機会があるとしたなら、あいつの「ごめん」を提供しようと思う。世紀の大発

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『うちの男子荘がお世話になります!』⑮(終)

〇EP14『すこしずつ』  翌朝、ゴミ捨て場に向かうと、同じくゴミ捨てをしていた東西くんに会った。 「おはよう」  声を掛けて行こうとすると、 「あ、晴さん」  と引き留められた。 「聞いた? 榛くんのこと」 「榛くん? 」  特に、なにも聞いてないけど。 「何かあったの? 」 「いやね、」  と東西くん。 「どういう風の吹きまわしか、榛くん、今晩、家族とご飯食べるらしいよ」 「急展開。何があったんだろう」  にんまりして、おれは言う。 「知らない」  東西くんは、おれの表

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『うちの男子荘がお世話になります!』⑭

〇EP13『残された写真』  「ワタシの家族は、ワタシと、父と、母、3人家族でした」  お餅ちゃんのお父さんは動物雑誌の編集者、お母さんは動物の写真を撮影する写真家だった。 「こういうのを職場婚って言っていいんでしょうか、まあ、そんな感じの関係でした。実際に、母の撮った写真を雑誌で使うこともありましたし」  アフリカ、サバンナ……様々な国や地域に出掛け、写真を撮影していたらしい。 「凄いね」  おれが言うと、 「はい」  お餅ちゃんは、明るい顔でうなずいた。自慢のお母さんな

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『うちの男子荘がお世話になります!』⑬

〇EP12『夜の訪問者』  午後8時。夕飯を終わらせ、ぼんやりする。隣りの部屋の生活音も聞こえはじめ、無事榛くんが部屋に戻ってきたことに安心していると、部屋をノックされた。チャイムがあるのに。  玄関を開けると、 「すみません、夜分に……」  お餅ちゃんが立っていた。  家にあがってもいいか、とのことだったので、遠慮なく、とレジャーシートを敷く。 「すみません、急に押しかけたりして」  レジャーシートの上に正座するお餅ちゃんは、礼儀正しく礼をした。 「いえいえ」  いつもの

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『うちの男子荘がお世話になります!』⑫

〇EP11『船長の船』  船長の生まれはここのあたりではなく、海の近くの街だったらしい。  船長のお父さんは、漁師だった。海をこよなく愛す父親だったらしく、船長にも海の魅力をよく語って聞かせてくれていたらしい。夏休みの時分なんかは、船長を船に乗せて漁に出ていたりもしていた。  父親の教育もあり、船長もちいさい頃は、海が大好きだった。朝起きれば海に駆けてゆき、学校が終われば海に遊びにいく、そんな少年だったらしい。  それは、船長が中学3年の夏休みのある一日だった。「勉強のし過

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午後7時になっても空は明るい。夏至が近付いている。私は貴方を追いかけながらトートバッグの中のデジカメを探った(もしくは探りながら貴方を追いかけた)。一眼を構える貴方は後ろから見ると、顔からカメラを生やした生き物のようで、ちょっと面白い。貴方の眼。第三のレンズが空中に伸びる。何を写しているんだろう? 何をキャッチしてるんだろう? そう思いながら私も第三の眼を構えて貴方を写し取った。なんだか画面全体が青い。空の青さがビルの窓に、タイルの道に、あなたに反射して、ちがう、うつりこんで

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『有頂天家族』森見 登美彦 著

”面白きことは良きことなり! ” 糺ノ森に住む狸の 下鴨 矢三郎 は、お調子者で少々破天荒。 化けるのを大の得意とする彼の父親は、かつて狸界の頂点に立っていた 下鴨 総一郎 。しかし、その父は、悪名高き 金曜俱楽部 の手によって狸鍋にされ、食べ尽くされてしまった。 現狸界に総一郎の器に敵う狸など居らず、まとまりが取れずにいる。 偉大な総一郎が残した物。それは、 タカラヅカマニアの母と、 堅物の長兄、 蛙に化けたまま狸に戻れなくなった次兄と、 お調子者の三男・矢三郎、 小

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#名刺がわりの絵本10選

こんにちは、または、はじめまして。 サトウ サコと申します。  近ごろは、暖かくなったと思ったら寒くなり、着こんだと思えば、くそ暑くなる、という不思議な気候が続いておりますね。 これが春なのだと言われれば、毎年こうだった気もしなくもないな、と日々を鬱々と過ごしております。 皆様も、お体ご自愛下さいませ。  さて、時候の挨拶はこれまでにして、本題に入りましょう。 今回、嬉々としてこのタイトルでお送りします。 題して、『#名刺がわりの絵本10選』でございます!  普段、わ

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『アーモンド』 ソン・ウォンピョン著

“この物語は、怪物である僕が もう一人の怪物に出会う話” 人間として、他人のみならず自分の気持ちが分からない主人公の僕。 喜怒哀楽を理解できないからこそ、周囲の感情が痛いほど伝わってくる。 感情とは何か?主人公の問いかけ。 感情を持っていてもいなくても、結局は変わらないんじゃないのか? 遠くで起こる不幸は他人事 近くで起こる不幸も他人事 なら、どうして感情があり、どうして共感があるのか。 もう一人の主人公「ゴニ」の登場により、僕の世界は大きく変わってゆく。 登場人物

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『ぼくの火星でくらすユートピア』

どうして繰り返している?何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

『ぼくの火星でくらすユートピア⑴』

《ユートピア》——扉を開けたなら爆発しそうな勢いで空気が入れ替わる。

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『ぼくの火星でくらすユートピア⑵』

《ユートピア》——扉を開けたなら爆発しそうな勢いで空気が入れ替わる。 車から降りたら目の前にはゴミ捨て場があるのは常の事情だ。大小高低関わらずとにかくゴミ捨て場はある。 僕は屑を捨てて車に戻った。 こいつとは長い付き合いになる。レンタルショップにしょぼくれていた最後のひとつだった。僕はね。ミッションの免許は諦めたんですよ。僕のね。教官は酷いもんでしたよ。ええ。そんでね。僕は止めたんです。つまりね。ええっとね。何が言いたいかって言うとね。僕はね。口下手なものだからね。いえ

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『ぼくの火星でくらすユートピア⑶』

給油代はいつでも高くつくぞ。だから今日も古本屋へ向かう訳だ。 コンクリートは整備されるから人が群がるのか群がるから整備されるのか。とにかくコンクリートのある場所には人が群がる。 ほ。ほ。蛍こい。あっちの混凝土は苦いぞ。こっちの混凝土は甘いぞ。とか言った具合に僕はこの土地にやってきた。妄想の中ぐらいもっとマシな色にしてくれれば良かったのに僕のコンクリートは桃色をしている。またピンク色とも言う。 僕が奇抜な世界の色にうんざりしている最中に相棒は4回もエンストを繰り返した。今

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『ぼくの火星でくらすユートピア⑷』

《ユートピア》——もしもそれが本当のことであったなら。

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