酒瓶

社会人。20代。

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社会人。20代。

最近の記事

20230925

2024年問題とは 2024年4月から施行される、運送ドライバーの960時間の残業時間制限により、深刻な労働力不足が懸念されること

¥300
    • 20230923

      ¥300
      • 【創作】教室に置き忘れた自分の影をずっと探してる

        3時間目の予鈴が鳴ったが、教室には戻りたくなかった。クラスメイトのクスクスという忍び笑いも、ふじつけな視線もうんざりだった。 校舎の裏側、花壇の脇のベンチに腰掛ける。 梅雨の空気は湿り気を帯びて体にまとわりつく。生ぬるい風に頬を撫でられ、気分はますます滅入った。 ひどく疲れた。 僕は腰掛けたまま、膝を抱え込むように上半身を折り曲げる。 目を閉じて、耳障りな本鈴を聴きながらうとうとと微睡に落ちた。 「サボってるの?」 声をかけられて我に帰る。変な姿勢で寝たせいで痛む体を

        • 【創作】親が出張の日の下校って、なんかすごいワクワクしたっけ。

          親が家にいないというのは、子供にとってはちょっとしたイベントである。 いつもは何かと指図してくる-歯磨きをしろ、風呂に入れ、早く寝ろ-存在がいない。 それはつまり、何をしてもいいと言うことになる。 好きな時間に好きなものを食べて、好きなことをしていいのだ。好きなだけ夜更かし出来るし、好きなだけお菓子を食べることが出来る。 日頃縛られているだけに、解放の価値はすこぶる高い。 俺は非日常の果実を思う存分貪ることにした。 俺は学校から帰ると部屋にスクールバッグを投げ捨て、全裸にな

        20230925

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          【創作】撃墜王

          サイパン沖50kmの地点で、米軍飛行部隊と遭遇した。 F-4ファントムの5機編成だ。世界初のジェットエンジン搭載機。対してこちらは零式戦闘機3機、数・性能共に部が悪いと言える。 しかし、交戦に入ったからにはもはや撤退の選択肢はなかった。退路は絶たれた。僕はやれるだけやるしかない。 捕虜として捉えられた高橋に再会するまで、こんなところで死ぬわけにはいかぬ。 我々は各人の目標機を共有して散開する。 俺が3機と担当が多いのは仕方ない。 能力のあるものに負担がかかるのは組織の常。必

          【創作】撃墜王

          【創作】無関心は罪だ。考えろ、議論しろ。

          学校から帰るとお母さんが泣いていた。 机の上に突っ伏して肩を震わせていた。 手元には赤色の「通知カード」があり、私はそれで全てを悟った。 「通知カード」は強制的な臓器移植のカードだ。 選ばれた人間は、2年以内に全ての臓器を病人に提供し、そして死ぬ。 この世界では、病気の人10人を救うために1人が犠牲になることが合法なのだ。 健康な人を殺して解体して、臓器を病気の人たちに移植する。 1人が死んで10人が助かる合理的な世界。 災害現場におけるトリアージと同じだ。 トリアージ

          【創作】無関心は罪だ。考えろ、議論しろ。

          【創作】万引き

          盗んでしまった。焼きそばパンを見つめる。 なぜだか分からない。僕はお腹が減ってるわけでもなかったし、財布には3千円も入ってたのに。 気づいたら焼きそばパンを掴んでコンビニを出ていた。 朝学校に行く途中だった。 いつもの朝、1時間目の1時間前に来て教室で勉強するはずだったのに。 手元の時計は8時20分を指している。混乱しているうちに1時間目が始まっていた。 「なぜ、このようなことに」 僕は銀縁のメガネを中指で押し上げる。 成績優秀な僕が、こんなことをするわけがない。悪魔

          【創作】万引き

          【創作】強盗

          「金を出せ。」 強盗が入った。僕は驚いて声が出なかった。 児童館に入るなんて入る場所を完全に間違えている。 50代とおぼしき顔は隠されることもなく丸見えだ。手には長包丁を持っている。 「お、お金なら出します、出しますから。」 隣で立ちすく彩菜さんが震える声で言う。 茶髪のお団子で、さっきまでは丸々とした顔でニコニコ笑っていたのに、今は青ざめていた。 「金を、出せって言ってるんだよおおお」 男は喚き散らしながら刃物を振り回して僕の方に走ってくる。恐怖で体が動かない。 僕は思

          【創作】強盗

          【創作】20歳の同窓会

          20歳の同窓会。当時の僕は絶望的に拗らせていた。何をかって?よしてくれ、とても人前で言えることではない。美しく表現するなら「愛の渇望」。下劣な表現をすれば…やめておこう。 「久しぶりだね。」 後ろから声をかけられて振り返ると、杉本彩が立っていた。 最初は誰だか分からなかった。化粧で飾られた顔から元のパーツを想像し、輪郭、声のトーン、背丈なんかを元に、記憶の引き出しの奥底から名前を引っ張り出した。 突然寒くなった秋のある日に、押し入れの奥からコートを取り出すみたいに。古びた

          【創作】20歳の同窓会

          イメージを刷り込んで需要を作り出すのはいいけど、それでまた傷つく人が増える

          東京の地下鉄には実に様々な広告がある。 医者、胃腸薬、学習塾。 美容に関するものも多い。脱毛、エステ、歯列矯正、そして、 俺は自らのつるりとした頭に手を当てる。 そして、ハゲ… ハゲのCM。最近じゃAGAなんてかっこいい名前もついてるな。とにかく、俺はこの宣伝が気に入らない。 なぜなら、イメージを人に刷り込んで不要な需要を無理やり作り出しているからだ。そして、生み出された需要と引き換えに、イメージによって苦しむ人が増えるからである。 どんなイメージか。 この手の広

          イメージを刷り込んで需要を作り出すのはいいけど、それでまた傷つく人が増える

          【創作】 はじめてのバーって緊張してしまう。

          はじめて入ったバーだった。 仕事で嫌なことがあってふらりと立ち寄った。ドアを開けると60年台のジャズをBGMに、薄暗い照明の下、客がまばらに座っている。 俺はカウンター前の右から2番目に一直線に向かう。入る前からそこに腰掛けると決めていた。故に足取りは堂々と迷いなく運ばれる。はじめての場所で「こなれ感」を出すには迷わないことが一番いい。 そのルールにのっとり、バーテンからメニューを差し出されると、さっと全体を見たわして最初に目についたものを注文する。さも「俺は散々パーを回って

          【創作】 はじめてのバーって緊張してしまう。

          【創作】もしも明日隕石が落ちるなら

          【本文抜粋】 「君のせいで隕石が落ちるんだよ。」 「え?」 「君は3日前、あー学校に隕石落ちないかなって言ったろう。」 「言ったよ。言ったけど、僕が隕石が落ちてほしいって言うことと、実際に隕石が落ちることの間にいったい何の関係があるんだい?」 「言霊」投げ捨てるように彼が言う。 「言霊…言霊?」 【以下本文】 明日、地球に隕石が落ちるらしい。 人々は突然降ってきた悲報にはじめ驚愕し、次いで困惑し、最後に絶望した。最初はニュースを信じないものもあった。しかしやがては人々の中で

          【創作】もしも明日隕石が落ちるなら

          全てのイエスマンへ。

          肯定にはあまり価値がない。なぜなら肯定は誰にでも出来からだ。うん、と頷けば済むからだ。下手をすれば全く理解出来ていなくても、理解した人間と同じように相手の目に映る。どこまでも受動的なデタッチメントである。 しかし否定は違う。能動的にコミットすることで、難易度が高い。相手の話を理解し、噛み砕いて論旨を明確にし、その上で穴を突く。どれだけ感じは悪くとも、相手の言説の理解への意欲、衝突の恐怖の克服、否定を発する労力の消費、これらの点で単純な肯定よりもずっと評価されるべきだ。 ヘ

          全てのイエスマンへ。

          【創作】上野駅の人数カウントのバイト

          40ワットの数十本の蛍光灯に照らされる構内では、何もかもが色褪せて見える。 行き交う人々の靴音、電車の発着を知らせるアナウンス、電車のタイヤとレールの軋み。 近くの音は聞き分けられるが、遠くの音はあちこちにぶつかって反響し、混ざり合い、ボォーというくぐもった音になる。 手元のカウンタを人の通過に合わせてぽちぽちと押す。 この1週間で、数百本の電車と、数千人の人間を見送った。 上野駅の構内での人数カウントのアルバイトは、最終日を迎えていた。 無心で座り続けることがこれほど苦

          【創作】上野駅の人数カウントのバイト

          マスクの下で顔をぐにゃぐにゃさせてたら隣の女性に怪訝な顔された話

          地下鉄に乗る。密集した人の熱と様々な臭いで車内はムッとする。この町では、石ころよりも人間の方を多く目にする。そして目にする多くの人は疲れ切り、擦り切れていた。 終電の山手線を端から端まで歩けば、椅子に座って寝ている人を50人、椅子に横になって寝ている人を3人、床で寝ている人を少なくとも1人見つけることが出来る。ひどい時には、打ち合わせしたみたいにニ両おきに1人ずつ床に寝ている時もある。そういう街だ。 地下鉄の窓に自分の顔が映る。 ごく控えめに言っても冴えない顔があった。日本

          マスクの下で顔をぐにゃぐにゃさせてたら隣の女性に怪訝な顔された話

          たぶん死ぬよりも孤独の方が怖い

          「久しぶりだね。」 「ああ。」 彼は木に背中をくっつけて座り、両腕を幹にぐるりと回して縛られている。 泥にまみれ、あちこち破けて綿の飛び出した迷彩服。こけた頬にも泥がこびりついていた。俯いた顔からは表情は窺い知れない。 俺は大きな銃剣を片手に、彼を見下ろす形で立っている。 逃亡罪、それが彼の罪名だ。 ブカ島西端、追い詰められた我々の最後の拠点。拠点といっても、もはや兵士は50人といない。1000名近くいた支隊のほとんどが、この数ヶ月の戦闘で死んでいった。 弾薬も食料も尽きた

          たぶん死ぬよりも孤独の方が怖い