見出し画像

人生ただ一度のおねしょ

夢のなかでトイレにいっておしっこしてもした気がしないのは、現実の体の尿意が解消されてないからだ。それを解消してしまうと、おねしょになる。
私はおねしょをしない子どもだった。やったことがないゆえに、子どもの定番、おねしょというものにあこがれていた。絵本にはおねしょを扱ったものがいっぱいある。布団に地図が、みたいな絵を見るたびに、どうやったらあれができるんだろう、と思っていた。
ある朝、布団のなかでトイレに行きたくなったので、「よーし、あこがれのおねしょをやってみよう!」と思った。でも、おねしょしたことがないので、どうするんだろう? と困ってしまった。
とりあえず、布団のなかでパンツを脱いでおしっこをしてみた。それから、「おかあさん、おねしょしちゃった」と自首しにいった。そうそう、このセリフを言ってみたかったのだ。おかあさんは、「おねしょ」と言っているのにきちんとパンツを脱いでいるので困惑していた。そして私が自慢げなことにも困惑していた。
母の困惑をよそに、私は謎の達成感を得て、それ以来おねしょにはあこがれなくなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?