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サンフランシスコで会った人のこと

 サンフランシスコから帰ってきて、
・なんか雰囲気変わった?
・メイク変えた?
・日焼けした?
・痩せた?
 などなど、なんか見た目が変わったようなことを言われることが多いのですが、たぶん何も変わってません。そして体重はむしろ増えてます。

 見た目は変わってないけれど、頭のなかはけっこう変わったかなと思っています。自分としては、サンフランシスコ前・後でかなり意識が違ってしまいました。いいのか、わるいのか。いや、きっといいことなんでしょう。

 それはひとえに、向こうであった人との会話によって起こった変化です。観光スポットもろくに調べずなんとなく向こうに行った私は、サンフランシスコで何をしていたかって、とにかく人に会っていました。

 まずは、出発前から約束をさせていただいていた、ジャーナリストの瀧口範子さん。著書の『行動主義 レム・コールハース ドキュメント』は「頭がいい人好き」なら必読です。興味関心の方向性が似ている方なのでは、と僭越ながら思っていたところ、大当たり。自分はどういう人に興味があり、何を求めてサンフランシスコに行こうと思っていたのかということが、瀧口さんとの会話で明確になりました。また、ジャーナリストビザの取り方についての話なども具体的にしていただき、とても参考になりました。

 そしてその日、同じシェアハウスにいる内藤さんに「井口さんに会います?」と聞かれて、「えっ、井口さんってあの井口尊仁さん?? そんな何も理由がなくても会えるもの?」と戸惑っているうちに、フェイスブックのメッセでアポイントが設定されていました。こちらは紹介文化だと聞いていたものの、そのスピード感たるやおそるべし。次の日、地元民でにぎわうブリュワリーで、井口さんと、会社を一緒にやっている中村文香さんにお会いしました。サンフランシスコ暮らしの楽しさ、そしてアメリカ社会においてどうやって自分を売り込むかという話を聞きました。

 次の日の午前は、cookpadのアメリカでの新規事業立ち上げに参画しているシャン・リクさんにお会いしました。陽光降り注ぐメンローパークのカフェ。やわらかな雰囲気の方なのですが、頭が良すぎてびびりました。1を話すと10理解して、さらに深堀りした質問がくる。表層的なことはすぐ見破られる。こんな本質的な人に対して、くだらない相談をしてお時間を使わせてしまったのでは……と一抹の後悔を抱えつつ、彼女の知性の強度はどこで培われたのだろうと考えていました。そしてやっぱりそれは、ハーバードとスタンフォードという世界最高のアカデミア、そしてマッキンゼーなのだろうな。

 午後は北に移動し、海の近くのコーヒーショップで、同い年の起業家・松村有祐さんと対面。どんなプロダクトを開発しているのかという話を聞いた後、同郷の出身ということもあり、いろいろ身の上話を聞くことに。2時間くらいしてから、「こりゃー、遠い星の人だ」と確信しました。非常に優秀で、正しい道を歩んでいる。彼が今後立ち上げるスタートアップは、きっと成功するでしょう。それは、化学反応のように自明のことだと思う。そう遠くない将来、日本のメディアは彼に気づく。そのとき、変なふうに利用されたりしないよう、私が守るんだ、とTV版第6話の綾波レイのような謎の使命感にかられて帰ってきたのでした(ググれば有名なセリフが出てきます)。

 そしてなにより、シェアハウスの住人との交流は、普段家にこもってひとりで仕事していることが多い私にとって、すごく新鮮なものでした。ほんと全員、タフで気のいいイケてる若者だったんですよ。しかもおもしろい。毎晩、みんなと話すのがとても楽しかったです。
 というか、前述のお会いした人のほとんどは、このシェアハウスの管理人である長谷川裕之さんとその相棒(?)の内藤聡さんが紹介してくれたのです。紹介によってGoogleのオフィスまで見学させてもらっちゃいました。ただふらっと来ただけの人になんでこんな良くしてくれるのか。すごいよTechHouse。しかも1日の宿泊料、35ドルだったよ。だいじょうぶなのか。
 ここは10人くらい住んでいるシェアハウスなのに、すごく秩序だっていて、清潔で、居心地のいいおうちでした。それはきっと長谷川さんの人徳と尽力によるものなのでしょう。また、内藤さんはTech Watchというメディアを運営しているライターでもあり、私が到着した日はノーラン・ブッシュネル(!)のインタビューで家を空けていました。そうそう、内藤さんを見て、私はこっちで仕事をしようという気持ちがなくなったのです。彼は若くて、賢くて、機動力もある。私がいまからサンフランシスコに行って同じような仕事をしても、彼ほどのバリューを出せないだろうなあと。
 
 そもそも私は、サンフランシスコの最新情報を日本に伝える記事が書きたいのだろうか。向こうのすごい起業家にインタビューできればそれでいいのだろうか。なんというか、そうじゃない気がします。
 サンフランシスコに行って、自分のしたいこと・できること・すべきことの3つの要素で(それぞれにいくつかある)、ドワンゴ川上さんの言い方を借りれば、何の“役”をつくれるのかということをより考えるようになりました。そんなうまい解は見つからないし、そんなものないかもしれない。でも、これまでより大事なこととそうでないことの区別が早く・正確につけられるようになった気がします。抽象的に言うと、思考の深いところにドボンと飛び込むのが早くなった。そして、朝4時に起きられるようなりました。ああ時差ボケつらい。以上です。

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