ジサツのための101の方法は電波ゲー何かでは決して無かった

ジサツのための101の方法とは…今更丁寧に語る必要も無いだろう。世間一般…といっても最早今更感あるゲームだが、世間一般では三大電波ゲーの一つとして数えられている。
私としても以前からこの作品について評判を聞く事は多々あったが、よく聞かれる世界が何度も変わるから意味不明、だとかシャーペンカチカチ、だとかを聞いており…私自身もメンタルをちょっとヤっていたので色々な事があり敬遠をしていたが、ついに(ゲーム動画として)触れることになったので感想を書いてみようと思う。


まず、真っ先に率直な感想を述べるとこのゲームは電波ゲーではない、という事をはっきり言っておこう。私自身電波ゲーというのがよく分からないが、少なくともキャラクターの述べていることが理解出来ない訳ではなかったし、それどころか途中は泣いてしまう程感動してしまった。
ただ最後の描写は本当に分からないので、最後さえしっかりまとめていれば恐らくは名作として語り継がれただろう。
これはあくまで私個人の感想ではあるが、この作品も例にもれず当時の1999年代末の終末観を経験しているかいないかでまた違った捉え方ができると思われる。また、今と昔とでは作品に触れるという経験も変わっているという事を述べておきたい。昔のネットは取り合えずこき下ろしたり簡単なキャラクター付け(例えばfateの桜は非処女だからクソ、だとか東方の輝夜は働いてないからニート)をする事が比較的多く、最近では昔の作品が改めて評価されているという事もあり、オタク側の理解度もはるかに高くなっており、正当な評価を下されることも増えてきた。なので…恐らくだが当時のプレイヤーの中にも最後の動画と最初の動画だけを見てそのような感想を書き、それが独り歩きしてしまっている…という事もここに述べて置く。
脱線したが、私は後者であり、現在2X才。1999年の終末観は経験しておらず…言わば若者という視点からの物の味方であるが、このゲームを今更触れる若者もほぼほぼいないと思われるので、もし(奇跡的にこのゲームに若者が興味が持てたがレビューが古くイマイチ信用しきれない)という奇特な方は私のレビューを参考にして、プレイ動画を視聴して頂きたい。

本題


どこから書いていくかと難しいが…この作品を一言で表すと密室状況での極限状態×死に対しての向かい方×当時流行っていた世界を作り直す系(もし流行っていなかったら申し訳ありません)を複雑に絡めた作品だと言える。
その、作中である宇宙人が攻めてくるだとかシャーペンカチカチだとかは、あくまでも舞台装置にしか過ぎない。結果的に言えば当時そういうのが流行っていたからであって現代的視点で言えばコ〇ナウイルスでも大震災でも何でもいい訳である。まずこの極限状態を作り出すために当時流行っていた宇宙人が使われた…訳である。
後はそうだな…タイトルが不吉なうえに主人公が自殺願望がある、という点も形だけ見れば鬱ゲーと言えるが、それは断じて違うと言っておきたい。
これも最終的に主人公は生きたい…とはっきり断定は出来ないがそれに似た感情を抱いており作中のヒロインも最終的に前を向いて進む…結論になる。

さて、そろそろ本編のレビューになるが主人公は灰色のノイズに悩まされており、妄想の世界と現実の世界が混ざりあっていく…というものを作中序盤から見せられることになる。
いや、まってまって、これだけだと確かに異常な人に見えるけどそうではなくて最初にネタバレをしてしまうがこれは夢の世界という事を表しており、現実の世界だと思っているものが夢の世界である、という事の簡単な表現である。
私もここだけ見るとうっ…ってなり、電波ゲーと聞いてあ…となるのも恐らくこの序盤が大きいと思う。
ここを乗り越えると、古臭いエロイラスト可愛い早桃ちゃんのエロシーンとなりちょっと不穏な日常シーンが入ることになる。
この辺りもちょっとウッ…となるというか恐らくだがこの序盤の不穏な雰囲気(自殺願望所持者が多々)で脱落する人が多発し、この後ノベルが中盤のなたねの描写で半数以上の視聴者を脱落させていると私は考えている。
不穏な日常シーンは正直忙しい方ならばカットしても構わない、と私は思う。正直この作品の核ではない。なので描写をある程度飛ばし、中盤のシーンへと移る。
中盤は教室という密室状況で生活する極限生活である。ここは余り描写することもないが恐らく私のように1日目は笑ってしまうんじゃないだろうか。ただそれは正解である。それらは全て作者の予定通りなのだから。
正直この作品は本編の考察するのが最後以外難しく、最後は最後でぶん投げているので考察という考察は難しいがそれまでの描写は余り本筋に関係ないためヒロインの考察をした後主人公となたねをメインにして本編の考察という形にしていく。

早桃ちゃんについて

早桃ちゃんとはこの作品のメインヒロイン(だと私は考えている)であり、最もこの作品で可愛いキャラであると言える。
このキャラは過去に炎上交際をしており、それも食事だけではなく体の行為もしている。恐らくだがこの描写で更に半数以上のプレイヤーをふるいにかけているともいえる。当時は非処女だと分かっただけでディスクを割ったり中古は価値無しという最低な価値観が残っており、恐らくだが…その風評被害のようなものを受けたキャラではないかというのが私の考えである。
彼女自身は体が弱く、常に気遣われている事に気付き、そういうのを無しでちゃんと向き合いというキャラである。偶々さぼっていた所を援助交際(そういえば今の時代は援助交際って言葉も古いかも?一応はこの表現をさせて貰うけど)を持ち掛けられ、ただの普通の人として話しかけられるのが嬉しいがその行為はエスカレートして行き体の行為もするようになる。
そして偶々、主人公と再婚になり主人公が好きになるが早桃は自分自身が援助交際に依存してしまっており、辞められたくても辞められない汚れてしまったという考えにより、自殺願望を抱くことになる。序盤の描写はそれである。そして紆余曲折があり主人公に気持ちを打ち上け、その願望も恐らく消えると思われる、が
心が通じ合った主人公との性行為は…まぁ、レイプとまでは言わないが似たような形であり、悲しいとも言えるが過去を乗り越えて主人公と結ばれるシーンは涙なしでは見られない。
この辺りは…描写はキツいものの全ての点と点が繋がり、線になり早桃というキャラがまるで生きているような人間を感じさせられ、結果的に私は成功した、と考える。
また、作中で虐められているのだが、休み時間や授業中は良いの、昼休みは一人だって自覚させられる…などは思わず私にもぶっ刺さり、いくつかの発言はえぐられるようだった。

月代カンナについて

恐らくこの作品の二大ヒロインの一人である。この作品は死というものに真向に向かい合ってそれについてどう思い、それをどう乗り越えるかというものが一つのテーマだと私は考えており作中の宇宙人などはどうでもいい…と述べたが、彼女の死生観は物凄く丁寧に描かれていて、俯瞰的な視点で見ると上の早桃ちゃんよりも共感させられるところはあった。
彼女がなぜ序盤からそのような異常な行動を取るか…それは彼女にも自殺願望があるからである。
序盤のシーンの異常な場面、そして猫を落とす…これだけを見ると彼女はイカれたキャラであり、恐らくだがさらにここで選ばれたプレイヤーをふるいにかけると思う。
ただ、それも作者の思い通りであり、主人公を通して彼女は異常な人間、というのをまずは表面上だけで理解してほしい、訳である。
自分の見えるものが真実とは限らない、というのはこの作品のテーマだと考えており途中の現実世界で教授が私のいう事を信じてほしい、こちらが現実である…と述べるシーンがあるが、これはこのキャラクターとある程度繋がっていると思っていて、自分が表面的に見たものだけを真実だと思ってはいけない、というものを的確に表しているのがこのキャラクターである。
彼女は以前、女子高で若草ゆきという子に恋をしていた。まぁ紆余曲折あり彼女と結ばれ、彼女とより深い関係になりたいとカンナは思い、秘密の打ち明けをすることにした。
ゆきの秘密は父が家庭暴力を奮っており、ゆきは大人になると私もそうなると思っていた。それを聞いたカンナが父を殺して…そして私たちも死のう、と提案をして彼女はそれを承諾。ホテルで二人で自殺を図るがゆきだけがしに、カンナは生き残った。
それ以来カンナは死がどうしようもなく怖くなったが…常にゆきの事が脳内にあり死にたくはないが死にたい(ゆきのいる所に行きたい)という歪んだ気持ちを抱くことになる。
序盤の猫降ろしや主人公に対する気持ちはカンナがゆきになり、嘗てのカンナの役割を拓人に押し付けて死ぬという訳であったのだった。
これを見た時、私はびっくりしてしまった。そう思い序盤のシーンを見返すと何とも言えない、悲壮感が漂っているように思える。
何よりも死を直面した人間は死を恐れるという、当たり前だが最も理解することが難しい描写を表現していたからだ。



さて、では中盤からの考察になるが、この作品は雲井なたねというキャラクターと本筋は切っても切れない関係であり、ある程度キャラの考察と混ざってしまうのはお許しいただきたい。
さて、中盤からは少しずつ極限状態だからか生活も崩れていく。
真っ先に崩しているのはこのなたねというキャラなのだが、なたねはボコボコにされてしゃべれない状態になる。
そしてそれをきっかけにこの生活はどんどん崩れて聞き、御堂というキャラの暴力支配となる。正直この中盤のシーンは悲惨だが、現実的に考えるとそうなるだろうな、というやけにリアルな描写である。
そして事あるごとにこの世界とあちらの世界が切り替わって話が進んでいくのだが、恐らくこの辺りで今どっちの世界を表しているのかが理解出来ずに投げるプレイヤーも出てくると思う。
私自身もよく分からない…正直なところこの作品のそういう要素というのはあくまでもヒロイン達が生きようと思う為の舞台装置というのが私の考えである…が、それでは味気ないため一応は形上の説を出しておく。
主人公が生きている世界が宇宙人によって絶滅し、主人公は白い空間の中に転送させられた。
ただ、主人公は神であり生きてはいないが死んではいない存在として、白い空間にいる。
この時に、夢で嘗ての世界見ていて、私たちが体験していた現実世界とは過去に起きた事だった。
途中から、なたねと教授のシーンが入ってくるが、これは1つの説として主人公の生きたいという気持ち(ナタネ)と死にたいという気持ち(教授)だと仮定をしてみる。
これはlainでも同じだが、語り手の心情描写がないためにそれを真実としてとらえることは不可能という見方で、教授は主人公を消滅させようとしている側の人間だという訳だ。
世界をやり直す側の意思、ナタネ、と世界を消滅させる側の意思、教授、という訳だ。
なので序盤ナタネがぐるぐるまきにされていたり、教授がメインで出てきていたのは主人公が死んだときの走馬灯を見ていて、最初の死にたいという気持ちに傾いていたから、という訳だ。
そうすると幻聴はなぜ?という話になるが、これも作中では現実世界との交流という形になるが消滅する前の世界では、本物の幻聴に悩まされていたから、という訳である。
後半なたねと会話したりしていたのも、あくまでベースは死にたいという気持ちだったので教授がメインで出てきたもののヒロイン達との交流や、死を直前にして生きたいという気持ちになったから、というのが私の考える説だ。


また、なたねというキャラは最後までよく分からない存在として終わる。
というのも作中の描写と電波を受信できる…という事がかみ合っていないのだ。
作中では父親に犯されて、精神が崩壊してしまい、それをきっかけに序盤のような異常な行動を取るようになる…のだが、仮にそれがレイプのせいだとするとなぜ波動を防げたり、感知できたりするのかが謎である。
なのでこれは一つの説なのだが、過去の出来事という事そのものが違っておりそれらは実際の夢の世界(これをA)とする。Aではなたねはそのような本当に宇宙人に拉致されたが、改変された世界(これをBとする)ではなたねは宇宙人ではなく父親にレイプされた。=宇宙人は侵略してきていない、という見方はどうだろうか。
そうすると最後の世界を作り替えたシーンはなたねは死んだという結論は同じだが、似ているけど違う世界という事を表している。

そうなると元の世界と違うのは最終波動で本当の世界は宇宙人(宇宙人と言っているが、要は抗いようのない物、の方が正しいのかもしれない)が滅ぼしたがこの世界はそうではなくて、最後の描写が死んだかどうかはまあ人によると思うけど…私としては、主人公と早桃の記憶だけが残った、新しい世界。実は生きている人は多数いて、最後の電波で生きるという選択をした人だけが元々の新しい世界に行くことができる。(もしくは私たちの現実世界に転生した、とも捉えられるかもしれない)というか…そうじゃないとちょっとあんまり話のしめがよくないよね。自殺はしないで、前を向いて生きるという選択をしたのに結局死にました…ってのはあんまり合わないかな、と感じました。


この作品は、かなり…人を選ぶと思う。ただ、それはこの作品を深く追求しようとするからであって、上の二人のヒロインの描写を電波で切り捨てるのは非常に勿体ないと思う。特に早桃というキャラはエログロがあるエロゲーでしか表現できないキャラだし、ここまで緻密に作られたキャラクターを電波ゲーだから、で切り捨てるのは非常に勿体ないと思う。

なので点数を付けると非常に難しいと言えるかもしれない。良い所が50あったら悪い所も50ある。よって総合評価は50点のような…歪なゲームだと残しておく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?