天使のいない12月は今の時代にこそ再評価されるべき作品なのかもしれない(後編)

葉月真帆

このルートを一言で表すと、心と心のつながりとは何か?だろう。
最初に葉月真帆について軽く触れておくが彼女は霜村功という親友の彼女であり、恵美梨の友達という中々特異なポジションである。なので彼女のルートに入るということは、必然的に寝取りという事になってしまうがそこらへんのゲームの寝取り等ではなく最後に待っているのは破滅…そのものというあんまりな、それでもしのぶルートとは違い未来ある終わりである。

どうしても彼女の説明に入る前に透子の事についても軽く触れないとならない。作中で主人公と透子、功と真帆のカップルは対比として描かれており前者のカップルは体だけの関係だったがやがて心が…後者のカップルは心と心の関係だったがやがて体が…という関係になる。
なので、後者については画像も交えて後ほど丁寧に説明するので、まずは前者のほうを深く掘り下げていこうと思う。
さて、主人公と透子は一応共通ルートでセフレの関係になるのでもしもプレイをしていない、もしくはこの記事だけ読み進めている方は前編の透子ルートを先に読んでほしいのだが、基本的に彼らの物語は体だけの関係だったもののいずれ心と心が繋がっていく、という体で話が展開されていく。
体と体を求めていたのにも関わらず、いつの間にか相手の心を求めるようになってしまったのである。…これは仮の話だが本当に体だけを求めているのであれば、別に透子と別れる必要はない。ただ、主人公は本当の気持ちに気付いてしまったから透子を振ることになる。
透子は透子で主人公の心を求めるようになっていく…ただ、それは決して埋まらないもの。求めようと思っても最初からそんなものは無かったから埋めようがないのだ。
だから最も分かりやすい体で埋めようとする。それでも埋まらない…だから好きだ、というものの結局伝わらない…いや、伝わったのだ。だからこそ主人公は降るという選択をした。
これ以上、この関係を続けていてもいつか壊れてしまうと気付いたから、本当に好きだからこそ彼女のためを考えて、その提案を蹴ったのだ。

(このセリフに作中の二人の関係は表されていると思う)

さて、では後者のカップルについて説明をしていこう。
後者のカップルはありがちな、最初はお互いに心を求めていたもののそこからすれ違う…という主人公たちとは真逆の展開になっている。
真帆は最終的に心のつながりを求めて、功は最終的に体の繋がりを求めている…だからこそすれ違うという、悲しい展開となっている。

(お互いにすれ違う二人)

そして主人公は中間管理職のように二人の間を受け持ち続けるものの、結果的に上手くいかず、どこまでもギクシャクしてしまう。
思えば最初からつながるはずがなかったのかもしれない、求めるものはどこまでも違っていて、たどり着く場所さえも違っていた。

このルートは本当に奥が深くて、真帆も透子も心の中では似たようなものを感じているのである。
この二つのカップル、違うようで本質は同じなのである。ありえた未来ともいえるかもしれない。
始点が心か体か、それだけの違い。だからこそどこまでいっても交わることが無い…もしもこの二人が最初から出会っていればきっと、何かが変わったのかもしれない。
だからこそ人と人が分かりあうのは難しい、大切だと思っているのにも関わらず、どこまでいっても理解しあえることはない。いや、理解しているからこそ…近くにいたくないのだ。お互いに、避けているから。

そろそろ、テーマの回収といこう。
主人公からすれば、真帆といる間は束の間の安らぎ、だったのだろう。自分の心から逃げ続けてあくまでも友達という立場、だからこそどこまでも甘えて…目の前のことから逃げ続けた。
だからこそ、永遠という贖罪という罰を受けることになった。大切な人から目を背けて、言い訳を重ねていた代償に。

好きだった…それでも逃げ続けた、その代償。願っても取り戻せない日々。思い出の中にだけ残っているあの景色。
ただ、個人的には救いはあるかな、と。しのぶルートとは違って未来が無いわけじゃない、この4人はそれぞれ大切なことに気づけたから。
もう一つのテーマだが、これは作中で述べられているこれで表すことができるだろう。

この辺りは本当にシナリオライターの奥が深くて、真帆達の事を語っているのにも関わらずしっかりと読み解いていくと透子との関係にも繋がっていく。
R18だからこそ表現できるものを極限まで高めた、一つの芸術ともいえるルートかもしれない。

そして、最後になるがこのルートにおける天使がいない、とは二人を救ってくれる人がいない、という事だろう。主人公も真帆も、このことを理解してくれる人はいない、一生このことを二人で抱え続けていく。好きだけど好きではない、その関係が続くまで。

ちなみにBADエンドですが、何だかんだあって透子と付き合います。BADがトゥルーとはこれいかに。
いや、本当このゲームBADが(ry


麻生明日菜

このルートは感想が面倒くさいので、他よりも短く書くが、単刀直入に言うと理想と現実が織り交じりあうルート、だと言えるだろう。
主人公の理想の自分と明日菜の理想の自分を重ねあって恋人になる…ただ、それは虚像でしか無くて、お互いに本質を避けていた形だけの行為。
主人公の本当は

であり、だからこそ透子との関係を断とうとするものの…うまくいかず
明日菜の本当は醜く脆くて、だからこそ理想の彼女を演じようとしている、という。
ただ、結局すべてがうまくいかずに…崩壊してしまうというルート。
それでも希望はありそうだが…結局、本質から逃げていた二人がそれに直面して、自分自身の事さえ避けていたのにお互いを受け入れるのはどれほどまでに困難なんだろうか?というエンド。

(割としのぶルートっぽいもののあんまり鬱々とした気分にならないのは透子に救いがあるからかもしれない)

このルートは普通の感想を述べるよりも巣鴨文吾(主人公のバイト先の店長)と透子から捉えるものを語ったほうが面白いと思うのでそちらの視点で考えてみることにする。
巣鴨文吾(以下おやっさんとする)は、

と称されるほどに見た目はイカついし他のルートでは最低限しか出てこないものの、明日菜ルートでは一変して一人の娘を見る父親のような彼の視点から中盤話が展開されていく。
彼の話が非常に重い、作中バカな主人公はおやっさんの言っていることを娘がとられるから…等とバカみたいな視点で語っているがそんな事はなく、こんな不愛想でクソみたいな主人公(私の進行ルートがよくなかったのか無駄におやっさんに反発していく)なのにも関わらず明日菜との関係を一人の親のような視点で話に乗ってくれる。
というか、このルート…明日菜も主人公もサボりまくっていてマジでおやっさんの寿命が縮むんじゃないか、と思える。何も言わないの大人すぎるだろ…。

バイトバックレまくったのに、一切責めず…この辺りは本当に、他のルートだと置物でしかなかったからびっくりしました。
彼なりに明日菜を愛していたけどそれは一切届かない、全てを理解しているからこそ明日菜が欲しいものを与えてくれないという…そして、それを分かっているからこそ、今の作り上げた明日菜を肯定する事しか出来ないというこの辺り、大人として、明日菜の親に近い存在として発言がとても、重い。

そして、このルートだと今まで人形のようだった透子がはっきりと反旗を翻す、他のルートとは違って透子からすれば救いのある話。
このルートは…私の選択肢だと雪村ルートから派生してポイの選択肢から行ったので余り体の関係にはならなかったのですが、中盤明日菜に振られてから体を重ねていく姿は痛々しかったですね。
特に、透子との関係は中盤前後で大きく変わるのだが、中盤まではポイが生きてるのか死んでるのか気が気でなくて、本当に居た堪れない。
そのあたりまでは他のルートとは違い、きれいな友人関係が続いていくものの、後半からはやはりこのゲーム、というべきような関係性になっていく。
ただ…余り嫌な気分がしなかったのは、はっきりと付き合っていなかったからかもしれない。
ただの友達、ただの肉体関係、それ以上にはならなかったから。

(消されかねないので全身のスクショではないのはお許しください)

作中後半、振られてからというものの透子との関係が進展していくが余り進まず…透子も気付いているものの、お互いに触れない関係。
歪な関係は、壊れてしまう…このルートは形こそ違えど、心と心をつなぐとは何か?という話かもしれないですね。

結局、主人公の本当のやさしさに触れているのが透子は好きだったもののそれすら満たしてくれない…主人公は甘えていただけだったからこそ、愛想をつかされてしまう。
個人的にはほぼすべてのルートで透子がいいようにされていたのでこのルートは、ここが本当に良かったです。因果応報という言葉、私は結構好きなのですが人の心を弄んだ、罰、といった形。
このルートは、束の間の安らぎ、というのは透子といるとき、そして永遠の贖罪とは彼女の心を弄んで…しまった罰だと、私は捉えることは出来ましたね。
本当にいい話、主人公と透子の関係性全てが明日菜から説明されるという。
個人的にはしのぶもこのルートだと良いキャラをしていたし、割と好きでした。


須磨寺雪緒

遂に、最後…このゲームで屈指の有名人であり、今なお電波ヒロインとして一部で話題になっており、私自身が購入を踏み切った最恐最悪の女、須磨寺雪緒、彼女のレビューだけは今までと視点を変えて評価させていただこうと思う。
…その前に、軽く須磨寺雪緒について触れておこう。
彼女は維納夜曲でバイトしており、他のルートでは軽く出てくるものの軽くしか出てこない。
最も踏み込んだ話が、明日菜ルートといっても差支えが無いほどに、彼女の出番だけ、悪い意味で浮いている。
彼女は才色兼備、頭脳明晰、絵にかいたような完璧超人(エロゲーだからとか突っ込みはナシでね)ではあるが、雪緒ルートに入ると彼女の本性は現れる。
はっきり言って基地〇に近い思考回路、異常とも言っていいほどの生への執着心の薄さ、そして透き通ってしまうほどの透明感。そう…全てはこのルートに入るまでのブラフと言って差し支えない。

まるで自分自身のルートを暗示しているように、プレイヤーの脳内に直接語り掛けてくるような…いや、これは比喩じゃない、彼女の独特の声と相まって、本当に語り掛けてくるように感じるのだ。
雪緒ルート以外では本当に、彼女は出てこない。それも相まってプレイ中は、悪い意味で主人公と同じ思考回路になってしまうだろう。
そう…

このように…ね。

彼女の異常な思考回路に毒されていき、主人公も少しずつ彼女の異常な電波(アルミホイルまいとけー?)に介されていく。
この主人公、クズだとか優柔不断だとか言われるが私からすれば、無色透明、だと思っている。
何物にも染まってしまう白、だからこそどのルートでも狂気に照らされて、無駄に空回り、場合によっては大切なものさえ失ってしまう。
ただ、私は…この主人公が悪いとは思わない、白だからこそ透子を大切に思っているし、何も持たないクソガキだからこそしのぶを助けたいが余り、透子という大切な存在を失ってしまう。要は何も知らないのだ、人を避けてきたから。
そんな彼を染める、雪…とは似ても似つかない、真っ黒な色。だからこそ、死というものに染められてしまう。
彼女との出会いは、今までのルートとは一変し常に死と向き合うことになる。しのぶルートとは違い、最初からである。結果的にではない、出会って間もないころから、である。
そして雪緒と出会うことにより、日常は少しずつ崩れていく…いや、待てよ、とそもそもしのぶルートで三人の関係は崩壊し真帆ルートでは4人の関係が崩壊したのに、何を言っているの?と思われるかもしれないが、本当に今までとは違い、崩れていくのである。

まず、どのルートでも(まぁ、と言ってもしのぶルートだけは透子ルートと半分共通しているので当てはまらないが)透子との関係はあくまでも内輪で完結しており恵美梨は(異常ヒロイン達の中の)癒しと化していた。
ただし、このルートでは透子は心を閉ざして(関係性こそは出ないものの)学校で公表され、恵美梨は主人公に心を閉ざす。

(レイプがばれて、しのぶに粛清される恵美梨)
(死ねって言葉を散々言ってくるのにそれすら言わなくなった恵美梨)

これはプレイしないと何を言っているか分からない…と思われるが、本当にこうとしか言えないのである。
上記で恵美梨に触れたので、ここで彼女についてまた軽く触れておくが、彼女は雪緒に惚れており、彼女とそういう関係になりたいとこのルートで明らかになる。
ただ、別に怒っているのは雪緒と恋人関係になったからではない…と私は解釈しており、恋人同士をすっ飛ばして、肉体関係を続けたから、だと私は考えている。
この辺りは濃縮されたテキストのせいで推測でしかないものの、バ先に二人そろって休みの時点でアレ…なものの、せめて清純な付き合いをしていると期待していたのだろう。だが、夜は帰ってこない、バ先に二人で休む…等の状況証拠から、そういう関係を続けていると。序にそんな関係の中透子とまともな関係ではない(そもそも普通ビンタされるわけがない)という感じである。
この辺りから中々、キツい展開が始まっていく。特に今までも事あるごとに死ねと言っていたしのぶもこのルートではどう見ても正論しか言っていないので、特に…早い話がこのルートでは全てがかみ合ってしまうのである。
(よくあるじゃないですか、洗脳されて自殺するってやつ…早い話がそれですよね)

(透子ルートだとクレイジーサイコレズにしか見えないのにこのルートではしのぶだけが透子の頼りだと強く感じさせられる)

脱線しまくって仕方ないが、どうせこのルートではもう透子もしのぶも出てこないのでここで一気に書いてしまうが、このルートの透子は本当に可哀想である。まぁ…可哀想というか、他のベクトルとは違って友達として助けてあげたいのにそれが届かない、という割と生々しい可哀想さである。
こんな主人公放っておけばいいものの、可哀想だからという理由で(相談に乗ってあげようとしているが…最後にはレイプをされてしまう。

このルートは透子からしたら可哀想なものの、後腐れなく(というかほかのルートが異常)、そもそも恋人になっていないのでまぁ、アリと言えばアリですかね。しのぶルートと真帆ルートが直接的な寝取りなのでそれに比べたらまぁ…傷は浅いほうかな、と思います。(というかしのぶルートはマジでこのルート以上に登校拒否になりそう)そもそも理解者であるしのぶはいるし、主人公すら理解者にはなってないのでね。

漸く話は戻り、雪緒の話になる。
そんな崩壊していく中で唯一すがれるものが雪緒である。皮肉な話だ…彼女のせいで日常は崩壊しているのに、居場所はもう彼女の隣しかないのだから。
また話が変わって申し訳ないのだが、さよならを教えてという作品を知っているだろうか?知らない方はDLSITEで購入するなり(アクが強すぎるのでプレイ動画を閲覧するだけでも良いのだが)私はあの作品ほど夕日のもつ妖艶さを引き出した作品はこの世界に存在しないと思って…いた。今は違う、恐らく、このルートはさよならを教えてと同じ以上に、下手したらそれ以上に夕日の持つ妖しさを引き出している作品だと私は思っている。
以前の記事と少しかぶってしまうのだが、夕日はそのキャラの妖艶さを引き出す…この辺りは私が語るよりも恐らく、雪緒ルート 感想等と入力していただければ既に先駆者の方が書いているので省かせて頂くが、本当に美しいのである。
作中でも言われているこの世の人でありながら人ではない…天使のような彼女は、夕日に照らされていることでより、人外らしさを出しているのである。
特にこのルートでは、生と死の境目が薄くなっているのがまるで、夕日のようである。
生というものが、昼ならば、死というものは夜。その間…特にこの二人がいる屋上は最も、あの世に近い場所。
この辺りは…難しいのだがプレイすると、異常な雰囲気にのまれていく。
上の前提条件を踏まえて雪緒の話に耳を傾けると(鬱気味の方は耳を傾けないように)まるで、生きているのに彼女は死んでいるようにさえ思えてくる。

(一例、彼女の死生観は独特なので全て貼りたいものの知りたい方は各自ググるなりして下さい)

先駆者の方の記事に、雪緒はツインテールの幼さも含めて大人と少女の中間であり神秘性を放っている記事があったが、私もその通りだと思う。
そう、はっきり言おう、須磨寺雪緒は頭がおかしいのである。
生きていながら死んでいて、そこにいるのにいないようにも思えて、大人に近いのに少女であり、そして…心が無いのに心がある。
全てが不透明、白と黒の中で唯一中間の色、全てがはっきりしない、それはまるで…夕日と言っても差支えが無い。
異常なヒロイン…彼女とのセックスシーンは流石に貼れないので貼らないものの、しっかりとこの作品のテーマである心と心の繋がりも完備している。
体は繋がっているのに心は通じない…そんな当たり前のテーマでさえ、彼女のルートでは彼女の魅力になってしまう。
それどころか、彼女とのセックスはそんな生半可なものではない、あくまで自分たちが生きているという生を感じる行為、そのものでしかない。
そして、目の前の死から目を背ける儀式…そのもの。

(一例、正直セックスシーンはエロいとかではないですね、一つの儀式)

そう…このシーンを見て何か思わないだろうか?そうである、透子との裏返しなのである。
他のルートでは主人公が透子に提案、ただしこれは雪緒が主人公に提案、だからこそ私はこれは裏ルートだと考えている。
どこまでいっても正しい透子ルートの真逆、生に溢れた彼女の前向きな関係とは違い、どこまでいっても正しくない、死に満ち溢れた彼女との関係。
それはきっと間違っている…それでも、正しいとさえ錯覚してしまうほどに、彼女は魅力に満ち溢れている。
彼らは最後まで心は通じない、あくまで体を重ねても、それは主人公からすれば雪緒という…目の前の死から逃れるだけの行為、雪緒からすれば主人公を招き入れてしまった罪滅ぼし。
主人公は恵美梨、透子を失い、更に雪緒に依存していく。
そして雪緒もあくまで罪滅ぼしとして一緒にいるだけ…そこに好きとか嫌いだとかの感情はしない。
ただ、その異常な関係は恵美梨の行動によって崩れていく。

(余りにも美しすぎて百合厨になってしまった主人公)

まぁでも確かにこのシーンは美しい…本当に、百合ゲーだったら間違いなく最も印象に残るシーンと言えるかもしれない。
ちなみにここで恵美梨を追うと雪緒の共犯者は恵美梨になります。…そっちの方もアリだね
(まぁ、主人公からすれば全てを失った上に共犯者までいなくなって溜まったものじゃないけど)
雪緒ルート、意外にBADENDも面白くて上の百合厨に目覚めて脳破壊された主人公以外にも、雪緒からガン逃げするやつもあります。

(逃げると学校も転校してさよ教みたいに最後反転して終わるっていう)

(後の二つは透子とそういう関係になるか明日菜とそういう関係になるだけなので微妙です)

その後どうして、恵美梨に対してあんなひどい対応をしたのか問い詰めても望むような返事は帰ってこず…偶々、引かれた犬を見つけた二人。
そこで初めて主人公は雪緒には心があるんじゃないか?と思う。
そして偶然に家をポイと二人で出た主人公、そこで再び雪緒に会う。
主人公の感じた違和感…それは間違いではなかったのだ。

このセリフ、このゲームの本質を表しているようで私は、物凄く好きである。
このゲームはみんな、心があったから不幸になったのだ…例えば、透子彼女は心があるからこそ、主人公との肉体関係だけでは足りなくなってしまった。
しのぶもそう、彼女のルートも心を無理やり平穏に保つために結果的に壊れてしまう、そして真帆…功とのあり方について悩んでしまうし、明日菜も結果的には雪緒と同じように心を削られて、ああいう風になってしまった。
最後に主人公、透子との関係は…彼にも心があるからであり、大切に思っているからこそ悩んでしまう。それにしのぶや真帆も彼なりに思いやっていたからこそ大切なものを失ってしまった。
これは主人公だけにではない、ここまで全てのルート辿ってきた私たちも話しかけているのだ。

彼女の過去についてもさらっと触れるが、彼女は嘗て犬を飼っていた。だがその犬は亡くなってしまう…それから彼女は失うことが怖くなり、全てのものを遠ざけるようになった。
これは過程こそ違うものの、主人公にも重なる部分はある。これは主人公のあったかもしれない、姿なのである。
だからこのルートでは主人公が

本当によくできているルートである。

そして、全てに疲れた主人公が一言

皮肉な話である。アレだけ死に対して恐れていた主人公…所謂ファッションだった主人公がそう思ってしまうのだから。

この一連のセックスシーンは本当に美しい(後半は騎乗位になり、夕暮れを見上げて、雪緒とする…それはまるで、私には天使のように思えました)のだが、規制に引っかかってしまいそうなので各自検索していただくか、無い場合は直接DMをして頂ければ差し上げます。
このシーンは涙なしでは見られない…最後の最後に、初めて主人公と雪緒は心を通じたのである。
死という、最も遠い場所に近づいたこの瞬間…もう何もなくなった最後に初めて二人は心の底から好きだと感じたのである。
上の夕暮れを踏まえてみると本当に…夕暮れが全てを曖昧にして、生と死、男と女、体と心…一つの美しい、儀式のようにも思える。

余りにも悲しい、それなのに余りにも美しいお話。
そして二人は飛び降りた。





が死ぬことは出来ず、重体で病院に運ばれる。そして、雪緒からこう告げられた。

この雪緒の話…これは私の解釈なので、必ずしも合っているとは限らないが私は、雪緒は初めて心が通じた主人公とその先(生きている側)を見ていたいと思ってしまったのかもしれない。
最後のセックスで心が通じてしまったからこそ、思いとどまってしまった。
都合のいい女である、自分の都合で死に招いておいて最後に生きたいなんて望むんだから。
ただ…私にはどうしても彼女は嫌いになることはできない、それは本心だからである。ずっと隠していた本当の気持ち、生きたいという心。
最後の最後に、嘗ての自分を思い出して、気付いてしまったから。

恵美梨も都合のいい女である…結局皆、死というものを軽くとらえていた。最後の最後に、皆気付いてしまった。
何もわからない、だからこそ実感が無い…目の前で直面して初めて、言葉の重みに気づく。
重さを持たない言葉は言葉ではない、それはただの声。自分の心にさえ響かない、ただの並ばれた単語。
主人公たちは生きてしまった、最後に天使はいなかった…だから、あの世に導かれることは出来なかった。
これから先、辛い現実を目の当たりにして生きなければならない。周りを不幸にした罪滅ぼし。

二人からしたらこれは永遠の思いではないのかもしれない、そして真実でもないのかもしれない。
ただ、死を望んだ先にあったそこにあるだけの思い。
死を直前にして初めて思った気持ち。

願ったのは、束の間の安らぎ──
   ──叶ったのは、永遠という贖罪

彼女たちは、安らぎを得たかった…その代償に、生きるという贖罪をしなくてはならない。
それは…永遠にも長い間、生きている間、ずっと。



最後に
ということで長くなってしまいましたが、これにてレビューは終わりですね。
本当に埋もれた名作だと思うんですが現状…プレイしようがない(現存している在庫も数少なく、近場超えて遠場も探しましたが在庫はなく、泣く泣く通販で高いものを買いました)ので、割れ…とは言いたくはないものの、DL販売を取りやめてしまったので仕方ないのかなとは思います。
何よりこの作品に触れずにいる人が私はもったいないと感じており、今の時代だからこそ、普遍的な物を感じ取ることができると私は考えているんですね。
何よりもこの、エロゲーという媒体でしか表現することができない関係(透子との肉体だけの関係を経て、その後につながるもの)、R18だからこそまんべんなく伝えることができる雪緒の死生観…本当に勿体ないので再販して頂けないでしょうかね。
私の環境ではWin10で互換性モードで起動したので、もしこの記事を読んでやりたいと思った方は購入して、プレイしてください。本当に…このままいくと在庫はいつかなくなりますので。
最悪、どうしてもって方はプレイ動画送るんで、私に一報ください。
YOUTUBEには挙がっているものの、肉体関係を見ないでこのゲームの魅力全てを理解することは不可能なんですよ、私のレビューも出来るだけ未プレイの方に伝わるように書きましたが…結局、無理なんですよね。どうしても。


ルートですが、…まぁ、どうしても順位を付けるのならば透子>雪緒>明日菜>真帆>しのぶ、ですかね。
やっぱり、透子…本当に可愛そうなので、後半とか魂の殺人かよ!?って叫びたくなります(笑)

最後に点数ですが
(システム)  70点
悪くはないですけど、二週目等選択肢に飛べない部分があり若干不便を感じますが…時代を考えると仕方ないかな(当時のゲームしてないので分からん)という事で、若干甘めに。
(絵)    130点
みつみ美里さんの絵、正直全く古臭いと感じませんでした。今見ても芸術に思えます。
それを抜きにしても雪緒ルートの美しさだけでおつりが返ってきますね。
(音楽)  70点
良い…けど、個人的には全てのBGMが雪緒ルートの為に作られているような感覚を覚えてちょっと微妙。悪くはないんですよ、正直。すべて高水準だと思います。
ただ…雪緒ルートから逆算して作ったんじゃないか?というのが拭えないので。
本当に雪緒ルートだとすべてが調和するんですが…だからこそ、ちょっと原点、みたいな。
(エロ) 30点
エロのCGが悪いわけではないですけど、実用性はあんまりないですね。
ぶっちゃけ異常なシチュエーションが多くてラブラブってのはあんまないですね。特にしのぶや真帆何かは顕著ですね。分からないけど、ただエロさはありますね。
(おすすめ度) 900点
面白いし、正直買えって言いたいですが…プレミアツイてるのがネックなんですよね。間違いなく現存してるもの全てがユーザーの手に渡ったら異常な値上がりします。なので…買え、とは言い難いですね。本当に。
総合評価  ∞点
透子と雪緒が可愛いので、これだけで点数…カンストです!(笑)

ほんと…これ読んでるleafさん、頼みますよ、2020年の時代にクソガキがプレイしてクソガキが面白いって思うんだから新規開拓の為にDL販売、頼みますよ。

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