限りある時間

「もう俺おじさんだからさ。ハハハ」



この手の言葉を聞く度、目にする度に胸がチクリと痛む。

「貴方お幾つですか?」
「全く髪も薄くないし白髪もないし充分若々しいですけど。」

ただの僻みなのは分かってる。
おじさんという言葉の定義はあるけどないようなものだし、発言してる本人に悪気がないのは分かる。

ただ、自分と比べてはるか年下の方がこの手のことを言うとどうしてもモヤっと感じるようになった。
自分が歳をとった、というかこういうのが本当の老いなんだろう。


2年前に受診した人間ドックの結果はあまり良くなかった。



自分は健康体だと思っていた。
職場の健康診断では20年以上一度も悪い数値がでたことがない。
この年齢の男性にしては血圧も高くないし肥満でもない。
偏頭痛も花粉症の症状もない。目が乾いたこともない。健康面とは関係ないかもだが、視力も矯正なしで生まれてこのかた常に1.5以上だ。


健康なのは努力でも何でもなく遺伝に恵まれただけだが、その健康な遺伝子を引き継いでくれた父は癌が発覚してから僅か5ヵ月で全身に転移し、そのまま亡くなった。


人間ドックを受診し全く問題ないとの結果がでたのが10月。
体調が悪くなり始めたのが11月末。
年が明けた頃にはステージ3に。
3月にはステージ4に。

「ちょっと前まであんなに元気だったのになんで。。」

あまりの進行の速さに。
日に日に目に見えて衰えていく父の姿に。
周りはみな気持ちの整理が追いつかなかった。


2年前の結果を受けてから、晩年の父の姿を思い出すことが多くなった。


自分には息子が2人いる。
日に日に成長していき、どんどんカッコよく大人の男になりつつある子供たちの成長を嬉しく思う反面、鏡を見る度に白髪が増え老け込んでいく自分の姿に気持ちが落ち込むことも多くなってきた。
男性の更年期なんだとも思う。

「もう俺はおじさんなんだよな。。」
老いはいつだって残酷だ。



天鳳ばかりやってきた自分だが、3年前にふとしたキッカケで最強戦という舞台を知った。

ド短期の闘いで最強を決めるな最強を謳うな。と、それまではどちらかというと冷めた目でみていた自分だったが、「最強」という冠はともかく、短期の闘いの為にずっと前から下準備をし、その一戦に全神経を注ぎ込む闘いがとても楽しいものだということを知った。


最強戦は全国の舞台まで勝ち上がるとアマチュアでも放送対局に出ることができる。

真剣に取り組む楽しさを知り、また、老いを感じはじめた今は、自分が、、、父親が生きている時にこんなにものめり込んだ麻雀を真剣に取り組んで打つ姿を、子供たちに残したいな、と思うようになった。

麻雀は、天鳳は老いてもできるが、見た目はいつまでも若くはいられない。
せっかく映像に残せるのなら、病魔に侵され朽ちていく姿で残したくはない。
時間は有限なのだ。


コロナ禍で最強戦はここ2年参加できなかったが、ワクチンや治療薬の開発でようやく出口戦略が見え始めた。
それでも後遺症や家族と同居していることを考えると、今までと同様慎重に振る舞うべきではあるが、自分の体調や諸々を鑑みるといつまでもチャンスがある訳ではない。

アマチュアが、、自分のこんな実力で映像対局に残るまで勝ち進むなんてはっきりいって夢物語だが、動かないことには何も起こらない始まらない。

後悔しないように、やれることはやれるうちにやっていきたい。
時間は、、やりたいことがやれる時間はいつまでもある訳じゃないのだから。

【追記】 10月15日に行われた最強戦天鳳予選を突破することができました。https://tenhou.net/cs/2022/10ts/

あと2つで夢が叶います。こんなチャンスはもうほとんどないと思います。

精一杯頑張ります。





そのお気持ちだけで充分です。読んで頂きありがとうございました。