麻雀のプロ

「しかもフリテンでしたよね。」
言われた瞬間背筋に冷たいモノが走った。


先日本八幡にあるKURに遊びに行った。
とある事情で10年ほど前にオンレフリー引退を決意し、もう2度と行くことはないだろうな、と思っていた自分だが、その想いを覆したくなるくらいお会いしてみたい方がいた。


最高位戦に所属している中村英樹プロだ。

ツイッターや天鳳をプレイしている方にとっては怪しすぎるチーと言った方が分かりやすいだろう。

無題12

無題1

怪しすぎるの看板に偽りなし。本物だ。


プロの方はお行儀のよいツイートが目立つが、中村プロはいつも適度にキレ散らかしている。ただ、それが全てユーモアに溢れており以前から好感を持っていた。

何より自分は麻雀をたくさん打つ人が好きだ。

中村プロは本格的に天鳳を打つようになってからまだ1年くらいのようだが、打数は既に6500戦を超えている。
自分の中では短期間だけたくさん打つのは鬼打ちでも何でも無いのだが、1年に亘り毎月500本以上のペースで打つのは充分鬼打ち勢と言っていいだろう。

日に日に会ってみたい気持ちが募っていく。
自分の中でもう2度とフリーに行くことはないと思っていたが、会える場所はKURしかなかった。
何より会えないまま時間が過ぎていくのが嫌だった。
意を決して中村プロにDMで連絡をとり、勤務先のお店に遊びにいくことに決めた。

事前に告げていたこともあり、来店時に中村プロの方から「怪チーです。」と自己紹介して頂いた。
憧れの方にお目にかかれて自然と笑みがこぼれる。
その日は(示し合わせていたのだが)鳳東民のフォロワーの方も来店されており、中村プロの計らいで同卓させてもらった。

10年ぶりのフリーを楽しみながら何戦か打った後、中村プロが本走で入ってくれることになった。
対面に中村プロ。下家には鳳東民。
淡々と進んでいたラス前にそれは起こった。


「リーチ」


中盤過ぎに上家の親から立直が入る。
その時の自分の手牌は

六六六六七七ハハ(55) ポン777  ドラなし
となっていた。


やっべー何も安パイないわ。。
どの危険牌引いたら七八落とそうか。。

と思いながら引いた牌は幸い親の現物。切りながら次のことを考える。


「5p出たらどうしよっかな。。」



「んーーーーでも対面にいるの中村プロなんだよな。。下家も鳳東民だよな。。ならポンか、、いやポンして何切るんだよ。でもこんな5pスルーしていいんか。。。行けるかな。。んーーーー。。。」

考えがまとまらないまま牌山に手を伸ばすとそこにいたのは望外の5p。

六六六六七七ハハ(55) ポン777  ツモ(5)

あまりにびっくりして咄嗟に点数申告がでなかった。

「えっっと、、300,500は、、、800,1000」

あまりのしょっぱい和了形と慣れないバセンゴの点数申告にとまどいつつ牌を落とした次局。
「いやー2000,4000って言ってもバレなそうでしたよね」
ド愚形で親リーを交わせて気持ちが高揚し、笑いながら言ったその時だった。


「しかもフリテンでしたよね。」


にこやかに笑いながら発言したのは中村プロだった。


「バレてるじゃん。。。」


くだらない勝負ロンを考えるてる折に偶然ツモり、照れ隠しに笑っていた自分の顔から一気に血の気が引いていた。


実はこの手牌は一向聴の時に九を切っていたのだ。



「プロなら、、ていうか仕事としてメンバーやってるから必ず見るようにしてますね。」

後日このことをツイートした際の中村プロからの返信の言葉だ。
事も無げに、本当に当たり前のことをしただけのように中村プロは言った。

プロなら当たり前なのかもしれない。
だが出和了でもなく、ツモ和了のこの牌姿で瞬時に振聴に気づける方がどれだけいるだろうか。


「いや、、、これは敵わんな。さすがプロだわ。」
心の底からそう思った。

自分はメンバー経験もないしプロでもないから分からない。プロなら当たり前のことなのかもしれない。
こんな些細なことを凄いことのように扱われて本人は困惑されるかもだし、ただの振聴チェックといえばそれまでだ。

ただ、自分は本当に凄いと思った。


麻雀プロの定義に関しては昔からずっと議論され、その度に炎上しているし、その言い争いに辟易することも多い。
何がプロなのかをここで論じるつもりはないが、一応何十年も麻雀を嗜み、アマチュアだがライト層ではない自分を麻雀で唸らせられるのであれば、充分に麻雀のプロなのだと思った。
冒頭に載せたチーの是非や損得は自分に判断はできないが、こういう鳴きができるレンジの広さは充分にプロらしいように思える。

推しの○○プロ。というと一般的にはMリーガーや華やかな女流の方になるかと思うが、さきたまは中村英樹プロを推していきます。
こんなにも【持っている】プロは他にいないと思う。

無題1


今後もご活躍をお祈りしております。鳳東以外で。



そのお気持ちだけで充分です。読んで頂きありがとうございました。