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【教育・学校心理学】学級経営


学級経営とは

 以下の実施を通して、児童生徒たちに学び合い、支え合いの関係の構築を促しまた、一定レベルの学習内容を定着させるコミュニケーション能力、道徳性、発達段階に応じた社会・心理的な発達を促す、すべての対応の相対である。
・児童生徒への授業の実施
・児童生徒個々の生徒指導
・教育相談、進路相談

学級集団づくりについて

 教員が教育課程で決められた授業や活動を展開させながら、児童生徒に対して学級活動に参加させるために進める2つの取り組みのこと。
・基本的な「共通する行動様式」を身につけさせること
・児童生徒が親和的で建設的な人間関係を形成できるようにすること

学級風土

 閉じられた学級という集団の中で先生と児童生徒が、最低1年間の学級活動において児童生徒の相互作用や、小集団の文化、児童生徒と教員との関係などにより現れてくる学級の雰囲気のこと。

支持的風土

以下の要素を持ち合わせた学級風土のこと。
・級友との信頼感
・素直な発言が可能な雰囲気
・寛容さと相互扶助(助け合いの精神)
・学級内の他の集団に対して敵意が少ない
・目的追求に対しての自発性
・学級活動の参加に対する積極性と自発的な活動
・多様な自己評価
・協同と調和
・創造的な思考と自律性が尊重
支持的風土のある学級集団の中で、児童生徒たちが助け合いながら協同的に活動に取り組むプロセスにおいて、自律・協力・自主性・リーダーシップなどの資質が育成され、人格形成につながる。
また、学級集団に所属する全ての児童生徒がそのつくり手であり、享受者である状況が支持的風土のある学級集団の形成に繋がる。

防衛的風土

支持的風土と真逆の要素を持ち合わせた学級風土のこと
・級友との不信感
・攻撃的でとげとげしい雰囲気
・統制と服従が強調
・戦闘的で地位や権力への関心が高い
・目的追求に対して操作と策略
・グループ間で対立と競争
・保守的かつ他律性

学級風土の発達課題について

 学級集団が児童生徒間の相互作用、小集団の形成、集団機能の変化の影響を受け、様相が変化していくこと。発達課題は5段階に分かれる
・第一段階『混沌・緊張期』
 学級集団が編集された直後。ルールが定着せず、児童生徒間の交流も無く、バラバラな状態
・第二段階『小集団形成期』
 ルールが徐々に意識され、児童生徒の交流も活発化されるが、児童生徒間の交流は小集団の範囲に留まる
・第三段階『中集団形成期』
 ルールがかなり定着し、複数の小集団が連携でき、半数近い児童生徒が一緒に行動できる状態
・第四段階『全体集団成立期』
 ルールはほぼ定着し、児童生徒がほぼ全員で行動できる状態
・第五段階『自治的集団成立期』
 ルールが内在化され、児童生徒が自他の成長のために主体的に協力できる状態

児童生徒への支援としてのSST、SEGについて

 児童生徒同士、教員との関係が親和的な関係を形成するための児童生徒への代表的な2つの支援策。

ソーシャルスキル・トレーニング(SST)

 社会や集団に参加し、共同生活・活動をするためや、対人関係の形成・維持を行うための知識と技術をソーシャルスキル(Social skills)といい、このスキルを習得するためのトレーニングのことをソーシャルスキル・トレーニング(SST)という。
※学級生活で必要とされるソーシャルスキル(CSS)
具体例は以下の通り

構成的グループエンカウンター(SGE)

 リーダーの指示した課題をグループで行い、その時感じた気持ちを素直に伝え合うこと。具体的にはリーダーがエクササイズ(課題)を使用し、グループサイズや時間を指定する場面設定(条件設定)をして、一定のプログラムを中心に進めていく。
エンカウンターとは本音を表現し合い、それを認め合うこと。

 

教師への支援について

 支援が必要な理由としては以下の通りである。
・学級経営を学ぶ機会が教育実習以外に無く、目標とする学級集団の状態とそれを導くための方法論について曖昧
・インクルーシブ教育が求められる中で、特別な支援を必要とする子供も在籍する状態での学級集団づくりが求められる。そのため学級づくりの難しさは高まっている

心理検査Q-U

 支援的風土のある学級集団を目指すために、個々の児童生徒や学級集団の状態について把握する必要がある。その時活用することができるのが、心理検査Q-Uである。

概要

 児童生徒が学校生活に満足感や充実感を感じているかどうかをみる「承認感」と、不適応感やいじめ・ひやかしの有無を確認する「被侵害・不適応感」の2つの下位尺度から構成される。
 児童生徒たちの学級生活の満足感と学級生活の意欲・充実感や、いじめを受けている児童生徒、各領域で意欲が低下している児童生徒などを発見することができる

https://www.gakkoushinrishi.jp/wp-content/uploads/hirotashougakkou.pdf

子供たちの個々の把握

 児童生徒の上記の2つの得点を全国平均値と比較して4つの群に分類して理解する。
学級生活満足群:「承認得点」高、「被侵害・不適応得点」低
 不適応やトラブルもなく、学級生活を楽しめている児童生徒
被承認群:「承認得点」低、「被侵害・不適応得点」低 
 いじめを受けることもなく、トラブルにも巻き込まれていないが、学級内で認められることが少なく、自主的に活動することが少ない
侵害行為認知群:「承認得点」高、「被侵害・不適応得点」高
 対人関係でトラブルを抱えているか、自己中心的な面があり、他の児童生徒とトラブルを起こしている可能性が高い児童生徒、ネガティブな捉え方をする傾向にある児童生徒
学級生活不満足群:「承認得点」低、「被侵害・不適応得点」高
 いじめや悪ふざけを受けている、不適応になっている可能性の高い児童生徒。学級の中で自分の居場所を見つけられずに居る児童生徒。

学級生活不満足群→援助ニーズの3次支援レベル
被承認群・侵害行為認知群→援助ニーズの2次レベル
それぞれのレベルに応じた支援計画が検討可能となる。

学級集団の状態の把握

 同じく心理検査Q-Uを使って確認が可能。学級集団をルールの確立度とリレーション(親和的な人間関係)の確立度の視点で捉える。
2つの下位尺度「承認感」「被侵害・不適応感」をそれぞれ以下に対応させることでか確認することが可能。
・承認感:リレーション(親和的な人間関係)
・被侵害・不適応感:ルールの共有
結果のプロットと学級集団の発達段階を対比させることで状態の把握が可能。

利活用

 結果をふまえ、目標とする学級集団の状態に近づけるために、学級内のルールとリレーションの確立のためにすべきことを検討する。
具体的には校内の学年団の教員たちと共に結果の分析、対策の立案、実行のプロセスに取り組む。公認心理士はこの検討会のコンサルテーションを担うことになる。


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