「なぜ出来ないの」を生徒に言わなくなったきっかけ
ピアノ教師を始めたのは、20歳の大学生の頃でした。
20代の私は、自分もどちらかと言えば器用に出来る子じゃなかったはずなのに、生徒に対して大変厳しい、いや、キツい先生だったように思います。
キツさの理由の1つは、「とにかく生徒を引き上げたい」と言う熱い、暑苦しいまでの思いでした。「先生になったんだから、生徒は全部上達させてあげなければいけない」というガッチガチの固定観念にとらわれていました。
その私の熱意とは裏腹に、やってくる生徒は鞄ごと家に置いてくる。
弾きたくない教本はわざとおいてきて「忘れちゃった~」。
ギリギリにやってきて「練習やってね~ぎゃはは」
「ピアノきら~いやりたくな~い」と私に言い放つ。
私の筆箱から黙って鉛筆を借りて返さない。
おまいらなにしにきたんや。
という怒りに満ち溢れていました。
それでも、真面目に課題をさらってくる生徒は勿論いました。
全員が「何しにきたんや」と呆れるような子ではなかった。
そんな、数少ない「頑張ってくる子のひとり」が、どうしても詰まって引っかかってしまい、何度も弾き直しをしてこちらがイライラしてしまって。
やってしまいました。
「どうしてできないの?!」
その時の生徒の答えは「だってわからんもん」
その言葉に、はっとしました。そういえば私、この生徒に指番号の話とか、ここのフレーズってこういう感じだよとか、そういう話一切してなかった。
悪いのは、私。先生失格だな、と、初めて思った事件でした。
大切なことを伝えてもいないのに、生徒に強要していないか。
自分が知っているからといって、生徒も知っているとは言えない。
理解できたか確認もせず、一方的に怒ってはいけない。
まだ駆け出しの頃に失敗をしたことで、これらのことには注意してレッスンをするようになったのです。
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