思いがけず「合図」はある――犬の話
物事のはじまりには、合図がある。
ドアをノックする音が聞こえれば「誰かが入ってくるんだなぁ」とわかるし、右の眉が上がっていれば「嘘をついている」の合図……(平松愛理さんの「部屋とYシャツと私」)とか。
うちのサツマ(犬)も、合図に敏感だ。
といったも、「まて」とか「おすわり」「おいで」といった合図の話ではない。
朝の散歩中、うしろにいた方々が「おはようございまーす」と爽やかにあいさつを交わしていた。その「おはようございます」の声に反応したサツマは、嬉しそうに振り向いて、見知らぬ方に「おやつ!」の顔をしていた。
なぜ?
と思ったけれど、おそらく、いつも犬友さんからおやつをいただくときに、「おやようございまーす」から会話がはじまるからだろう。「おはようございます」はおやつのチャンス、と覚えちゃったのかと。
もう一つ、「あら、これも?」と思ったのが、「どうする?」だ。
ある日の夕食のこと。自分のごはんを食べ終わったサツマは、私の隣にきて、食卓の上のごはんを狙っていた。そんななか旦那が、テレビのリモコンを片手に「どうする?(何見る?)」と言ったら、すくっとサツマが振り向いたのだ。「おやつ!」の目で。
そういえば、夕食後、サツマの「もっと食べたい」アピールがはじまると(ワンワン吠えたり、足元のマットを噛んだりする……)、私たちは「どうする?」と言って話し合っていた。そして、「今日はがまんしてもらおう」とあげないこともあれば、「今日はよく遊んだし、ちょっとだけあげよう」とジャーキーやらササミやらをあげることもあった。
だから、夕食中の「どうする?」は、サツマのなかで「おやつもらえるかも」の合図になっていたのだろう。
犬って賢い。
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