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牡丹雪(ぼたんゆき)

雪が降りました。春の雪、ときいて豊穣の、と想起する人も多くはないだろな、なんて思いながら、落ちてくる雪には悲哀ではない、どことなく明るい、花びらのような愛着をおぼえました。牡丹雪です。

「牡丹雪」は、雪の結晶が溶けかかっているために、互いがくっついて牡丹の花びらほどに大きくなったもの。春の雪は降ってもその日のうちに消えてしまうものも多いけど、牡丹雪は、切々とした愛情のように降り積もります。それは懐かしくて慕わしい雪です。

子どもの頃は、めったに降らない雪がおりると嬉しくて、あたり一面の真っ白をみると、どうにか独り占めできないものかと、その溢れるような喜びをもてあましたものでした。

人の踏まない先の雪を、踏んでしまいたい心の弾み。どのくらいあるんだろうと、ずっとずっと手を中へ深め、爪の先に土があたると、かすかに感じた春のあたたかみ。

昨日の雪は、そんな古い記憶を思わせる、牡丹の花を思わせる、親しみのもてる雪でした。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ボタン 花言葉「人見知り」

牡丹の花



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