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隅田の花火

昨夜は隅田川にも花火が上がりました。日本の花火は何故こうも美しいのだろう。

もちろん花火師の方々が受け継いできた、伝統技術によるのは自明ですが、海外のそれとの違いを考えたとき、それは花火がもたらす「余韻」にあるのでは、そんなことを思いました。

日本で見る花火は、開花から燃え尽きるまで、そして火の粉がしだれて散っていく数秒までも、美しいと眺めます。

大きな音や強い光ばかりでなく、紺青の中に消えてゆくその「余韻」までも、しずかに味わう。

このように日本の花火は、華やぎだけでなく、その儚さにまで「美」を見いだした、日本人ならではの感性と技の賜物なのです。

さて隅田の花火、遠い時代に同じ花火を見た人が、こんな詩を残しました。火の粉が夜空に散りゆくを「歌麿の舟のけしきに」だなんて、なんて心にくいこと言うんでしょう。今日もいちりんあなたにどうぞ。

「花火」
北原白秋

花火があがる、
銀と緑の孔雀玉……パツとしだれてちりかかる。
紺青の夜の薄あかり、
ほんにゆかしい歌麿の舟のけしきにちりかかる。

花火が消ゆる。
薄紫の孔雀玉……紅くとろけてちりかかる。
Toron …… tonton …… Toron …… tonton ……
色とにほひがちりかかる。
両国橋の水と空とにちりかかる。

花火があがる。
薄い光と汐風に、
義理と情の孔雀玉……涙しとしとちりかかる。
涙しとしと爪弾の歌のこころにちりかかる。
団扇片手のうしろつきつんと澄ませど、あのやうに
舟のへさきにちりかかる。

花火があがる、
銀と緑の孔雀玉……パツとかなしくちりかかる。
紺青の夜に、大河に、
夏の帽子にちりかかる。
アイスクリームひえびえとふくむ手つきにちりかかる。
わかいこころの孔雀玉、
ええなんとせう、消えかかる。

底本:「白秋全集 3」岩波書店

アジサイ 花言葉「感謝」

紫陽花「隅田の花火」


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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/

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