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秋明菊の頃

鞍馬の奥、貴船神社の境内は、うっそうとした樹林にかこまれており、高い崖によりそって、薄紫の貴船菊が、和泉式部の魂のような姿をして咲き乱れている。
その風情が忘れられなくて、京都から持って来て植えてみたが、関東の土は肥えすぎているのか、頑丈な木のように育ってしまった。
色も薄紫ではなく、白の八重で、関東では貴船菊のことを、秋明菊と呼んでいるわけがわかったような気がする。やはり植物も女性も、京都の土でなくては、あのように情趣にみちた姿に開花せぬのであろうか。
白洲正子『花』より

「貴船菊」ときいてピンと来なくても、「秋明菊」と聞けばああ、となる方もいるでしょう。

秋に菊に似た花を咲かせることから「秋明菊」という名がついていますが、種類としてはキンポウゲ科の花で、アネモネの仲間になります。

別名にある「貴船菊」とは、京都の貴船山付近に多く野性化していたところからつけられた名前とのこと。

白洲正子はこの花について、「関東ではしゅうめい菊というが、友達かわざわざ京都の貴船神社から移してくださったので、私は貴船菊と呼んでいる。」と、呼び名へのこだわりをみせています。

東京で見るとも違う、古都の景色に溶け込む貴船菊も、きっと雅でしょうね。みるたびに、秋の七草として数えても申し分ないなと思う花。今年もそろそろ会えるかな。今日もいちりんあなたにどうぞ。

シュウメイギク 花言葉「忍耐」


風に揺れるはコスモスのよう

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/

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