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【農林水産省の計画からみる現実との相違点 地域差について】~2020年より有害駆除活動を通して、私に何ができるのか~ 2022年4月1日

農林水産省はジビエ利活用の推進 事業目標として、2011年(H23年度)から2023年(R5年度)までに農作物被害を及ぼす野生動物の生息頭数を半減(シカ、イノシシで約190万頭)という計画の他、野生鳥獣のジビエ利用量拡大として2019年(R元年度)から2025年(R7年度)までに4000トンのジビエを供給しようという計画を掲げている。

農林水産省の調査によると、2020年(R2年度)処理されたジビエ(野生鳥獣の肉)の利用量は1810トンであり、2016年(H28年度)と比べ1.4倍増加。2016年(H28年度)からみると2019年(R元年度)までは右肩上がりだが、2020年(R2年度)は前年度より198トン下がった経緯となる。

農水省 2022年(R4年度)予算
鳥獣被害防止対策とジビエ利活用の推進として、160億円(前年度より2億円減)このうち、鳥獣被害防止総合対策交付金122億円/鳥獣被害対策推進枠21億円が決議されている。

農林水産省は「ジビエ利用を増やして、農林産物への獣害を減らそう」という見込みなのだろう。
・野生動物の肉を売れるようにすれば、より捕獲が進むのではないか。
・ジビエをビジネス化することで山村の振興に一役買うだろうという発想。
・林業において獣による皮剥ぎは木材価値ゼロにつながる故、個体数管理によりスギ・ヒノキへの害を削減できるのではないか。

果たして、それらの思惑が現実と合致して成立しているのかと疑問がでてきた。日本全体で成立しているモデルケースもあるようだが、居住地域により差があるのではないか。 

その差を埋めるためには、どうすべきか。

これからの未来へ向けて、自身の有害駆除活動を通して見えてきた事。
自身に何ができるのか、どうすべきか。
ここは【しか】に焦点を絞り記録に残しておきたいと思った。

日本全体での捕獲数 被害額の現状をエゾシカに絞って調べてみた。
捕獲数は、25年間(1990年と2014年の間)でエゾシカ14倍増加。
被害金額は、2011年(H23年度)の11年前 72億円のピークから年々減少しており現在は4割程度減少。

次に北海道全体での被害額 全鳥獣で調べてみた。
北海道全体 2020年(R2年度) 約50億円。前年の47億円に比べ3億円増加。うちエゾシカだけで約40億と全体の8割がエゾシカによるものである。
捕獲数 増加。

被害額 ピーク時からみると減少傾向にありながらも、ここ数年で増加傾向にあるようだ。

捕獲数 増加に関し、各地域 猟師達の努力の賜物(たまもの)であり、NPO法人としての活動・起業され狩猟を生業としておられる方たち・各大地に足をつけ活動されておられる猟師たちの日々の活動あってこそ。
狩猟者の高齢化問題といわれているが、現実には50代~60代の一部ベテラン猟師達の活動の成果が大きく影響している。

共に行動し・身をもって経験することで痛感した。
課題として未来へ向けて地域活動として伝承・承継する仕組み作りが急務だと肌で痛感する。
その取り組み点としては、
「猟友会加入者と未加入者との連携」
「地域へ新規参入した者と農業従事者との関係性つくり」
「ルール取り決め」
「情報伝達手段の導入」
「携わる全ての人が充足感や手ごたえを感じられる環境を作る事」
「やりがいを感じる事が出来る場所作り」
「能力を十分に発揮できる場所に属す大切さ」
「かけた労力に対して成果が見えること」
課題は山積みだ。

私は経験して思う。
狩猟免許・銃所持許可取得にあたり、情報入手に奔走し、免状取得。
現場への入り口。
いざ呼吸を整え門をたたき誠意をこめ頭を下げ教えを乞うて、受け入れられた時の安心感。
人は見た目・声・その時の会話だけで判断するのではなく、現場で一緒に汗を流してこそ、協力し助け合えるものなのだと。
頭でいろいろ考えるのではなく行動した先に、その行動を見てくれている人がいる。行動し続けた先に、違った未来が待っているのだと信じたい。
また汗を流さずにして、参入しようとする者たちに対しては間口を狭めてしまうものなのかもしれない。

被害額 増加に関し、
背景の1つに高齢により農林業から撤退。
休耕地であるがゆえ被害が出ても諦めて申告しないケースも含まれていると思うが、いちばんの要素は繁殖力の強さ。捕獲数以上に増加しているのだと思われる。

捕獲数 被害額 獣害の相関性をみると、野生動物の行動学を踏まえ、予想し設定された内容である事はわかるが、捕獲数 被害額 獣害とジビエ利用が、必ずしも相関していないようにもみえる。
捕獲者として、どの方向に向かうべきなのかと考える。

生息頭数・捕獲数との相関性も今後、調べてみたいと考える。

野生動物の行動学 気づき
・獣害を引き起こす野生動物は、農作物などの味を覚えた特定個体と考えられる。
・親から子へ・集団グループにおいて言葉をもたない情報伝達を用い、彼らは生きる術を伝達しているのだとも感じられる。
・捕獲した山奥にいる個体が必ずしも獣害を引き起こしているわけではない。彼らは自由に山を移動し生活している。


ここで、自身の居住する活動地域において捕獲数・被害額・捕獲後の処理方法・ジビエ利活用状況について、もう少し詳細に記したいと思う。

なお、居住地区の市(全域)においての被害対象作物品目とは、水稲/馬鈴薯/南瓜/りんごさくらんぼぶどう等の果樹/その他の被害を含む

居住地区 市(有害駆除区域)において、
【エゾシカ捕獲計画 割当頭数600/年間】
2018年(H30)度 600頭 
2019年(R1) 度  600頭
2020年(R2) 度  600頭

【エゾシカ捕獲数】
2018年(H30) 計〇〇頭
2019年(R1) 計511頭
2020年(R2) 計618頭

【被害額】
2018年(H30)  14,269,370円/被害面積 128ha
2019年(R1) 13,650,750円/被害面積 100ha
2020年(R2) 13,211,770円/被害面積 130ha

以上、数値でみる捕獲数と被害額の相関としては、捕獲数と反比例し獣害被害額は減少している。

special thanks to Reiko homma

読み取れるのは、捕獲をすることで翌年の被害額が減っていること。
R1の捕獲が少なかったために、R2の被害額が増えた可能性。
当空知地域では年間1,500頭では不足しており2,000~2,500頭くらいの捕獲が必要なのではないかとも思える。

次に、居住地区 市(有害駆除区域)での、捕獲後の処理方法について、
当地区では、捕獲後の有害鳥獣については、捕獲→止めさし→ゴミ処理場へ搬入 焼却処分としている。

捕獲後の利活用状況について、
市内にはHACCP認証を受けた解体処理場(ジビエ処理加工センター)がなく、同管内にある加工センターまで車で片道1時間弱と距離がある為、持ち込む者は少ない。
コロナ渦のこの近年、センターへ個体持ち込み中止という背景もあり、現実的には、捕獲された当地区のシカ達は市内のゴミ処理場で焼却処分となり、ほんの一部だけが自家消費されている。
そのほんの一部の自家消費に関し、家庭内においての衛生保管や、
調理する際の動物由来感染症対策を意識し、中心温度75度1分以上を心がけ正しい知識で安全に美味しく命を頂くという事も大切にしていきたい。

もう1つ、くくり罠で捕獲したシカ肉についての抗酸化性、ph、保水性、遊離アミノ酸含量についての興味深い研究結果を拝読した。

捕獲時に強いストレス負荷を受けてpHが高くなると、加熱中の保水性が高くなり,酸化が抑制され、また呈味成分(言い換えると基本味《甘味、塩味、酸味、苦味、うま味》を示す物質)である遊離アミノ酸の総含量が高くなるという研究結果だ。
くくり罠で捕獲された個体の、特性を生かす保存法・調理法の研究を継続し続けたい。

まとめ 気づきとして、
今回、当居住地域 市(全域)において、エゾシカ捕獲計画数/年間950頭割り当てがあり、猟友会600頭/NPO法人350頭とで捕獲数の分配をしているという事に気づけた。

また、【地域に根差す】【役割分担】【人間関係】というキーワードにも気づけた。
人と人とのつながりがあってこそ、農業従事者・地域住民から頼られて声がかかり地域に根差した活動が成り立つのだと思う。
有害駆除活動にて毎日の捕獲数を積み重ねることで、地域一帯の年間捕獲計画数を確保する事にもつながっているし、なにより農作物への獣被害対策を担っている。そのことに自身も参加している実感がわいてきた。

有害駆除活動とは、普段わたしたちが口にする農作物の被害削減だけでなく、農業従事者の方が手塩にかけて育てた作物を無残に食い荒らされぬよう、日々わたしたちが畑を「見回る」(パトロールする)ことで農家さんの心の安心にもつながっているのではないか。とも思える。

シカ害 有害駆除における、はこ罠・くくり罠・鉄砲等の手段以外の手段である、侵入防止柵の設置に関し、防除策が果たして有効なのかは疑問だが、防除を強化する方向性としては大切な策なのではないかと思う一方で野生動物と向き合ってみて、そんな生易しい事では無いとも言える。

では、他手段は他にないだのだろうか。

有害駆除を俯瞰してみたとき、野生動物に対し有効と考えられる他手段を柔軟に併用していく事も必要なのではないかと考える。

その手段を取り入れた結果、野生動物と有害駆除との関係性に良い変化があるなら理想的だ。夢を語るだけではなく、泥にまみれ雪に膝まで埋もれつつ雨上がりの野山や雪山で動きながら、その理想とは何かと考える。

その結果、何かしら数値への変化が起きるのだろうか。
現状の有害駆除活動の仕方が変わるものだろうか。
有害獣を殺処分するだけでは命に申し訳ない気持ちになる。

利活用を考えた時、北海道西興部(にしおこっぺ)村の鹿牧場 養鹿は有効なのかもしれない。当居住地区で導入するためにはどうしたらよいか考えてみる。流通させるための導線つくり・施設・人材・土地が必須だし、事業の内容にもある捕獲者・処理加工施設・実需者等によるコンソーシアム方式※1の導入に至るまでには、捕獲者と市とが同じ方向をむく必要がある。
鳥獣被害防止総合対策交付金を有効に活用したい。

※1
コンソーシアム(consortium)とは、複数の企業が「共同企業体」を組成して、一つのサービスを共同で行う取引です。 共同企業体の構成員間で協定書を締結し、役割分担を明確にして取組む方式で、導入・開発・運用・保守・賃貸借などのサービスを包括して契約できる。

できることなら、人間が上でもなく動物たちと横並びになって共存した生活を共にできたらと理想としては想うのだ。
そうもいかず、現状では有害駆除活動を続けながら、私にできることを模索しつづけている。

最後に、有害駆除によるヒグマはこ罠設置、捕獲数について記したい。

問題点としてシカ残滓による熊つき問題。
課題点としてヒグマに対する防除・忌避教育の強化
以上を記しておきたい。

問題点としてシカ残滓による熊つき問題の件、
先ほど述べたように当地区では、有害駆除捕獲後の有害鳥獣については、捕獲→止めさし→ゴミ処理場への搬入後、焼却処分としている。

そのルールに従わず、土埋め・残滓を放置した場合、その残滓を食したひぐまの栄養状態が向上、繁殖数増加に加速を促した可能性・残滓が餌付けとなり里山への誘因となっている可能性も否めない。

すべてとは言い切れないが、少なからずという表現では影響しあっているのかもしれない。

有害駆除によるヒグマはこ罠設置とシカ残滓による熊つき問題に関し、気づいた点としては、ヒグマはこ罠を設置した場所にヒグマがつく。
ついた個体が、はこ罠に入るというループがあり、防除せずに捕獲に集中している点。この点を改めないとならないのではないかという考えに行き着いた。

では、どうしたらよいのか。
今後も課題として取り組みたい。

狩猟期間中、当地区外の狩猟可能区域にて、上空へカラスがつき その場所にシカ残滓があるだろうと予想できる場面に遭遇した。

狩猟に携わる者、命に対するせめてもの償いとして残滓を弔うために汗をかき、息をきらし数百メートルの雪上を引っ張ってくる事。それは容易ではないことだが、命への尊厳や倫理を考えた時、私は体力がある限り・危険がない限り紐をかけ、こちら側へ引っ張り、最後に弔う所までが責務だと考えている。

有害駆除活動としてヒグマに対し、はこ罠設置をしている現状なのだが、
はこ罠にかかる熊が存在する一方で、これから先、はこ罠にかからない熊が出始めた時の対処方法も予想しておかねばならない。いや、そのような個体が出ないような防除・忌避教育の強化を今からすべきなのだと確信している。

市(全域) 
ヒグマはこ罠 捕獲数
2020年(令和2年度) 8頭
2021年(令和3年度) 22頭

この数値の違いに驚く。
今春 山菜取りでのヒグマ被害の増加予想が否めない。

ここで、どの方向へ舵をとるべきなのか有識者の方へ協議を委ねるしかない。自身の経験値では微力ながら想う事だけしかできない事がもどかしい。防除・忌避教育の強化を意識した方向である事を祈っている。

課題点としてヒグマに対する防除・忌避教育の強化に関し、長年にわたり日々、犬たちと共に山林パトロールを続けるヒグマ研究をされている岩井さんのお話しがとても興味深い。私は、現場で経験を積み重ね導き出した行動や発表に心惹かれる。以下は、よく拝読している岩井さんの表現から引用させていただいた。

キーワードとして
周囲のヒグマ側にヒトへの警戒心・忌避を植え付ける教育手法。
学習空間における若グマの忌避教育。
その目印のラインからこっちは入っちゃダメヨ!とヒグマに教える方法論。
ヒトとヒグマの空間イメージ
学習空間とする5㎞程度の幅を持たせた空間
ディフェンシブな教育/オフェンシブな教育

現在のように防除・忌避教育を怠ったまま箱罠を仕掛ける対策というのは、毎年 何らかのクマは捕れたとして、当然、箱罠が利かないヒグマも存在してくると予想される。本当に獲らなければいけないヒグマが発生したときに、はこ罠などまったく利かなくなっている可能性が高まり、その危険性が予測される。

2021年、標茶あたりのOSO18や羅臼で庭先の犬を食べるヒグマや福島町の例がそれに当たるかも知れない。危険と判断されてしまった個体の捕獲手段を考えた時、時期は春先3月中旬から下旬にかけての第3日曜あたり、特別な訓練を積んだ猟犬を含めた先鋭のチームを組んで、巻き狩りのアレンジした方法で捕獲するしなく、その際にモービルが必要であり、かなり広い空間からそのヒグマの場所を迅速に狭めていく作業が必要になる。と予想。

そのような手法はあくまでバックアップであり、それ以前、とにもかくにもそういうヒグマを生じさせない努力が、現在の北海道には広く求められているのではないのだろうか。と考えを拝読した。  

私見として課題点を挙げると、北海道内において犬をパートナーとし高度なハンドリング技術をもったひぐま専門の猟師の存在を存じあげない事。
また、いらっしゃった場合、この計画に同意されるかという点。

秋田にマタギの伝承文化があったとしたなら、ここ北海道の地で現状に見合ったヒグマとの関係性を模索すべく、新たな手法(ここでいうのは警戒心・忌避を植え付ける教育手法)を試し続け、経験を積み重ねた未来に「丁度よい状態」という理想に少しでも近づけるのではないかと考えている。

人が上でもなく、人と野生動物とが対峙するのでもなく、真摯に向き合う事。

以上、気づきとする。

【おわり】 


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