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某ワニに関する所見

ヨーロッパ旅行記は写真選びに疲れるので、一旦休憩。楽しみにしている人、もしいたらもう少しだけお待ちを。今回は気分転換ということで全く違う話題。
今Twitterを中心に巷を騒がせている某ワニ。彼は連載が始まった日から100日後に死ぬことを運命づけられ、そしてもうその日が明日に迫っている。そんなわけでキリが良い時期だろうということでこんな記事を書こうと思ったわけだ。そして、この記事の内容は某ワニを批判したり称賛したりする内容ではなく単純に﨑原が思ったことを書くだけなので、読んでいる人は「何か言ってんな〜」ぐらいの気持ちで読み進めてくれるとありがたい。

さて、本題に入る。連載漫画において最終回までの期間とその結末が事前に告知されているパターンは見たことがないし、しかも「死」という非常にクリティカルな話題を取り上げているので尚更この漫画の存在感は大きく見える。それだけでなく、作者が事前の告知通り100日間毎日投稿を続けることにより、この漫画の価値を維持し続けたように思われる。﨑原みたいに不定期で思い立った時に投稿をするようでは単なる一発屋で終わっていただろうと思う。すごいことだ。

ところで、﨑原はTwitterのリプ欄まで事細かに目を通したいタイプの人間なので、この某ワニのリプ欄も例に漏れずそうしていた。あくまでも主観的な感覚だが、連載から経過した日数でリプ欄の様相が変化していたように思う。
連載が始まったばかりの頃は、「このワニは閲覧している我々の分身である」とか「100日後に自分が生きている保障がない、このワニと同じように死んでいるかもしれない」のように、ワニに自身を投影して「死」をより強く意識しているような意見を見かける頻度が多かった気がする。この時点でこの漫画はある種の啓発というか、「死」について考えような、というメッセージ性を持っていた(作者の意図は不明だが)。
しかし中盤、大体40日あたりぐらいからだろうか、ここまで来るとこの漫画を単に「お話」としてワクワクしながら読んでいるのだろうな、という印象の意見が多くなり始めたような気がする。その日のワニの気持ちに同意したり、伏線を探してみたり、といったように。ここまで来ると序盤持っていたメッセージ性は薄れ、ただワニが喜怒哀楽を感じながら暮らす様をただ眺める、「日常系」と化す。
そして終盤、ちょうど年が明けたあたりからだが、「もうあと〇〇日だ〜、死なないで〜」的な意見が増えてきた。中盤と比べて「死」への意識が高まってきているように思われるが、序盤の時とは違う。完全に他人事。ワニの死を自己の問題と読み替え、自己啓発に繋げるような意識が欠如している。「死」の接近に気付かずに暮らすワニを哀れんだり、その結末を予想してみたり、と言ったように完全に「外側」の存在として彼を眺めている。

しかし、この変化が悪いこととは思わない。普段からそうだから。多くの我々にとって明日の予定や1週間後の予定を普段から立てるのが当たり前なように、それほど「死」は普段から意識されないものなのだ。例えば、警察庁によると2019年の交通事故死亡者数は3,215人。去年の年明けには大晦日のことを考えていた人のうち、それだけの人数が死んでしまったということだ。にも関わらず自分がその1人になるなんて思っている人はごく少数で、多くの人は交通事故のニュースを見て悲しい気持ちになって終わり。それと同じことだ(厳密に言うと違うが)。
思うに、この漫画は序盤において人々に「死」を身近に感じさせそれについて考えさせるように作用したが、終盤に近づくにつれてその効果は薄れ、結局我々から「死」を遠ざけてしまったように思われる。
先程交通事故の例を挙げて、「それと同じことだ」と言ったが厳密に言うとそれは違う。交通事故の場合、我々は誰が交通事故に遭って死ぬかはわからないしその人を監視し続けるというような現象はまず起こらない。しかし、この漫画で死ぬのはワニで、我々はそれを監視できる。いわば「神の視点」だ。監視しワニに対して色々コメントすることができている時点で、我々は彼の上位存在となってしまっている。この意味で「ワニの死」と「我々の死」は同期しない。「我々の死」はこれまで通り埋没し、「ワニの死」は虚構となる。ここが少しわかりにくいところなのだけど、埋没した意識はすなわち「無」だ。つまり我々の中で

「死」⇒「ワニの死」

という関係が自然と形成され、そして「ワニの死」は虚構である。この意味で「我々から「死」が遠ざかった」。
我々はこの漫画を読むことで自身の「死」の可能性をワニに転嫁でき、鬱屈とした現実から少しだけ目を背けることができる。要するに﨑原個人としてはこの漫画にメッセージ性は全く感じていない。…と、ここまで言うと言い過ぎだろうか。すぐに何らかの反論が飛んできそうだけど、それはそれで良い。この漫画の意義はその議論の機会を提供したことにあると思っている。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

#日記 #ワニ #所見

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