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私の上に降る雪は|中原中也イメージモクテル

昨年、中原中也の命日が10月22日なことから「サーカス」という詩をイメージしたカクテルを作られていたBar 十誡

左手前に写っている別冊太陽はその後古本で購入。
(内容の充実度が高くて・・!)
幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風(しっぷう)吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り
    今夜此処での一と殷盛り

サーカス小屋は高い梁(はり)
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒(あたまさか)さに手を垂れて
  汚れ木綿(もめん)の屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯(ひ)が
  安値(やす)いリボンと息を吐(は)き

観客様はみな鰯(いわし)
  咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

      屋外(やがい)は真ッ闇(くら) 闇の闇
      夜は劫々と更けまする
      落下傘奴(らっかがさめ)のノスタルジアと
      ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
中原中也・全詩アーカイブより「サーカス」

7月に「生い立ちの歌」のイメージモクテル(ノンアルカクテル)をやる!と知って。開始2日目に行ってきました笑

なんで7月なんだろう。生まれたの4月だし「生い立ちの歌」の入った詩集『山羊の歌』出たのも10月だし。。という謎を解明したかったけれど。店員さんに絡むのもなぁと断念。。

   Ⅰ

    幼 年 時
私の上に降る雪は
真綿(まわた)のようでありました

    少 年 時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のようでありました

    十七〜十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のように散りました

    二十〜二十二
私の上に降る雪は
雹(ひょう)であるかと思われた

    二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪(ふぶき)とみえました

    二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……

   Ⅱ

私の上に降る雪は
花びらのように降ってきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍(こお)るみ空の黝(くろ)む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸(さしの)べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額(ひたい)に落ちもくる
涙のようでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生(ながいき)したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔(ていけつ)でありました
中原中也・全詩アーカイブより「生い立ちの歌」

自分の人生の時々に降るいろんな状態の、雪。
24歳の中也にしめやかに降った雪。
長生したいと願ったその6年後にはもう彼はこの世を去っていて。その年の雪を見る前に、去っていて。

一緒に頼んだビスコッティはアブサン漬けのドライフルーツ入り。
幼年時からの生い立ちを雪の姿で表現した、美しいリフレインも雪のような「生ひ立ちの歌」。
花びらのように可憐な色合いの白桃のグラニテ、グラスには真綿のような綿菓子を乗せました。
旬のデラウェアを沈めた水出し白牡丹茶を注いでお召し上がりください。
汚れなき詩人の魂にオマージュを捧げお作りいたしました。
Bar 十誡 サイトより

綿菓子、みぞれ、琥珀糖、粉砂糖・・いろんな雪を味わい、モクテルに入れるとパチパチする琥珀糖を口でも耳でも楽しみ。前回もご一緒してくれたharryちゃんとの話の花も咲いて、満喫な午後でした。

帰り際、生前未発刊だった『在りし日の歌』の復刻本を見つけて大興奮。

お会計してそのまま出発すれば夜の酔ひどれ船の顔合わせに遅刻せずに済んだものを、そこからもたもた自撮りなんかしてるから遅れました・・本当にごめんなさい。

その後の顔合わせの話はこちら↓

相変わらず大したオチもありませんが、今後とも不定期にぼちぼち更新していけたらと思いますので、是非また覗きに来てください(*´꒳`*)

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