見出し画像

いきものがかりに、ありがとうって伝えたい。

これはいきものがかりのいきものがかりのメンバー脱退を受けたファン歴12年(2年ほどブランクあり)のファンが最後のライブに行った時の感情を残しておこうと書いた記事です。自分語りが非常に多くなっています。あらかじめご了承ください。6月10日のセトリ、MCのネタバレありです。

 いきものがかりメンバー山下穂尊脱退。2021年6月2日に突如発表されたニュースは私をひどく動揺させた。いきものがかりをがっつり追いかけていたのは10年前~2年前くらい。そこから2年ほどはしばらく離れていたのだが、変わらないと思っていた人たちのあり方が変わってしまうのだという事実をなかなか受け入れられず、何度もオフィシャルサイトのコメントを読み返した。

 ここで少し長いが私の話をする。私といきものがかりの出会いはサンタクロースが届けてくれたアルバムだった。特に応援するアイドルもなければバンドもなかった小学性の私だったが、彼らの10周年記念ベストアルバム「いきものばかり」を聞いてファンになった。小学生だったので、シングルは買えなかったけど、年に一回、アルバムが発売されると貯めていたお小遣いを握りしめてCDショップに行き、全曲歌詞を覚えるくらい聞きこんだ。聖恵ちゃんの笑顔と歌声が、リーダーの作るキャッチーな曲が、ほっちの作る優しくて温かくてでも勇気づけてくれるバラードが、大好きだった。悩んで苦しかった夜、「なくもんか」や「心の花を咲かせよう」を聴いて涙を流した。元気が欲しいとき「GOLDEN GIRL」を聴いた。テレビや町で流れるいきものがかりの音楽に何度元気をもらった事だろう。いきものがかりは生活に溶け込んでいた。そんな私だったが。私はいきものがかりのライブに参戦したことがなかった。というのも、高校生までを過ごした地元はライブなど開催されないド田舎。ライブの開催地までは車で4時間ほどかかる。親はあまりライブなどになじみがなかったため、ライブに行きたいと当時小学生の私がねだっても「高校生になってからね」とだけ言われ連れて行ってもらえなかった。しかし、ようやく私が高校生になったとき、いきものがかりは「放牧」した。結局高校3年間はライブに行けずじまいだった。受験生のころに応募したツアーといきものまつり。当選して大喜びしたのもつかの間、コロナで中止となった。とにかく私はいきものがかりのライブとは縁がなかった。ツイッターでも似たようなツイートをいくつか見かけたので、私の世代は似たような境遇の人も少なくなかったのではないだろうかと思う。受験期にあまり音楽を聴かなくなったのと、自粛期間にいくつか新たな趣味を見つけたのもあってしばらくいきものがかりとは疎遠になっていた。2021年に始まったツアーは予定が合わず見送ったのだが、また次のライブに参戦できればいかなあと楽観的に思っていた。が、ここで話は冒頭に戻る。

 いきものがかり。「さいごの国民的バンド」などと言われるように、老若男女から愛され、ファンクラブに入るような人でなくてもいきものがかりの名前はみな知っているし、一曲くらいは知っている曲があるのではないだろうか。ツイッターを眺めていても、「悲しい」「マジか!」と驚く声や悲しむ声にあふれていた。なんとなく、ずっとこのまま3人で音楽をやっていくものなのだと思い込んでいた。この世界に確かなものなんて何もないのに。人も、世界も、変わりゆくのに。そんな当たりまえのことを思い出してしばらく落ち込んでいた。

 3人のいきものがかりにもう会えないと思っていたのだが、ツアーの追加公演の分がまだ一般で買えることに気づき、慌ててチケットを取った。10年前、自力ではライブに行けなかった無力な小学生だった私は、気軽にライブに行ける場所で一人暮らしをしていて。自分が稼いだお金で、自分でチケットを取って、自分の足でライブに行けるようになっていた。時の流れは早い。小学生~高校生という悩み多き時期に寄り添ってくれた彼らにありがとうを伝えたい、そう思った。

 2021年6月10日の横浜アリーナ。私はいきものがかりを好きになって12年、はじめてライブに参戦した。

 はじめてライブに行って驚いたのは客層の広さだ。下はまだお父さんやお母さんにだっこされた小さな子供から、上はグレーヘアのご夫婦まで。私のような学生らしき若者からカップル、金髪のお姉さん、所謂量産型のかわいい服を着た女の子、会社帰りのサラリーマンらしき人まで。男女比も半々くらい。本当に幅広い人たちから愛されているグループなんだなとなんだか誇らしかった。

 横浜アリーナに行くのも人生はじめてだったのでその大きさにも驚いた。なんの曲を歌ってくれるのだろう、なんて考えながら去年のライブで使うつもりで買っていたタオルを取り出す。18時30分。会場が暗くなって、3人体制のいきものがかりセミファイナルライブが始まった。

 白い光の中から登場した三人を見た瞬間涙が止まらなかった。正直、数年離れていたのもあって始まる前は軽い気持ちだったのだが、開始数秒で自分でもびっくりするくらい泣いてしまった。「ああ、私はこの人たちにずっとずっと会いたかったんだな」といろいろな感情が渦巻く頭の中でぼんやり考えていた。バンドの演奏と聖恵ちゃんの歌声を聞いた瞬間鳥肌が立った。圧巻の演奏と歌声だった。小学生のころから「いきものばかり」をそれはもう何百回と聞いていたので、あのアルバムに収録されている曲にはとにかく思い入れがあって。「茜色の約束」や「YELL」、「コイスルオトメ」はボロボロ泣きながら聞いていた。私の大好きな3人曲「夏・コイ」。もうこの曲を聞くのは最初で最後なんだなと思うと悲しくて。でも、曲の明るいパワーのおかげで自然と笑顔になっていた。

 MCは打って変わって三人の仲の良さがにじみ出ていて。テンポの良い会話に何度も思わず笑ってしまった。昔からバラエティ番組などでわちゃわちゃしている3人が大好きだったので生で聞くことができて嬉しかった。最後だからか、結成当初からの思い出話が多めで。いきものがかりとして運命の出会いを果たしたリーダーとほっちの話。(リーダー曰く当時は友達ではなかった)同級生の吉岡君に紹介された妹の聖恵ちゃんの話。(リーダー曰く最初から遠慮がなかった)いきものがかりという名前にに疑問を持つという話題で、ほかの候補として「イッキ―モンキー」や「Garden☆Party」があったという話。(私は聖恵ちゃん発案「モアイを肩にのせないで」が一番好きです!笑)リーダーとほっちがお互いを「良樹」「穂尊」呼びしている話。名前呼び捨てにきゅんとするリーダー。ほっちあこがれの地だった横アリと、聖恵ちゃんがあこがれていたMステにはじめて出たときにリハーサルで泣いていた話。3人の会話はほっちの相槌があるからこそ成り立っているから、ほっちの相槌を今後のために録音しておきたい2人の話。

 そしてMCで「今から急激に盛り上がります!」宣言の後、怒涛のハイテンション曲たち。定番の気まぐれロマンティックで踊ってじょいふるでジャンプするのが夢だったので、その夢がかなって嬉しかった。気まぐれロマンティックの振り付けはわからなかったけど、前の席で完璧に踊っていたサラリーマンの男性の真似をして何とか乗り切った。ありがとうございます!助かりました!とここでお礼を言わせてください!(笑)

 アンコール前最後の曲、「風が吹いている」。別れがテーマの曲ではない何年も前の曲なのに、メンバーが一人脱退を前にした今、送り出すのに不思議とぴったりだなと感じた。また、新たに二人体制となったときに聴くと印象が変わるのかもしれない。聖恵ちゃんのどこまでも響く歌声はほんとうに素晴らしかった。

 アンコール。何となく歌ってくれるんじゃないかなと思っていたらやっぱりあの曲が。ほっちにスポットライトが当たり、「心の花を咲かせよう」のイントロが流れる。ああ、もうこれで最後なんだと思ったらまた涙が止まらなくなった。

 そして、いきものがかりの代表曲の一つでもある「ありがとう」。この曲を聴いている間に思い出したのだが、この曲が私といきものがかりの出会いのきっかけだった。当時小学生だった私が、朝ドラ「ゲゲゲの女房」にドはまり。その主題歌だったのがこの「ありがとう」だったのだ。オープニングをうたいながらテレビにかじりついていた私を見た両親が、クリスマスにサンタクロースとしてアルバムを送ってくれたのだろう。そんなことを思い出しながらやはりずっと涙を流していた。

 バンドメンバーがはけて、もう終わりかなと思ったら。「あと一曲やります!」の声が。三人だけで演奏する、デビュー曲。SAKURA。まさかアコースティックバージョンを聞けるなんて思っていなくて、マスクの下で叫びそうになったのを覚えている。もう二度と見ることがない最後の姿を必死に焼き付けた。

 三時間はあっという間に過ぎてしまって。私の最初で最後の三人体制いきものがかりのライブは幕を閉じた。最後の瞬間まで、私の青春に寄り添ってくれた彼らにありがとうをこめて力いっぱい拍手した。涙でマスクはぐちゃぐちゃだった。ああ、最後の最後に三人のいきものがかりに会えてよかったなと心の底から思った。

 前日の段階ではここまで引きずるつもりはなかったのだが、その夜は眠れなかった。寝ようとしてもライブの記憶や、12年分の思いがこみ上げて涙が止まらないのだ。結局、セトリの曲を流し(この間もずっと泣いていたのだが)、空が白んできたころに気を失うようにして眠りについた。

 6月11日。正真正銘最後の日。配信で見届けた。

 あの3人が決めた事だ。ファンは受け入れ応援することしかできない。ほっちは裏方のお仕事はまだするということなので、またどこかで再会できることを願っている。22年間お疲れ様。そしてたくさんの素敵な音楽を届けてくれてありがとう。ほっちも、新しいいきものがかりも、応援しています。

 ここまで読んでくださった方も、ありがとうございました。きっとあなたといきものがかりとの物語もあるのだと思います。たくさんの思い出を胸に、前を向いて歩いていきましょう。新たないきものがかりが見せてくれる景色を楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?