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炭酸飲料と母への優しさ

私のラダック人の友人は、ラダックが直面している様々な変化を比較的客観的な立場から理解できている人であると思う。

20代後半の彼は、幼少期から現在に至るまでの人生の中で目まぐるしい変化の渦中に生きてきた人である。
「子どもの時はテレビなんて見たことなかったよ!」と話す彼は今では自分のスマホを使って世界中の情報をキャッチできる。

そんな変化の中を生きてきた彼は、ラダックの生活スタイルや食習慣の変化が環境や人々の健康にどのような影響を与えているのかを知っている。そして、ローカリゼーション、伝統的でラダックの土地に根ざした生活が自分たちの文化や環境を守ることに繋がることも知っている。

しかし、彼の理解は必ずしも彼の行動につながっているということはできない。

彼は村に帰るときに、必ずお母さんが好きな炭酸飲料と、1歳半の姪にあげるスナック菓子やチョコレートを買って帰る。

ペットボトルやパッケージはゴミになるし、糖分がたくさん入った炭酸飲料やお菓子は当然身体に悪い。

しかし、村に帰る時にお母さんの好きなものを買ったり、子供へのお土産を選ぶ彼の姿はなんとも微笑ましい。いつも家族のことを想う優しさはいかにもラダック人だ。

その姿を見て、「いや、炭酸飲料は身体にも環境にも悪いから買うのやめなよ」と言うことはできない。彼は知っている。でもそれは彼が自分で選んだことなのだから。

ラダックにはインドから運ばれてきたインスタントラーメンが普及している。

小分けになっていて、添加物いっぱいのインスタントラーメンは当然ラダックの環境にも人々の身体にとって良いものではない。
彼は、それを自明のこととして理解しながら、1日に1回はおやつや食事にインスタントラーメンを食べている。

彼は言う。「これが人間だ」って。
悪いってわかっていても、人の行動を変えることは難しいんだよ。
自分はやめる気はないよ。だって美味しいし簡単だからね。
誰がなんと言おうと自分の行動は自分の選択で決まるから。

自分を振り返る。
コンビニのおにぎりよりも家でおにぎりを作れば、ゴミも出ないし、自分の身体に添加物を入れることもない。
でも急いでいたり、めんどくさい時に常に環境と自分の身体のことを考えた選択ができるかと考えると、自分には自信がない。

知識と行動は必ずしも一致しないことを改めて実感した。

でも、少なくとも、知識として知ることで、目の前にあるものは「選択肢」になることができる。そこに私は微かな希望を持ちたい。

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